SMASH THE SYSTEM (singles and more) / SAINT ETIENNE
最近、CD屋さんにセイント・エチエンヌの新譜らしきものが置いてあると思ったら、それはアメリカ向けの彼らのベスト盤でした。まあでも今更ながらもセイント・エチエンヌが割と好きなので、もっと評価されていてもいいのになぁ、とも思うわけです。割と好き、という物言いが微妙なニュアンスに取られかねないですが、割と好き、という感じが実によく当てはまってしまうから仕方がない。そんなわけで新しいのに限らずいろいろ出ている彼らのベスト盤ですが、個人的には新しいやつより2001年版の2枚組ベスト盤『SMASH THE SYSTEM』をオススメします。1990年のデビューから1999年までの軌跡がたっぷり詰まっていますが、この変わらない一貫した音楽スタイルは何なのでしょうか。当時は何も考えずに聴いてましたが、こうして振り返ってみると、結構すごいことのように思えてきます。メロディ・メイカー誌出身がいるだけに、メロディ・メイカーとしても実は素晴らしいポップチューンだらけ。その昔、ライブはカラオケという評判を聞いたものですが、スパンク・ハッピーよりずっと以前にそんなライブを堂々とやっていたというだけでも、再評価されてしかるべきかもしれません。そろそろ日本にも来てくれないかなぁ。今こそライブが観たい。
LOUDEN UP NOW / !!!
如何せんバンド名が「!!!」というのは口語・文語ともに扱いづらいのが難点なわけですが、どうやら彼らは今年を代表するダンスバンドとして君臨しそうな勢いであります。ボーカルがちょっとジョー・ストラマーっぽいなぁと思っていたら、曲のほうも在りし日のクラッシュを彷彿とさせるニューウェーブ・パンクの要素が割りと見受けられます。いつかのローフィディリティ・オールスターズのときのように、今年のフジロックでは彼らのライブで大いにダンスして盛りあがることでしょう!
MUSICOLOGY / PRINCE
プリンス好きにはたまらない、歓喜の新作。往年のプリンスを思い起こさせる丸出しムキ出しのエッセンスがこれでもか!と言わんばかりの大放出であります。やったよぉー! ここにきてプリンスの活動が充実しまくっているわけで、この風通しの良さにファンも素直に反応しているのか、現在のアメリカツアーは連日大盛況のようだ。おととし来日したレインボーチルドレンツアーでのパフォーマンスは、骨の髄までメロメロにさせられた人生最高と言ってもいい幸福絶頂のライブ体験だったわけですが、さらに勢いを増して席巻している現在のツアーの流れで、是非また来日してくれることを願わずにはいられません!
THE VERY BEST OF ELTON JOHN / ELTON JOHN
コアなロックファンにとってエルトン・ジョンはおおよそ無視された存在なのかもしれない。『ライオン・キング』の音楽をやったことで、なおさら評価対象から外されることに拍車がかかったことだろう。しかしながら、彼の音楽、とりわけ70年〜80年代の音楽を聴くに、どこも否定しようのない素晴らしい音楽であることは間違いなく、この2枚組のベスト盤は本当に愛聴してきているものだ。今でこそ誠実そうないいおじさんでも、ハチャメチャな私生活を送ってきた変人ロックンローラーであること。普遍的なメロディーをあんなにも生み出す才能があっても詩が書けず、作詩家のバニー・トウピンとコンビを組んで大成功したこと。カツラには億単位とウワサされているほど金が注ぎ込まれていること。音楽的な接点が全くないようなビースティ・ボーイズが「BENNIE AND THE JETS」(かなり好きな名曲です)をカバーしていたり、グラミーのステージでエミネムと共演したりしたこと。何かと逸話が多いのも、凄みを感じてしまうが、とにかく「サー」の称号を持つエルトン・ジョンの名曲はいつ聴いても素晴らしいということだ。
TOMMY AIRLINE / TOMMY FEBRUARY6
昨年出たペット・ショップ・ボーイズのベスト盤『POPART』は、ド頭から「GO WEST」という「POP」盤と「WEST END GIRLS」などが収録されている「ART」盤に分かれた2枚組だった。エレポップリバイバルの象徴となったトミー・フェブラリーにとっての大大大傑作ファーストは言うなれば「POP」で、今回のセカンドは「ART」なんだと思う。チアリーダースタイルでカモフラージュされていた、手強いメガネっ娘としての知性と毒っ気が発揮されつつあるような雰囲気が感じられる。まさにトミーの風格といったところか。さすがであります。
