華氏911
監督:マイケル・ムーア
FAHRENHEIT911
2004年 アメリカ
マイケル・ムーア監督が自身の持論に信念を抱き、時論として発展させるために作り上げた、マイケル・ムーアなりの『ゆきゆきて神軍』ともいえる、今のアメリカ・ブッシュ政権へのカウンターとしてのドキュメンタリープロパガンダ映画。好きも嫌いも賛否両論いろいろあれど、この作品が2004年を最も象徴する映画として世の中に果たした役割は非常に大きいのではないだろうか。同時多発テロ発生以降、アメリカの主要メディアは政府のプロパガンダとしての性格を一層強めたといわれているこの時代、インターネットで知ることができる情報も確かに多いが、一般市民にとってこの映画で見る実際の映像のインパクトはものすごいものだと思う。そしてムーアの才能に拠るところが大きく、この映画は全米でも大ヒットした。アメリカの戦争はハリウッドの先行投資と言われたりもしてきたが、とうとう現行の政権そのものを敵とする、この映画がウケてしまった。「体制と犠牲、予定通り予定外、もうわからない!、責任者出て来い!」とは斉藤和義の歌の歌詞にあったけど、田中宇のサイトを読んだり、朝まで生テレビを見たりして、一般のテレビや新聞報道が伝えない情報を見聞きしても、アメリカ国家というのは混沌としまくっていて本当によくわからない。イラクで戦死した米軍兵士の母親が涙ながらに嘆く「知っているようで何も知らない」という言葉が、強烈なメッセージとして突き刺さる。