ドッグヴィル
監督:ラース・フォン・トリアー
DOGVILLE
2003年 デンマーク
舞台となる「ドッグヴィル」という小さな村を、これといったセットもなく、床に描いた白線だけで表現された、壮大な実験作というイメージが強すぎて、正直なかなか観るのに気乗りしなかったわけですが、観てよかった。面白いです。映画としてはかなりの挑戦だったと思うけど、ストーリーは明解。ラース作品に共通する人間の醜態を、壁のないセットなだけに筒抜けで撮りまくってます。そんな撮影環境を記録したメイキングドキュメント『ドッグヴィルの告白』も観てみると、構図によってはセット全体がカメラに写るため、ほぼ全編にわたって役者全員が芝居に集中しなければいけないという、そんな緊張と疲労がアリアリで、かなり過酷そうでした。しかもスウェーデンの山奥のスタジオに約2ヶ月の合宿状態。まあでも監督ラース・フォン・トリアーの精神状態が一番つらそうに見えましたが、映画作家としてどこまで突き進んでくれるのか、まだまだ興味が尽きない才能の持ち主だと思う。