NO FUTURE – A SEX PISTOLS FILM
CINEMA

NO FUTURE – A SEX PISTOLS FILM

監督:ジュリアン・テンプル
THE FILTH AND THE FURY [ 1999年 イギリス ]
1976年前後の日々を20年以上経過して冷静に振り返るメンバーたち。労働者階級の社会の底辺から運命としか言いようのないタイミングでパンクロックをクリエイトしてしまった彼らの真実の証言は、どれもこれも興味深くて聞き入ってしまう。マルコム・マクラーレンの天才的な口車とともに物事が起こってしまってからは、どんなに冷静なジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)をしてもバンドをコントロールすることはできなかった史実。特にグレン・マトロックが抜けて、ピストルズの熱狂的ファンでありジョンの親友だったシドが加わってからの悲劇は伝説を肥大化させたが、バンドの存在とシドの生命を消したあまりに惨いものだった。「あのときもう少し賢ければ」と自分がシドを救えなかったことを悔いるジョンの涙がとても印象深い。シドの生き様についてはゲーリー・オールドマンが彼を演じた『シド・アンド・ナンシー』をあわせておすすめしておきます。

posted on 2002/02/10
ゲンセンカン主人
CINEMA

ゲンセンカン主人

監督:石井輝男
[ 1993年 日本 ]
つげ義春の漫画作品の中から「季さん一家」「紅い花」「ゲンセンカン主人」「池袋百点会」の4話を映像化したオムニバス作品。すべて佐野史郎主演というわけで、大のつげファンである彼の念願の企画だったようだ。4話をつなぐサイドストーリーは別として、かなり原作そのままに描かれており、その熱意と愛情に僕も拍手を送りたい。ほのぼのとしつつもゾクっとさせる人間描写とエロティシズム。クセのある役者が多数出演する中、最後はその全員に温かく見守られ、つげ義春本人も家族と共に登場してくれる。妙な清々しさがあってステキだった。

posted on 2002/01/29
アメリ
CINEMA

アメリ

監督:ジャン・ピエール・ジュネ
LE FABULEUX DESTIN D’AMELIE POULAIN [ 2001年 フランス ]
観ようと思った頃には既に若者のファッションになってしまっていて、なかなか観れずにいたこの映画。結局4度目の挑戦で渋谷シネマライズと決別し、新宿の映画館にて、ついにそのシートをゲットすることができた。映画はまさに素敵な現代ファンタジー。主人公のアメリが誰もが振りかえるような美女ではないにせよフランス的キュートなルックスで、自分の恋を実らせようとあれこれ直線的に行けない、もどかしいほど遠回りして作戦立てたり妄想でウキウキしたり涙を流したりする姿は最高にいとおしい! おじいさんが応援するのもわかるし、同じく不器用なニノもアメリを追いかける彼の気持ちに共感。同じ匂いを持ったふたりがお互い惹かれ結ばれる、このことが何より素晴らしいと思ったし、前向きにさせてくれる。話的に過去のジュネ監督作と比べると毒が薄くなりがちだけど、常連ドミニク・ピノンその他脇役たちのサイドストーリーがしっかりオチまであったり充実してたのが彼らしいし、ニノ役のマチュー・カソヴィッツが自分の撮る映画は陰鬱なのに、こんなに好青年を演じているところがまたニクイ。年は越してしまったけど、観れて良かったと思えたのが良かった。

posted on 2002/01/21
トラフィック
CINEMA

トラフィック

監督:スティーブン・ソダーバーグ
TRAFFIC [ 2000年 アメリカ ]
麻薬戦争をドキュメントタッチで様々な地点で起こりうる経過を巧みにシンクロさせながら描いた、ソダーバーグらしい一本。本当にこの監督は巧いなぁと思う。個人的には『アウト・オブ・サイト』がいちばん好きだけど、この作品も全然飽きないです。深夜に見てても眠くならなかったし。それにしても麻薬対策を指揮する最高責任者の娘がヤク中って、すごい皮肉だよな。カタギにしても悪にしても、でかい役職の仕事なんてやるもんじゃないね。僕は目立たない自由で幸せな生活を望みたいです。

posted on 2002/01/04
殺し屋1
CINEMA

殺し屋1

監督:三池崇史
[ 2001年 日本 ]
正月早々、イヤーなもの見ちゃったなぁ。派手なスプラッターはそれはそれでめでたいように思いたいけど、ここまで生々しく痛々しいのは辛くて気持ち悪かった。殴る・蹴る・撃つの暴力より、切る・刺す・ちぎるのオンパレード。ひえー、もうやめてー! とにかく悪趣味なショッキング映像をここまで見せられては拒絶反応を示さざるを得ない。そこが三池崇史の狙いだったのか。映画の暴力シーンに麻痺している現代人に本気で目をそむけさせるほどリアルな感情としての痛みを感じさせることへの挑戦。それかただ単に登場人物の死亡率、出血量を日本映画史上最高にしたかっただけなのか。ピーター・ジャクソンの『ブレイン・デッド』はOKだけど、これは苦手です。もう二度と観たくないと思った。

posted on 2002/01/01
カラテ大戦争
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カラテ大戦争

