過去のない男
監督:アキ・カウリスマキ
MIES VAILLA MENNEISYYTTÄ [ 2002年 フィンランド ]
カンヌがグランプリという太鼓判を押してくれたことで、ここ日本でもカウリスマキの映画が大ヒットしてくれればと思う。モノクロ・サイレントという究極の手法で最高のものを見せつけてくれた前作『白い花びら』から一転、カラーとなった今作は『浮き雲』に近いテイストで描かれたまさにカウリスマキな作品だった。暴漢に頭を殴られ過去の記憶を失った男が人生を再出発させるストーリーによって、非常にシビアなフィンランドの経済状況を映し出してはいるものの、登場人物たちがユニークで、誰一人として悲しみに暮れた泣きの芝居をしていないところが凄くいい。悲観的になりすぎず、人生は前にしか進まないということを肝に命じて、生きていこうじゃないか。いろいろあるけど、世の中捨てたものじゃあないはずだ。
posted on 2003/03/24