

太陽を盗んだ男
監督:長谷川和彦
1979年 日本
ジュリーこと沢田研二といえば、塚本晋也監督の『妖怪ハンター ヒルコ』での怪演がなかなか微笑ましかったものですが、やはりジュリーにとって銀幕のカルトスターの地位を決定付けたのは、この作品となるのだろう。U2が『How to Dismantle an Atomic Bomb(原子爆弾を解除する方法)』というアムバムを先ほどリリースしたばかりではあるけれど、この作品でジュリーが演じた中学理科教師は、東海村の原発からプルトニウムを盗み、なんと自らマンションの自室で原子爆弾を作り上げてしまう。伝説の日本映画とも呼ばれているだけの、異様な空気に満ちたエネルギーに翻弄されながら、最後の菅原文太との対決シーンは『DEAD OR ALIVE』の哀川翔VS竹内力のときのように興奮してしまいました。国家レベルのパワーを核によって手に入れたものの、野球のナイター中継を試合終了まで見せろ、ということ以外、自分が何がしたいのかわからない、と告白した主人公にグッとくるものがあった。


列車に乗った男
L’HOMME DU TRAIN
監督:パトリス・ルコント
2002年 フランス・ドイツ・イギリス・スイス
そのタイトル(邦題)からして、ヴィム・ヴェンダース初期のロードムービーのようなものを期待してしまいましたが、列車のカットはオープニングしかなくて、とんだアテ外れでありました。しかしながら、とある田舎町の駅で列車を降りた男(物静かな銀行強盗)と、その町に住むひとり暮らしの老紳士(銀行強盗を夢見る元学校教師)という、地味渋に描かれる男ふたりの短い友情物語は、かつて『タンデム』という作品がルコントにはありましたが、ユーモアのエッセンスも含めた哀愁がやたら切なくさせる良作だったと思います。


殺人の追憶
MEMORIES OF MURDER
監督:ポン・ジュノ
2003年 韓国
実際にあった未解決の連続婦女強姦殺人事件をもとに描かれた作品。韓国の田舎の風景と住民をのどかにユーモラスに見せて和ませつつ、次第にシリアスになっていく状況に引き込まれていく。手がかりらしい手がかりもなく、唯一犯人の可能性のある容疑者を問い詰める警官の姿は『セブン』のブラッド・ピットを思わせる極限の苦悩があった。実話通り事件の解決には至らぬも、おおいに見応えのある力強い作品だ。


チェ・ゲバラ 人々のために
CHE, UN HOMBRE DE ESTE MUNDO
監督:マルセロ・シャプセス
1999年 アルゼンチン
10月9日はチェ・ゲバラの命日だった。革命家としての思想に決定的な影響を与えた南米各国を旅した若き日のチェを描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、是非とも観たい映画のひとつだが、そもそも彼とは何者なのかを知っておくにはちょうどいいドキュメント作品。生前の彼を知る、ともに闘い、間近で接してきた者たちによる証言の数々。キューバでの革命が成功後も安住の道を選ばず、つねに現場へと身を投じ、民衆の解放を信念として生きたがために、最後はボリビアで無残な死を遂げてしまったチェ・ゲバラ。しかし、だからこそ厚く信頼され、真のリーダーとしての魅力は、ジョン・レノンをして「あの頃世界で一番かっこいいのがゲバラだった」と言わしめたほど、彼の死後衰えることはない。


CODE46
CODE46
監督:マイケル・ウィンターボトム
2003年 イギリス
最近特に精力的に作品を量産しているようなウィンターボトム監督の最新作。記憶に新しい『24アワー・パーティ・ピープル』は前々作にあたるようで、前作『イン・ディス・ワールド』の存在をすっかり忘れてました。今作は彼にとって初のSF作品ということで、日本では突然公開された感もありますが、一応世界のメディアではなかなか評判のようであります。しかし、やはりイギリス映画。SFという方面を期待するには、あっさりしているというか、お金かかってないなぁと思ってしまいました。SFラブストーリーという総合面で観ますと、悪くはなかったのですが、サマンサ・モートンがほとんど坊主頭なところも含めて(演技はさすがだったと思うが)、ジョージ・ルーカスの『THX-1138』にかなり近いものを感じてしまいました。劇中の管理された都市(上海)からアラブ世界へ逃避行をするわけですが、今までも『ウェルカム・トゥ・サラエボ』でのボスニアや『イン・ディス・ワールド』でのアフガニスタンなど、ドキュメント出身のウィンターボトムらしい行動の早さ、映像作家としての姿勢は立派だと思う。


