

ストレイト・ストーリー
THE STRAIGHT STORY
監督:デビッド・リンチ
1999年 アメリカ
1998年の夏に東京から実家のある宮崎まで青春18きっぷを使って3日かけて帰ったことがあるけど、それさえも異様に速いと思えるほど、この映画の旅はゆっくりとしたスピードで進んでいく。そもそも旅にスピードを求めるべきではないのだ。人生を旅と置き換えるなら、そのスピードはいかがなものか。僕は僕なりのスピードで目的地にむかって、この映画の主人公のように自力でたどりつきたい。リンチの前作『ロスト・ハイウェイ』から一転、『パリ、テキサス』のハリー・ディーン・スタントンが兄役で登場し、ゆっくり静かに言葉を交わし空を見上げるラストも秀逸な素敵に思える作品だ。


アメリカン・ビューティー
AMERICAN BEAUTY
監督:サム・メンデス
1999年 アメリカ
いつの時代であれ、人は他者とのコミュニケーションなしには生きている気がしないし、幸せになることはできない。その根本的な認識さえ麻痺してしまうほど、現代社会には時が過ぎていくたびに新たなモラルやルールや価値観が創り出され、他者とのコミュニケーションを成立させるにはあまりに複雑化してしまっている。時が流れるスピードはどうすることもできないが、それでも自分の人生をなんとかしていきたいというポジティブな気持ちに、この映画は思わせてくれる。


デッド オア アライブ 2 逃亡者
監督:三池崇史
2000年 日本
力と翔。前作が敵対する関係だった分、ふたりの本当の共演シーンは世紀の決闘ラストシーンのみで終わってしまったが、今回は三池版「コインロッカー・ベイビーズ」ともいえる完全なるバディ・ムービーとしてVシネ界の最強タッグが存分に楽しめる。予定調和のレベルを軽く超えた豪快で強引なもっていきかたは、今作でも随所に散りばめられ、(SHOW&笑&衝)=ショウ撃度も凄まじい。力のハジけっぷりといい、翔のヌケ具合といい、ふたりとものびのびしてて、ヤクザ映画とのギャップがとても気持ちいい。ラースの『キングダム』とともに続編が待ち遠しく思えるほど、トリコになる作品だ。


WAR ON PLASTIC PLANTS / REGULAR FRIES
イギリス的なインテリ臭さのせいか、今回もすごく充実した作品を発表しておきながら、ほとんど話題にならなかったレギュラー・フライズ。しかし、昨年のモービーのように、十分に大化けする可能性があるだけに、いまこそライブが観てみたい(99年のフジで来てるが、フジは未見だ)。メロウなミドル・ナンバーでのメロディ・センスも光る、プライマル・スクリームが示した近未来型ロック・バンドの裏街道を行ってるような、目が離せないお気に入りのバンドだ。


飛べない鳥 / ゆず
いまやスタジアムクラスの恐ろしい人気を誇り、街並みに溢れかえるフォロワーを見れば明らかなように、ゆずは世紀末における日本の音楽的現象にまでなってしまった。知ったのは、つい3年前だ。ナマったらしい応援歌は他人に任し、とうとうこんなにも素晴らしい名曲を作り上げてしまった。日本代表、今年のベスト・シングル。


ダンサー・イン・ザ・ダーク
DANCER IN THE DARK
監督:ラース・フォン・トリアー
2000年 デンマーク
最初のミュージカル・シーンが始まったときのゾクゾクっと瞬時に覚醒するほどのカタルシス。両目から涙をたれ流しながら傍観することしかできないラスト〜最後から2番目の歌。ストーリー自体は、いたってシンプルなものだが、喜怒哀楽という四字熟語以上の感情の大きな振れ幅は、ビョーク=セルマの歌と音楽による効果があまりに大きい。一世一代の役をビョークはフィルムに刻んでいたし、ビョークとともに迫真の演技で対抗したカトリーヌ・ドヌーブも本当に素晴らしかった。セルマの母親像はあまりに極端なものではあったが、だからこそ真実の感動があったのだろう。ラースは映像作家として、また究極のものを作り上げてしまった。目を赤くして放心状態で劇場をあとにすることは避けられない。


BOWIE AT THE BEEB / DAVID BOWIE
デビッド・ボウイが好きだ。本当に大好きだ。かといって、盲目的に全肯定するつもりはない。芸歴が長いので、信じ難いほど素晴らしい作品もあれば、救い難いほどヒドイものもある。今作は1968年から1972年にかけてイギリスのラジオ番組「BBCセッション」用に録音された音源をまとめた2枚組。まさに、信じ難いほど素晴らしい作品を量産していた時代の貴重なテイクが37曲である。珠玉。


死亡遊戯
GAME OF DEATH
監督:ロバート・クローズ
1979年 アメリカ
世界的な知名度から言っても東洋一のスーパースターとしては無敵であり伝説でもあるブルース・リー。映画がどうこうという以前にブルース・リーという圧倒的な存在があれば、もはやそのすべてが肯定される。ほんとでもすごいです。全世界のド肝を抜いたカンフー・アクションは当然として、その他の動作、顔、表情、髪型、ファッション、ヌンチャク・・・、彼のそのキャラクターを構成するすべてが完璧なのだ。今作での有名すぎる黄色い全身タイツは、元々悪者の部下のコスチュームなのだが、それを着て敵のアジトに乗り込んで最後の決闘をするブルース・リーを見てると、あまりに見事でタイツ姿が神々しい。これを観た誰もが、一度試着ぐらいならしてみたいと思っているはず。残念ながらブルース・リーはこの映画の完成をみることなく他界したため、一部吹き替えによって完成したいわく付きの作品。さらにこの運命は、まさに今作の劇中のシーンのように(映画アクション・スター役のブルース・リーは撮影シーンで敵によって空砲から実弾にすりかえられたピストルで撃たれてしまうという場面がある)、息子ブランドンにも引き継がれてしまう。


HELPLESS
監督:青山真治
1996年 日本
うーん、なんなんだろうなぁ、というのが正直な僕の印象。退廃、退屈、やるせなさ。病んだ世の中への突発的な怒りと暴力。主演の浅野忠信がNIRVANA『NEVERMIND』のTシャツを着ている、そんな映画。


MORE LIGHT / J MASCIS + THE FOG
掛け値なしにカッコいい、ロック・アルバムだ。これは本気で惚れ惚れするぞ。ダイナソーJR.もオルタナもなくとも、とにかくJは帰ってきた。さらに強度を増した爽快なノイズ・ギター・ミュージック。相変わらずのヨタった歌唱で吐き出される愛しい愛しい極甘なメロディ。やはり、Jは本物の怪物だった。来年2月の来日公演も決定。昇天確実、行くべし!
