男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋
CINEMA

男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋

監督:山田洋次
[ 1982年 日本 ]
シリーズ第29作『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』は、絶望映画ともウワサされる一本。ヒロインはいしだあゆみ。第27作から満男役が吉岡秀隆に代わっているので、ふたりが出てるシーンは『北の国から』に見えてしまう。ただ今作の見所はそこではない。今作では、寅次郎が一目惚れしたヒロインにお世話して仲良くなっても、最後は彼女に男がいるとかでフラれて旅に出る、というお決まりのパターンで展開しない。寅次郎が恋をするのではなく、ヒロインから本気で惚れられるのだが、寅次郎はジェームズ・ボンドではなく、考え込んで柴又へ逃げ帰り、追いかけてきたいしだあゆみについぞ応えることができず、満男の前で涙を流すという、かくもシリアスな物語となっている。風の吹くまま気の向くままの寅次郎の業というか宿命を露呈したシリーズ異色の一本。フラれるより切ない。

posted on 2015/08/11

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