NY式ハッピー・セラピー
ANGER MANAGEMENT
監督:ピーター・シーガル
2003年 アメリカ
これは『パンチドランク・ラブ』第2章ってことなのか。内向的でストレスを抑えこみすぎてしまうがために、突然ブチ切れて時々泣きたくなってしまう男を『パンチドランク・ラブ』で切なく演じたアダム・サンドラーですが、今作の役でもそのキャラクターのほとんどを引き継いでいて、当然のごとくイイのです。加えて共演のジャック・ニコルソンとのコンビがコワいくらい大当たりの面白さ! 基本的に負けを認めない、謝らないアメリカ社会に生きる人たちは、映画のエンドクレジットでローリング・ストーンズの「19回目の神経衰弱」が流れてたけど、精神ストレスって相当レベルでありそうに思えてしまう。


28日後…
28DAYS LATER
監督:ダニー・ボイル
2002年 イギリス・アメリカ・オランダ
暴力性ウイルスの拡大で汚染されたイギリスを舞台に、人間が人間を襲う現代のゾンビ映画。人類の滅亡を思わせる終末的な狂気を見るに、ダニー・ボイル版『ドラゴン・ヘッド』という一言で片付けられなくもないものだったりするのですが、結構当たったみたいで続編『28WEEKS LATER』が作られるとのこと。スケールをデカくしすぎた分、緊張感がイマイチで薄味な印象でした。


下妻物語
監督:中島哲也
2004年 日本
下妻上等!! 下妻市民及び茨城県民に限らず、日本国民にとって必見かつ誇りに思える今年最高の日本映画。ロリータファッションに身を包み田んぼの畦道を優雅な空想を膨らませて歩くスッとぼけた感じが完璧に合致した深田恭子がとにかくラブリー。片や田舎ならではのヤンキーレディース役で水野晴男を見つけて喜ぶ垢抜けないセンスを堂々と披露しまくる土屋アンナの根性も見事。NHKイタリア語会話での目付きの悪さは、この役の影響だったのか?! ハイテンションな流れから、そんなふたりのコンビネーションに愛着を感じ、行く先の分からぬ青春に熱いものがたぎるキラキラした感覚に魅せられまくり。『アメリカン・パイ』のような賞とは関係ない青春コメディをやりたかったという中島哲也監督だが、向こうのマネごととしてではなく、しっかりオリジナルな新しい日本の青春映画を撮り上げた手腕は素晴らしい。


スチームボーイ
監督:大友克洋
2004年 日本
世界的なセンセーションを巻き起こした1988年『AKIRA』の大友克洋による待望の新作を観に、公開に先駆けた新宿厚生年金会館での一般試写会に行ってきた。監督作としてはオムニバスアニメ『MEMORIES』の中の一篇「大砲の街」以来、9年振りとなるだけに誰もが期待してしまうのも致し方ないが、期待して観るには少しストーリーが弱すぎるように思えてならなかった。あくまで蒸気と鉄製マシーンにこだわった映像はさすがに見応えのあるものだっただけに、内容にもっと説得力があればなぁ、と少し残念な感じ。大友克洋らしい騒々しさは、たっぷり堪能できました。


アモーレス・ペロス
AMORES PERROS
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
1999年 メキシコ
新作『21グラム』も気になるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のデビュー作。『赤い薔薇ソースの伝説』や、もっと昔のアレハンドロ・ホドロフスキ監督作品など、カルトな名作はいくつかあったが、現在、かつてないほどメキシコ映画に注目が集まっている切っ掛けは、この作品の成功と、ガエル・ガルシア・ベルナルという若きスターを生み出したことによるところが大きい。荒々しくパワフルでエネルギッシュに見せつけながらも、緻密なカット割りテクニックと3つの物語が交錯する巧みに計算された構成は本当に見事だ。胸を抉られそうなほど直情に訴えかける痛みや喜び、悲しみ。残されたほんの小さな希望を持って生きる人間の生の奥深さ。この映画の凄みを強烈に感じながら見入ってしまう。闘犬がいろいろ絡んでくるだけに、犬好きは注意が必要かもしれません。
