ヴァージン・スーサイズ
CINEMA

ヴァージン・スーサイズ

監督:ソフィア・コッポラ
THE VIRGIN SUICIDES [ 1999年 アメリカ ]
ボーイ・ミーツ・ガールのドキドキ胸キュンな感覚と、自殺という決定的な断絶が脳裏に刻まれるいたたまれぬ傷を負わされる感覚が同居する。人生の輝けるほんの一瞬の時間。過去の美しい思い出を心の中でリピート再生したまま、残りの空虚な日々を生き続ける男たちの哀しい性。世界は女で回っているとはよく言ったものだ。自称ファッションなヒトたちのお手本が詰まった映画でもあるけれど、ソフィア・コッポラにここまで達者にやられるとは。エールの音楽が鳴った時点で、もうお見事でした。

posted on 2001/02/21
奇人たちの晩餐会
CINEMA

奇人たちの晩餐会

監督:フランシス・ヴェベール
LE DINER DE CONS [ 1998年 フランス ]
バカ映画のセンスに関して、フランスはかなり突き抜けたものがあると思う。狙っているのだろうけど、キャラがリアルすぎて戦慄的ナンセンス・ギャグの応酬がたまらない。大ヒットを記録し、セザール賞も受賞。さすがはエスプリの国である。あー、おもしろかった。

posted on 2001/02/12
マグノリア
CINEMA

マグノリア

監督:ポール・トーマス・アンダーソン
MAGNOLIA [ 1999年 アメリカ ]
みなさん、もう観てると思うけど、これは凄い映画ですよ。オチはどうでもいい。あれは、アルトマンが『ショート・カッツ』で地震を起こしたのと、ある意味同じようなものだ。やってることは相当に頭おかしいが・・・(う〜ん、ブリリアント!)、でも、本当にすごいのは3時間衰えないグイグイ観る者を画面に釘付けにして離さないテンションであり、映画そのものだ。不安であり、恐怖であり、謎であり、愛であり、怒りであり・・・とにかく全編ふっと気を抜かせてはシリアスに緊張感が高まっていく。描かれているのは悲劇まじりのリアルな日常。登場人物が微妙に重なりあっていく巧妙な構成。長まわしショットの多用。エイミー・マン(懐かしい!)の歌声が流れ出すオープニング・シーンから「とんでもない映画だ!」と、ビシビシ興奮を感じさせる。劇場で観なかった自分を本気で呪いたく思うほどの★★★★★作品だった。

posted on 2001/02/06
醜聞(スキャンダル)
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醜聞(スキャンダル)

監督:黒澤明
[ 1950年 日本 ]
なんか黒澤明っていうだけで身構えてしまいがちだけど、そんな力む必要のない普通に観て楽しめるエンタテインメント作品が実に多い。それは代名詞的存在の『七人の侍』や『用心棒』のような時代劇に限らず、現代劇においても素晴らしいユーモアに満ちている。今作は有名人カップルのでっちあげ記事に対する裁判劇として話は展開するのだが、半世紀が経ったいまでも、かなりおもしろく観ることができる。志村喬のダメ弁護士ぶりがいいです。弁護士事務所が4階建てビルの屋上(名刺では5階と表記している)だなんて、『マルコヴィッチの穴』だよな〜と思ったりもして。

posted on 2001/02/03
ギャラクシー・クエスト
CINEMA

ギャラクシー・クエスト

監督:ディーン・パリソット
GALAXIE QUEST [ 2000年 アメリカ ]
「スタートレック」のパロディを下敷きにしながら、話は妙な方向へでっかく展開。旬を過ぎた営業で食いつないでいる元ギャラクシー・クエストの役者たちが、いま一度、一致団結し、捨て身の大冒険を決行する。「NEVER GIVE UP ! NEVER SURRENDER !」という決めゼリフは、あまりに陳腐すぎて失笑されるのが普通だろうけど、これが劇中で猛烈な感動を呼びおこす。本気で戦っている人は、本気で楽しませて感動させてくれる。思いっきり笑ったり泣いたりしたい僕たちにとって、シガニー・ウィーバーのお色気も許せてしまうかけがえのない一本。

