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WONSAPONATIME / JOHN LENNON
何年か前にジョン・レノン・アンソロジーとしてリリースされたアウトテイク集。ほとんど知ってる曲なので、普通に楽しめて良い。1曲目から「I’M LOSING YOU」の歌いっぷりがシビれますね。もし曲作りの才能がなかったとしても、この人はノドだけで世界を変えてたかもな。奥田民生が「体は黒人、脳は日本人、ノドは白人がいい」って理想を言ってたけど、ジョン・レノンこそ白人の喉のベスト・オブ・ベストだろう。
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TO THE BONE / THE KINKS
先日、ちっちゃな中古屋でキンクスの3枚組リマスター盤を1800円の安値で購入したのが、ちょっとした喜びだったりする。それは1970年までの楽曲が全60曲も収められている立派なもの。有名曲以外にも、かなりいい曲がたくさんあって、すっかり惚れこんでしまった。それまでキンクスを聴くというと、ここで紹介する1996年発表の2枚組ライブ盤くらいしかなかったので、かなりいい買い物だったなぁと思ってしまう。芸歴も40年近いとなると、あまりにタイトルが多いので、このライブ盤はキンクスへのファーストコンタクトとして最適と言えます。冒頭の「ALL DAY AND ALL OF THE NIGHT」のギターリフでたいていの人はガツンと目が覚めるのではないでしょうか。「YOU REALLY GOT ME」もしっかり入ってますが、これしか知らないというのはちょっと勿体無いぞ! これ聴いてるとライブ観たくてたまらなくなってくるんだよなー。そろそろやってくんないかなー。あ、その前にレイ・デイヴィスさん、ヨ・ラ・テンゴとレコーディングした曲もお願いします! ♪カム・ダーンシン!!
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GERROA SONGS / ARCHER PREWITT
弾力形状弛緩系マンガ「SOF’BOY」の作者のソロ・アルバムを買ってみました。早い話がシー・アンド・ケイクのおっさんなんですが、かなり良いです。素晴らしいです。傑作です。冬の傑作と呼ぶにふさわしいような、静かに音が聞こえてくるイメージがストーブを炊いた部屋で聴くと一段と胸にジーンと染みますね。浜辺にひとりのおっさんとカンガルーの群れというジャケットも泣かせてくれます。
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HIGH LLAMAS / SEAN O’HAGAN
お馴染みハイ・ラマズのショーン・オハーガンがマイクロディズニー解散後にリリースした唯一のソロ作(1990年発表)。その後はこれのアルバムタイトルをバンド名にして活動してるわけで、ファンならば気になる作品と言えるのでは。独特のほんわかムードもこの時点からあるにはあるけれど、『HAWAII』のように寝てしまうほどの威力はまだない。ギター中心のサウンドでメロディがとてもしっかりしています。素朴ながら惹かれるものが多い愛聴盤。意外なほどヴォーカルで熱唱してるのが微笑ましくて良いです。
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35 STONES / 斉藤和義
すごくオーソドックスな形で構成された楽曲で占められた、斉藤和義の歌心が存分に伝わってくるアルバム。君と僕の狭い世界で巻き起こる夢や日常をスケッチしたり、本来男が持つ優しさや弱さといった心情を吐露するロマンチックな歌うたいとして、とても魅力を感じる。やっぱりどうしても特に女の子の前だとうまく格好がつかないものだけど、いろいろ考えたり思ってたりしてるわけですよ。♪君は月の向こう側へ行ってみようとはしゃいでる 「確かめたいの」 僕は夢の向こう側へ行ってみたいと願ってる 「叶うはずだ」
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WHEN YOU WERE A BEAUTY / GREAT3
前作『MAY AND DECEMBER』で新たな境地を切り開いた彼らが、その勢いを加速させて、わずか9ヶ月のインターバルで発表した今回のアルバム。引き続きジョン・マッケンタイアと組んだシカゴでのコラボレーションはさらに熟成と自信を深めたものへと発展。そのサウンドプロダクツの秀逸さとともに、GREAT3の詞の世界が耳とココロをトリコにして離さない。これは本当に素晴らしい作品だ。
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AND ALL THAT COULD HAVE BEEN / NINE INCH NAILS
厳寒の1月、ニンの初来日をNKホールまで観に行ったものだけど、あれから2年も経ったんだなぁと思わせる2000年USツアーを収録したライブアルバム。この人の場合、音もヴォーカルも達者すぎるお方なので、ライブといっても原曲とそんなに変わることはないのだが、幾分生バンドの要素が加味されて、肉体的なダイナミズムが味わえる。少なくとも、あのライブを観た人は余計に盛り上がってしまうのではないだろうか。ステージをのたうちまわる豚、トレント・レズナーの姿は強烈な印象を残すものだった。RADIOHEADを存在で打ち負かすことができるのは、年を取ってきてるとはいえ、この男しかいないと思うのだが。「癒し」という生ぬるい言葉が蔓延する世の中を一蹴する本当に傷ついている人が求める音楽がここに凝縮。律義に全キャリアを網羅したベストな選曲にしてしまうトレントが好きだ。
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HORSES / PATTI SMITH
そろそろ馬も打ち止めか。パティ・スミスの代表的ファーストアルバム。白シャツにサスペンダー姿の有名すぎるロバート・メイプルソープによるジャケット写真だけでも、十分すぎる価値があるわけだが、冒頭で際立つTHEM(ヴァン・モリソン)のカバー曲「GLORIA」(去年のフジロックのパフォーマンスも素晴らしかった!)といい、トム・ヴァーレイン(テレビジョン)の参加やプロデューサーのジョン・ケイルといった人脈など、1975年当時のニュー・ヨークの伝説が生まれるべくして生まれたような、宿命的なパワーが宿っている。
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BRINGING DOWN THE HORSE / THE WALLFLOWERS
さらに馬で引っ張ってみました。ボブ・ディランの息子、ジェイコブ・ディランのバンドのセカンドにして大成功をおさめた作品。さすがに顔が似てるけど、その声質や音楽性から父親よりブルース・スプリングスティーンを彷彿とさせる、どこか懐かしい趣のある良質なアメリカンロック。代表曲「ONE HEADLIGHT」は自作の編集CD-Rに入れたくなるような名曲だと思います。
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ECSTASY / LOU REED
正真正銘馬年だったのがルー・リード。1942年3月2日生まれ(同じ魚座だったのね)ということで、今年でなんと60歳の還暦を迎えます。ルー・リード60歳、カッコ良すぎるではないか! 彼の一枚なら自信を持って2000年発表の最新作を紹介。これは本気で素晴らしい大傑作でございますよ。これ聴かずしてヴェルヴェッツを語るなかれ。ルーのおじさんがジャケットスリーブでまんまエクスタシーな表情を浮かべておりますが、これほど官能的で攻撃的でロマンティックなものを耳にすると、ステレオの前で土下座するしかないでしょう。最終曲の「BIG SKY」では泣きの8ビートロックという、このダメ押しが嬉しすぎてたまらんです。しっかり聴いて、男の生きる道を修行したいと思います。