TITLE#1 / 石野卓球
電気のベストアルバム発売と同じタイミングでリリースとなった卓球のソロアルバム。電気をとりあえず活動停止してから意外と時間が経過してしまっているが、その間のソロ活動の集大成をまとめてリリースする運びとなった第一弾アルバムだ。卓球自身も語っているように、確かに夜のアルバムという印象を受ける。ハイテンションのパーティー仕様ではなく、ひとり部屋でしっくり馴染むやさしい感触。「XTHC」という曲があるほど、ニューウェーブ寄りのサウンドがかなり効いていて、とても気に入っております。
THE LAST GREAT WILDERNESS / THE PASTELS
お久しぶりのパステルズから届けられた新作はデビッド・マッケンジー監督による同名映画のサウンドトラック。わずか30分弱でサントラの性格上インストナンバーがほとんどだけど、これはこれで結構手応えというか聴き応えアリ! ティーンエイジのジェリーさんや我らが日本の工藤冬里といった、地元グラスゴーからレーベルのジオグラフィック関係その他のパステル人脈総動員といえるゲストが満載。そんでもって、共同プロデューサーはジョン・マッケンタイアなわけですが、パステルズならではの音響〜映画スコアアプローチをしっかりフォローしてくれているような、あくまでほんわかムードが心地よいです。ナイスな選曲と言えるカトリーナが歌うスライのカバー「EVERYBODY IS A STAR」と、今回のゲスト軍団ユニットTHE NU FOREST名義でジャービス・コッカーが独特の節回しを久々に聴かせてくれる「I PICKED A FLOWER」、このわずか2曲ながら今回収録されたボーカルトラックの素晴らしさも聴き逃せない。
ECLECTIC / 小沢健二
二転三転した挙句ようやっとリリースされたシングル集『刹那』は、ジャケットが3種類もあるものの曲数が8曲プラス1トラックと、予想以上に厳選されてしまっているため、またしても謎が増えてしまった結果となったように思える。2年前、復活作として世に放った『ECLECTIC』の出来映えは素晴らしいものであったが、ここでも扉は開かれることなく、ついに表に登場することはなかった。タイミングの問題なのか、ポジショニングの問題なのか、契約上の問題なのか、何か決めあぐねずにはいられない環境なのかもしれない。元々、フリッパーズ・ギター〜小沢健二に距離を置いてきた自分にとって、アーバンソウルな洋楽インテリファンク的ハイ・フィデリティー・サウンドでバリバリ聴かせる『ECLECTIC』の変貌ぶりは特に気になることもなかったものだが、こう何年もだんまり決め込んでいるのは、さすがに気持ちが悪い。ブルーノートあたりでライブやっちゃえば良かったのに、小沢健二の沈黙とスティーブン・セガールの沈黙シリーズはいつまで続くのだろう。
COMMUNICATION / KARL BARTOS
クラフトワークの新作を紹介したなら、こちらの新作も紹介せねばなるまい、かつてクラフトワークだったカール・バルトスのソロ・アルバム。この人の専売特許といえるロボット・ボイスが炸裂というか歌いまくりですよ。ちょいと前にはエレクトロニック(バーナード・サムナーとジョニー・マーのアレです)にも参加してたこともあったわけで、この作品はまさにクラフトワークが思いっきりエレポップに傾倒してできてしまったような、キャッチーで究極という素晴らしい出来映え。ひょっとしたらこのおじさんも来年日本に来るかもしれないだなんて、コンピューターワールド万歳。
TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS / KRAFTWERK
出ました17年振りの新作。「TOUR DE FRANCE」そのものは1983年にリリースされたシングルで、電気グルーヴ懐かしの変名コンピレーション『ドリルキング・アンソロジー』でのペダル踏弥「ツルっとフランス子守唄」の元曲だったりもするのだが、2003年、TOUR DE FRANCE100周年を記念して一新、長編アルバム化、ただしジャケットはそのまんまという、クラフトワークの芸の術を見事なまでに注ぎ込まれた会心の一枚。実を言うと、懺悔しますが、かの前作『エレクトリック・カフェ』は大学のときに買ったものの、あまり聴かなくて売ってしまったのであります。若かりし頃に、こうすんなりクラフトワークに行っちゃうのも、気味悪い気もするし、まぁ良しとしてやってください。1998年、2002年と見逃し続けたライブも、再度新たにチャンス到来! 来年の単独公演が本当に楽しみでなりません!!