

DAYS OF SPEED / PAUL WELLER
「ああ、ポールっ!」とシェイクスピア劇のように声高く叫んでしまいそうなほど、このアコースティック弾き語りライブアルバムは素敵だ。昨年、まさにこの形態で日本でもライブを行なったのに、丁度その頃僕自身が最悪の生活状況だったので見送ってしまったことが、とにかく悔やまれる。ソロになってからジャムやスタイル・カウンシル時代の曲を披露したのはこれが初めてだったはず。「ENGLISH ROSE」なんて名曲が解禁されてるなんて・・・。大きなため息が出ちゃうよなぁ。どの曲もすごく冴えてるし、ギター一本持ってひとりだけでライブツアーをやってしまうポール・ウェラーはやっぱり頼もしい。


EBAN & CHARLEY / STEPHIN MERRITT
ジェームズ・ボルトン監督作品のサウンドトラックをTHE MAGNETIC FIELDS、FUTURE BIBLE HEROES、THE 6THS、THE GOTHIC ARCHIESのステファン・メリットがここではソロ名義で制作。映画に関する情報や内容は全く不明で、日本では一般公開はおろかビデオになるかさえわからないけど、サントラは無事に輸入されて聴けるだけ幸せなのかも。インスト中心でヴォーカル入り6曲という構成。かなり暗いけど、本人はのほほんと作っているような余裕も感じられる一品。ヴォーカル曲での歌心も十分でございます。


WONSAPONATIME / JOHN LENNON
何年か前にジョン・レノン・アンソロジーとしてリリースされたアウトテイク集。ほとんど知ってる曲なので、普通に楽しめて良い。1曲目から「I’M LOSING YOU」の歌いっぷりがシビれますね。もし曲作りの才能がなかったとしても、この人はノドだけで世界を変えてたかもな。奥田民生が「体は黒人、脳は日本人、ノドは白人がいい」って理想を言ってたけど、ジョン・レノンこそ白人の喉のベスト・オブ・ベストだろう。


TO THE BONE / THE KINKS
先日、ちっちゃな中古屋でキンクスの3枚組リマスター盤を1800円の安値で購入したのが、ちょっとした喜びだったりする。それは1970年までの楽曲が全60曲も収められている立派なもの。有名曲以外にも、かなりいい曲がたくさんあって、すっかり惚れこんでしまった。それまでキンクスを聴くというと、ここで紹介する1996年発表の2枚組ライブ盤くらいしかなかったので、かなりいい買い物だったなぁと思ってしまう。芸歴も40年近いとなると、あまりにタイトルが多いので、このライブ盤はキンクスへのファーストコンタクトとして最適と言えます。冒頭の「ALL DAY AND ALL OF THE NIGHT」のギターリフでたいていの人はガツンと目が覚めるのではないでしょうか。「YOU REALLY GOT ME」もしっかり入ってますが、これしか知らないというのはちょっと勿体無いぞ! これ聴いてるとライブ観たくてたまらなくなってくるんだよなー。そろそろやってくんないかなー。あ、その前にレイ・デイヴィスさん、ヨ・ラ・テンゴとレコーディングした曲もお願いします! ♪カム・ダーンシン!!


GERROA SONGS / ARCHER PREWITT
弾力形状弛緩系マンガ「SOF’BOY」の作者のソロ・アルバムを買ってみました。早い話がシー・アンド・ケイクのおっさんなんですが、かなり良いです。素晴らしいです。傑作です。冬の傑作と呼ぶにふさわしいような、静かに音が聞こえてくるイメージがストーブを炊いた部屋で聴くと一段と胸にジーンと染みますね。浜辺にひとりのおっさんとカンガルーの群れというジャケットも泣かせてくれます。


HIGH LLAMAS / SEAN O’HAGAN
お馴染みハイ・ラマズのショーン・オハーガンがマイクロディズニー解散後にリリースした唯一のソロ作(1990年発表)。その後はこれのアルバムタイトルをバンド名にして活動してるわけで、ファンならば気になる作品と言えるのでは。独特のほんわかムードもこの時点からあるにはあるけれど、『HAWAII』のように寝てしまうほどの威力はまだない。ギター中心のサウンドでメロディがとてもしっかりしています。素朴ながら惹かれるものが多い愛聴盤。意外なほどヴォーカルで熱唱してるのが微笑ましくて良いです。


35 STONES / 斉藤和義
すごくオーソドックスな形で構成された楽曲で占められた、斉藤和義の歌心が存分に伝わってくるアルバム。君と僕の狭い世界で巻き起こる夢や日常をスケッチしたり、本来男が持つ優しさや弱さといった心情を吐露するロマンチックな歌うたいとして、とても魅力を感じる。やっぱりどうしても特に女の子の前だとうまく格好がつかないものだけど、いろいろ考えたり思ってたりしてるわけですよ。♪君は月の向こう側へ行ってみようとはしゃいでる 「確かめたいの」 僕は夢の向こう側へ行ってみたいと願ってる 「叶うはずだ」


WHEN YOU WERE A BEAUTY / GREAT3
前作『MAY AND DECEMBER』で新たな境地を切り開いた彼らが、その勢いを加速させて、わずか9ヶ月のインターバルで発表した今回のアルバム。引き続きジョン・マッケンタイアと組んだシカゴでのコラボレーションはさらに熟成と自信を深めたものへと発展。そのサウンドプロダクツの秀逸さとともに、GREAT3の詞の世界が耳とココロをトリコにして離さない。これは本当に素晴らしい作品だ。


AND ALL THAT COULD HAVE BEEN / NINE INCH NAILS
厳寒の1月、ニンの初来日をNKホールまで観に行ったものだけど、あれから2年も経ったんだなぁと思わせる2000年USツアーを収録したライブアルバム。この人の場合、音もヴォーカルも達者すぎるお方なので、ライブといっても原曲とそんなに変わることはないのだが、幾分生バンドの要素が加味されて、肉体的なダイナミズムが味わえる。少なくとも、あのライブを観た人は余計に盛り上がってしまうのではないだろうか。ステージをのたうちまわる豚、トレント・レズナーの姿は強烈な印象を残すものだった。RADIOHEADを存在で打ち負かすことができるのは、年を取ってきてるとはいえ、この男しかいないと思うのだが。「癒し」という生ぬるい言葉が蔓延する世の中を一蹴する本当に傷ついている人が求める音楽がここに凝縮。律義に全キャリアを網羅したベストな選曲にしてしまうトレントが好きだ。


HORSES / PATTI SMITH
そろそろ馬も打ち止めか。パティ・スミスの代表的ファーストアルバム。白シャツにサスペンダー姿の有名すぎるロバート・メイプルソープによるジャケット写真だけでも、十分すぎる価値があるわけだが、冒頭で際立つTHEM(ヴァン・モリソン)のカバー曲「GLORIA」(去年のフジロックのパフォーマンスも素晴らしかった!)といい、トム・ヴァーレイン(テレビジョン)の参加やプロデューサーのジョン・ケイルといった人脈など、1975年当時のニュー・ヨークの伝説が生まれるべくして生まれたような、宿命的なパワーが宿っている。