posted on 2001/01/28
ロザリー・ゴーズ・ショッピング
CINEMA

ロザリー・ゴーズ・ショッピング

監督:パーシー・アドロン
ROSALIE GOES SHOPPING [ 1989年 西ドイツ ]
あまりにも有名すぎる『バグダッド・カフェ』に比べると、こちらの方がカルト映画と呼ぶにはふさわしいように思えるパーシー・アドロン監督作品。アーカンソーの田舎で暮らすドイツ系子沢山変わり者一家の妻ロザリーを同じく『バグダッド・カフェ』のマリアンネ・ゼーゲブレヒトが演じている。一家のやりくりのため、ロザリーは犯罪的なまでにお金に執着。自ら犯した罪や悪事を全部カソリック神父に懺悔しつつも、クレジットカードや小切手に細工を加え、ドイツから旅行で来た両親の帰りの航空券をだまって売却し、しまいにはコンピューター・ハッキングを堂々かまして一財を築いてしまう。まさにカルトなヘンチクリンな映画。

posted on 2001/01/25
EUREKA
CINEMA

EUREKA

監督:青山真治
[ 2000年 日本 ]
台詞の言葉数こそ少ないが、だからこそ発せられる言葉のひとつひとつが重く、鮮明に心に響く。セピアな色調(クロマチックB&W)でプリントされた目にやさしい見事な映像は、主人公達を、映画を繊細なまでに深く深くさらけ出す。変わらない日常を生き続ける僕たちも、傷を負った主人公達の共同生活や旅姿を追いながら、ただ逃げているだけの日々を送っているのか、漠然とでも何かを始めようとしながら生きているのか、自らの存在意義、探し求めているものは何なのか、自らの哲学を問い考える。物語終盤、ジム・オルークの「ユリイカ」が流れる特別で秀逸なシーンを思い出しながら、また考える。変わらない日常でありつづけようが、行きようと意志を持った瞬間にすべてが色づきはじめるマジック。3時間37分の長尺を気にしてはいけない。静かな感動が波打つ、2000年代を代表する傑作。九州人として、九州が素敵に懐かしく思えた映画でもあった。

posted on 2001/01/21
リアル・ブロンド
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リアル・ブロンド

監督:トム・ディチロ
THE REAL BLONDE [ 1997年 アメリカ ]
ブラボー!! マジでブラボーですよ!! この映画が公開されたときはウディ・アレンの後継者とかいわれて気にしてはいたんだけど、今日になって観て、いやはや素晴らしかったです。ウディ・アレン狂な僕からしても、まんまウディ・アレンな映画でしたが、故意的にマネようという意図であったとしても(ニューヨークが舞台の恋愛群像劇で精神科医もちゃっかり出てくる)、この巧さと完成度では認めざるを得ないでしょう。トム・ディチロ、スゲーよ!と思っていたら、調べたところ『ジョニー・スウェード』(ブラピ主演の空からブーツが降ってくるニック・ケイヴもヘンな人で出てくる奇妙な映画)をデビュー作として撮ってた人でした。な〜るほどねぇ〜。

posted on 2001/01/17
黒猫白猫
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黒猫白猫

監督:エミール・クストリッツア
CHAT NOIR, CHAT BLANC [ 1999年 フランス・ドイツ・ユーゴスラビア ]
なにかとせわしない東欧の田舎町。老若男女、ヘンな人がたくさんでとにかく楽しい映画だった。その生のエネルギーと躍動感はなにゆえに?と思ってしまうけど、そんな疑問が頭に浮かんだ時点で僕らは負けているのだろう。生活とはそもそもこの映画のようにエネルギーに満ち溢れているものなのだ。正にも負にも振れ幅が少ない生活はつまらない。思いっきり笑ったあとで、そんなことをひとり思う。それにしてもじいちゃんサイコーだったな。

posted on 2001/01/15
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

監督:ヴィム・ヴェンダース
BUENA VISTA SOCIAL CLUB [ 1999年 ドイツ・アメリカ・フランス・キューバ ]
今月のSWITCH北野武号に山本耀司のインタヴューが掲載されていて、北野武と「今時の若い奴より、俺達の方が未来があるよな」といった話をしたと書いてあるのが、ものすごくグサッときた。この映画に登場する伝説的なキューバの老演奏家たちが、とにかくカッコよくて感動的なのは、いまもなお生き生きと人生の歩みを続けているからだ。キューバという国家を背景に生きる姿・表情・言葉・エネルギー。素晴らしく気持ちよいキューバ音楽とともに、強い憧れを抱いてしまう。2000年の単館作品興収ナンバー1を記録。

posted on 2001/01/08

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