

永遠のモータウン
STANDING IN THE SHADOWS OF MOTOWN
監督:ポール・ジャストマン
2002年 アメリカ
音楽好きじゃなくても知っているような数々の名曲をヒットチャートに送りこんだモータウンレコード。スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、スプリームス、フォー・トップス、テンプテーションズなどなどファンク〜ソウルミュージックの象徴的存在を生んだ影には、彼らのバックバンド、スタジオ・ミュージシャンを務めたファンク・ブラザーズという最高のミュージシャン達がいたことを語ったドキュメンタリー。現役のファンク・ブラザーズの証言と、再結成された彼らと彼らをリスペクトするシンガー達との共演ライブを中心に構成された最高に楽しめる内容になっている。ほとばしる熱い感動。チャカ・カーンが歌う反戦メッセージの込められたマーヴィン・ゲイの代表曲「WHAT’S GOING ON」に自然と胸が震えた。ファンク・ブラザーズの素晴らしさよ。サントラを買って帰ったほど、ファンクミュージックがますます好きになってしまった。美しく楽しい音楽がここにある。


ウォーカー
WALKER
監督:アレックス・コックス
1987年 アメリカ
民主主義の大義名分を都合良くこじつけて、軍事力でもって支配し、政治的・経済的覇権を奪うアメリカ合衆国に対する痛烈な批判。この映画で描かれる実在したウィリアム・ウォーカー(エド・ハリスが熱演!)は中米ニカラグアに出征して全土を制圧後、デタラメな選挙で大統領となり、無茶苦茶にやりたいようにやった挙句、追放され処刑された人物である。そんな彼が生きた時代は19世紀半ばでありながら、現在のイラクなどにおけるアメリカの政治外交姿勢と比較しても、何ら変わっていないということで、いまこの映画を観ておいて、損はないだろう。制作当時は「強いアメリカ」を標榜したレーガン政権がニカラグアへ介入しており、その映像や19世紀にはあり得ないTIME誌やヘリコプターまで登場させるなど、昔も今も同じであることを皮肉っている。ニカラグアはサンディニスタ革命ということで、音楽はコックス監督なじみのジョー・ストラマー。マイケル・ムーア以前にアメリカへの反抗を堂々とやってのけたアレックス・コックスの傑作。


不思議惑星 キン・ザ・ザ
KIN-DZA-DZA!
監督:ゲオルギー・ダネリヤ
1986年 ソビエト連邦
クー。これを観たら「クー」としか言いようがない、おもしろすぎる怪作。最近、不思議という言葉に無意識に警戒してしまいがちですが、この不思議さは本物です! うっかり地球に迷い込んだ宇宙人(といっても靴下をはいてないだけの人間)の瞬間移動装置をポチっと押してしまったため、キン・ザ・ザ星雲にワープしてしまった地球人ふたりが、なんとか地球に戻ろうとするのだけど、なかなかのん気な展開でシリアスさが微塵もないSF物語。星に出てくるキャラクターといい、釣鐘みたいな宇宙船といい、上下関係のヘンなルールやら、抜けまくったユルい雰囲気がたまらなく好きになってしまう。『サボテン・ブラザーズ』の決めポーズとこの映画の「クー」のおじぎで通じ合えたら楽しいだろうなぁ。


ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING
監督:ピーター・ジャクソン
2003年 ニュージランド・アメリカ
終わった。映画作品として、究極の3部作だったと思う。上映期間が終わりそうだったけど、劇場へ観に行って本当に良かった。過去2作のストーリーを思い出しながらの鑑賞ではあったけど、いざ映画が展開していくと心が打ち震えるシーンの連続で、スクリーンに全て飲み込まれてしまう感覚で圧倒されっぱなし。戦闘シーンの迫力と映像美の素晴らしさと言ったら、それだけで泣けてしまうほど。徹底的にやり抜いた表現者の情熱とロマンと勇気に惜しみない拍手を。未公開シーンをたっぷり加えて再編集した完全版がそのうち出るだろうから、細かいところはそっちでまた堪能したい。


スクール・オブ・ロック
SCHOOL OF ROCK
監督:リチャード・リンクレイター
2003年 アメリカ
ジャック・ブラック、アッチョンブリケー!な最高傑作。ガチガチに規律厳しい私立学校の子供たち(現場では音楽コンサルタントを担当したジム・オルーク直伝の教育を受けた精鋭子供バンド!)にロックのすべてを情熱たっぷりに闘魂注入しまくるという、ジャック・ニコルソンばりの怪演でひたすら楽しませてくれる完璧なハマリ役。ロック好きにはたまらないのは当たり前で、観る人を問わない普遍的な面白さが詰まったこの映画をカルトなもので終わらせるのはあまりに勿体無い。頼りない友人役でもあったマイク・ホワイトの脚本も素晴らしく、散々笑わしてくれるものの、ジャック・ブラック先生が放つセリフはストレートに心を打ち抜くものばかりだ。さらばハリー・ポッター。熱血感動、血行促進。大人も子供もロックにトキメくこと間違いなし。エンドロールまで必見です。