監督:南部英夫
[ 1978年 日本 ]
ザッツ昭和エンターテインメント! これは凄い。かなりきてます。梶原一騎と大山倍達の原作の映画化作品なのだが、これを観るとどうして香港のカンフー映画のように日本にカラテ映画が根付かなかったのか不思議だ。ブルース・リーやジャッキー・チェンのようなスターが生まれなかったのが原因か。確かに主演の真樹日佐夫(梶原一騎の実弟)は石原裕次郎チックでちょっとおっちゃんだけど、えいやー!エイヤー!と敵を蹴り飛ばすサマは爽快。いまだからこそあまりに斬新に見えすぎるのかも知れないけど、これはサイコーです。極限流カラテ(いわゆる極真カラテ)の師匠役には大滝秀治が! 存在感ありますな。

posted on 2001/12/28
気狂いピエロ
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気狂いピエロ

監督:ジャン・リュック・ゴダール
PIERRO LE FOU [ 1965年 フランス ]
作品を重ねるごとに映画表現の解体が進むゴダール。近年の作品は編集と音のコラージュ的なるもので観てもさっぱり分からず、ストーリーを追うことを放棄しがちだが、いわゆるそうした彼の映画へのアナーキズムの原点といえるのが、この作品といえるのではないか。若々しい名優ジャン・ポール・ベルモンドとアンナ・カリーナ、元恋人との逃避行、鮮やかなトリコロール・カラー、気狂いピエロの詩、映画監督サミュエル・フラー、殺し、裏切り、愛と破滅。当時のゴダールの全てが刻まれた、彼の作品の中でも、これは必見の名画です。

posted on 2001/12/16
少林寺木人拳
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少林寺木人拳

監督:チェン・チーホワ
少林木人巷 / SHAOLIN WOODEN MEN [ 1977年 香港 ]
ジャッキー・チェン初期カンフー作品の最高傑作との友人の評価は見事に当たっていた。これは観る人が観たら体中電流走りまくりの衝撃の一本だ。父の仇を討つため少林寺で修行を積む失語症の青年ジャッキー。一人前として少林寺を卒業する最後の関門が、木人の攻撃をかわし、何十体もの木人が並ぶ木人道を通り抜ける、木人拳の習得である。この手足が機械仕掛けでギコギコ動く木人とジャッキーの手に汗握る攻防シーンがとんでもなかった! 木人があんなに動くなんて(しかもまとめて!)、まさに奇々怪々。その未だかつて見たことのなかったびっくり映像に仰天爆笑! その後も仇を討つまで物語は続き、安い演出が随所に散りばめられ、最後の決闘シーンで筋肉パワーを出す瞬間も見逃せないぞ。ジャッキーは超人なり。アーミーダーボー。

posted on 2001/12/02
ハンニバル
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ハンニバル

監督:リドリー・スコット
HANNIBAL [ 2000年 アメリカ ]
映画として、可もなく不可もなくといったところに落ち着いたのは仕方ないといえば仕方がないのかもしれない。今作はレクター博士にスポットを当てた物語で、彼の美的でインテリな感じを映画全体から終始感じさせる作りとなっており、演じるアンソニー・ホプキンスの見事さは本当に文句のつけようがない。ただ相対するクラリスと今回の敵役(あれがゲーリー・オールドマンだったのね)が、レクターとの力関係において圧倒的に差がありすぎたため、その分ドラマで見せようと頑張ってはいるけれど、なんとなく時間切れで終了といった感じで終わってしまって、ちょっと勿体無かったように思える。脳味噌よりも高レベルな頭脳のスリリングな駆け引きがもっと見たかったな。

posted on 2001/11/25
グリーン・デスティニー
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グリーン・デスティニー

監督:アン・リー
臥虎蔵龍 / CROUCHING TIGER, HIDDEN DRAGON [ 2000年 中国・アメリカ ]
真正面ハゲのチョウ・ユンファが渋い! 芸術的品位あふれるワイアー・アクション史劇で、しっとりしたラブストーリーに仕上げた、アン・リーの巧みな技が冴え渡る一本。静と動のリズム・呼吸が見事で思わず画面に引き込まれてしまいます。『マトリックス』以降、大流行のワイヤー・アクションに対し、あまりに優雅な美的センスを見せつけた本家の底力。竹林の決闘シーンは映像の歴史教科書に刻まれるべき傑作シーンだったと思う。

posted on 2001/10/23

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