

猫が行方不明
Chacun Cherche Son Chat
監督:セドリック・クラピッシュ
1996年 フランス
セドリック・クラピッシュの初期作。改めて観ると雑多な下町風情が『男はつらいよ』の柴又みたいでとてもいい。最後おもむろにポーティスヘッド「Glory Box」が流れるのも、「ああそうだった」と懐かしく思い出した。


ホールドオーバーズ
The Holdovers
監督:アレクサンダー・ペイン
2023年 アメリカ
素晴らしい。かつて1989年の名作『いまを生きる』を観た時は、こんな先生いたらなぁなんて生徒目線だったけども、今作は完全に大人目線。クソガキはクソガキと思いつつ、若い芽を摘むよりも、わが子に限らず若者たちの可能性を信じる幅広い心を持ちたいと思う。


ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう
Ras Vkhedavt, Rodesac Cas Vukurebt?
監督:アレクサンドレ・コベリゼ
2021年 ドイツ・ジョージア
翌日会う約束をしたほぼ初対面の男女が、呪いにかかって翌朝別人の姿になってしまう物語。そんな話の筋とは無関係に差し込まれる日常の営み。舞台となるクタイシのロケーションが素晴らしく、映画を中断して地図とか調べてしまった。2021年の作品ながらワールドカップのアルゼンチン優勝を盛り込む奇跡。思わぬ傑作だった。


フェラーリ
Ferrari
監督:マイケル・マン
2023年 アメリカ・イギリス・イタリア・サウジアラビア
レースに勝つためにクルマを売る、その稀有な高級スポーツカーメーカーたるフェラーリの哲学を悟った創始者エンツォ。今も昔もレースの主軸はF1であるけれども、映画で触れるのはそこではなかった。イタリアンな愛憎劇と、牧歌的な時代のレースだからこその即死の世界。儚い美学。フェラーリのクルマの美しさは永久に不滅だ。


親密さ
監督:濱口竜介
2012年 日本
突然のスリーパーホールドにハッとする。恐るべし濱口竜介。かつての東急東横線渋谷駅の望遠。丸子橋の夜明けの対話。JR田町駅からのラスト。超長尺の中に潜む、カメラが捉える傑出したシーンに圧倒される。


PASSION
監督:濱口竜介
2008年 日本
2008年、濱口竜介監督が東京藝術大学大学院映像研究科で撮った修了作品。その後の作品にも通じる習作でありながら、観ている方が恥ずかしくなるところが全然ない。渋川清彦が活き活きとしている。同級生の瀬田なつきが助監督で参加。同大学の月川翔監督が自らのキャリアを振り切るきっかけとなった、学生としては突き抜けた作品。


ボーイズ・ステイト
Boys State
監督:ジェシー・モス、アマンダ・マクベイン
2020年 アメリカ
政治に関心のある高校世代の若者が一同に集まり、無作為に2つの党に分けられ、模擬選挙を行なう1週間の政治体験プログラムを追ったドキュメント。トップである知事を目指す者、判事を目指す者、ジャーナリストを目指す者など、個人・集団それぞれの戦いと情熱と友情の姿に、アメリカナイズされてるとはいえ、学びのある作品だった。


チャレンジャーズ
Challengers
監督:ルカ・グァダニーノ
2024年 アメリカ
10年を越える男女三人巡り合わせのビッグマッチ。カンケイを弄ぶ最高なゼンデイヤ。突如鳴り出すキマった音楽。因縁のサーブからラストシークエンスの大絶頂! クレイジーセクシークールな圧倒的おもしろさ!!!


手紙と線路と小さな奇跡
Miracle: Letters to the President
監督:イ・ジャンフン
2021年 韓国
韓国KORAIL嶺東線の両元(ヤンウォン)駅は実在する秘境駅。道路のない山の中の集落に暮らす人々によって作られた駅というのは実話らしい。いまでは渓谷の絶景を売りにした観光列車が走るようになっているようで、めっちゃ行ってみたい。映画は少女時代のユナが高校生役で戸惑うも、その強引さも含めて女神ユナの存在はありがたかった。


関心領域
The Zone of Interest
監督:ジョナサン・グレイザー
2023年 アメリカ・イギリス・ポーランド
壮絶な映像体験だった『サウルの息子』や、基礎教養としての『シンドラーのリスト』等を前提に成立させる新たな手法で、凄まじいサウンドデザインによる映画体験。いちいち気を取られてしまう赤子の泣き狂う声と、鬼嫁芝居の絶対王者となったサンドラ・ヒュラーの存在感。超強烈。