トーク・トゥ・ハー
HABLE CON ELLA
監督:ペドロ・アルモドバル
2002年 スペイン
変態開放路線とでもいうか、そんな独自のスタイルを確立してきたアルモドバルも、近年はだんだんとシリアス路線の作品を発表している。前作『オール・アバウト・マイ・マザー』と今作で連続してアカデミー賞を獲得するなど、評価と知名度も世界的なレベルに達した巨匠といってもいいかもしれない。個人的には『オール・アバウト・マイ・マザー』があまりフィットしなかったのだが(『ライブ・フレッシュ』も素晴らしかったけど、やはり『キカ』あたりまでの作品が好きだ)、今作はグッと見入ってしまいました。アルモドバルらしい異常性愛を描いてはいれど、変態性というより、人間の性そのものを深く見つめた傑作。


テープ
TAPE
監督:リチャード・リンクレイター
2001年 アメリカ
『スクール・オブ・ロック』でついにメジャーでも決定打を放ったリチャード・リンクレイター監督が、ちょっと前に低予算で撮りあげた注目の一本。イーサン・ホーク、ロバート・ショーン・レナード、ユマ・サーマンの3人のみのキャストで、とあるモーテルの一室のみで描かれる密室劇。同級生が久々の再会を果たし、かみ合っているようでかみ合ってないような微妙な間合いの会話が同じ時間軸で進行していくという、焦らしの展開ではあるのだが、3人の確かな演技力と、リンクレイター本人が時間を掛けたというだけのことはある巧みな編集裁きでもって、緊張感と興味を失うことなく、最後まで楽しむことができた。ドラッグでハイになりっぱなしのイーサン・ホークと過去のレイプを告白するロバート・ショーン・レナードに、かつて『いまを生きる』で共演した二人だけに、時の流れを感じてしまう。


カフェ・オ・レ
METISSE
監督:マチュー・カソヴィッツ
1993年 フランス
いまとなっては『アメリ』が恋する男役で有名になったマチュー・カソヴィッツの監督デビュー作。監督作では『憎しみ』のイメージが強いため気鋭の社会派に捉えられがちだが、この作品は実に楽しいラブコメであります。マチュー・カソヴィッツ本人も『アメリ』に通じるチャーミングな役柄を好演。彼が演じる集合住宅に暮らす白人(ユダヤ人)と外交官一家のおぼっちゃまの黒人。その彼らを二股していた共通のガールフレンドが妊娠を告白したことで、てんやわんやの三角関係が描かれていく。恋愛模様に人種を絡めた、ある意味『憎しみ』にもつながる内容はなかなか鋭く、カフェ・オ・レという邦題はなるほど!と思ってしまった。『憎しみ』よりも、こっちを勧めるようにしましょう。ヴァンサン・カッセルも出ています。


アダプテーション
ADAPTATION
監督:スパイク・ジョーンズ
2002年 アメリカ
センセーションを巻き起こした『マルコヴィッチの穴』再びの監督&脚本家によるコンビ第2作。脚本家チャーリー・カウフマンがなんと自分自身役を登場させる飛び技でもって、『マルコヴィッチの穴』で成功と名声を得た後の新作の脚本がうまく書き進められないスランプで悩み苦しむストレスをヤケクソで描いているように見えて、なんのこれしきチャーリー・カウフマンはやはりタダモノではないなと唸らずにはいられない映画でありました。現実世界の状況がいつしかファンタジーゾーンに入り込んでいる巧みな展開で、不思議な感覚に魅せられます。本人役が映画の中で動いているだけに、チャーリー・カウフマンの双子の弟ドナルド(ニコラス・ケイジの二役)なんて、途中まで半信半疑ながらも実在するのだろうなと思っちゃいますよ。脚本ばかりに焦点が当てられがちですが、役者も監督も力量ほとぼしる立派な仕事っぷりで、スパイク・ジョーンズのこだわりが炸裂してたオープニングは本当に素晴らしかった。


ブロンド・ライフ
LIFE OR SOMETHING LIKE IT
監督:スティーブン・ヘレク
2002年 アメリカ
アンジェリーナ・ジョリーの美女っぷりを確認するにはもってこいの一本。「一週間後に死ぬ」という予言を聞いてしまった彼女が、残りわずかな人生をどうやり抜くか、その苦悩と行動を描いた、ちょっとシリアスだったりするラブコメ。似たようなので、医者に余命わずかという話を勝手に聞き違えて、人間変わったように奮闘する『天国に行けないパパ』というのもありましたね。彼女に関しては初期の2本、独特の風貌が魅力的に思えた『サイバーネット』、元夫ビリー・ボブ・ソーントンと結ばれるに至った『狂っちゃいないぜ』、この2本がやっぱり良いですが、今作も『陽のあたる教室』『ビルとテッドの大冒険』のスティーブン・ヘレク監督らしい、良作です。
