

あの頃ペニー・レインと
ALMOST FAMOUS
監督:キャメロン・クロウ
2000年 アメリカ
かつては僕もロック評論家に憧れたりしたものだけど、なれなくてよかったなぁとつくづく思う。第一あんな長文書けないし、知識偏重で音楽に接しても楽しいわけないし、独自のスタンスで勝手に音楽を好きでいるほうが絶対にいい。義務も義理もないけれど、好きだからこそ言いたいこともあるわけで、でもそれは少なくとも僕はこの自分のホームページでなんにも気にせず書くだけでいいし、そのほうが性に合ってる。仕事云々に拘らず、誰もが純粋な音楽ファンであればなと思う。この映画が気持ち良くてステキに思えるのは、主人公やペニーが純粋に音楽を感じるまま愛している姿を描いているからだ。サイモンとガーファンクル『ブックエンド』のLPをお姉さんが母親に取り上げられちゃうけど、あのLPは名作ですよ。中年ロック評論家がラジオ局で「イギー・ポップ最高!」って言ってたけど、あのときのイギー・アンド・ザ・ストゥージズ『ロー・パワー』は本当にカッコいいよね。


ギター弾きの恋
SWEET AND LOWDOWN
監督:ウディ・アレン
1999年 アメリカ
これもいい映画ですねぇ〜。そして切ないです。いきなり『アニー・ホール』のようなオープニングで驚きましたが、ドキュメンタリーのエッセンスを加えて、伝説の天才ギタリストの半生を描くというアレン流の手法はお見事です。ここまでロクデナシな男であっても、ギターを爪弾いて鳴らされたその音の説得力。天才であるが故の夢想家でありエゴイスト的な生き方であっても、根本としてある人間としての情や優しさを不器用に見せる姿にとても愛着を感じてしまう。ショーン・ペンの哀愁たっぷりの表情がまたいいんだなぁ。サマンサ・モートンも素晴らしかったおかげで、最後は本当に切ない。


ジュエルに気をつけろ!
ONE NIGHT AT McCOOL’S
監督:ハラルド・ズワルト
2001年 アメリカ
リヴ・タイラーがセクシーだなぁーっていう、それだけの映画。それ以上でも以下でもなく、ほんとにそれだけだけど、それだけで満足だったりして。とにかく彼女のサービスショット満載でセクシービーム出しまくりなのだ。こんなの男なら誰だってこの映画のマット・ディロンみたいに振りまわされたくもなるってなもんよ! ま、どう考えても現実にはあり得ないけどね。個人的には『クッキー・フォーチュン』のリヴの方が好きです。それにしてもマット・ディロンはすっかりヘタレな二枚目という役柄に落ち着いちゃって、合ってはいるんだけど、ちょっと残念な気も。『聖者の眠る街』の頃が懐かしい。


花様年華
IN THE MOOD FOR LOVE
監督:ウォン・カーウァイ
2000年 フランス・香港
1960年代香港。同じ日に引っ越してきた隣り同士の夫婦。男(トニー・レオン)の妻と女(マギー・チャン)の夫が不倫関係となり、後に残された男と女。被害者同士の倫理観、近所の世間体に抑えられながらも惹かれ合うふたり。やがて本気の恋愛感情が芽生えるも、距離を置き、すれ違い続ける切なさがたまらない。結ばれるも引き裂かれるも運命なのかもしれないが、ふたりがお互いを思う、その愛の姿は、ため息出るほど美しいと思った。


NO FUTURE – A SEX PISTOLS FILM
THE FILTH AND THE FURY
監督:ジュリアン・テンプル
1999年 イギリス
1976年前後の日々を20年以上経過して冷静に振り返るメンバーたち。労働者階級の社会の底辺から運命としか言いようのないタイミングでパンクロックをクリエイトしてしまった彼らの真実の証言は、どれもこれも興味深くて聞き入ってしまう。マルコム・マクラーレンの天才的な口車とともに物事が起こってしまってからは、どんなに冷静なジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)をしてもバンドをコントロールすることはできなかった史実。特にグレン・マトロックが抜けて、ピストルズの熱狂的ファンでありジョンの親友だったシドが加わってからの悲劇は伝説を肥大化させたが、バンドの存在とシドの生命を消したあまりに惨いものだった。「あのときもう少し賢ければ」と自分がシドを救えなかったことを悔いるジョンの涙がとても印象深い。シドの生き様についてはゲーリー・オールドマンが彼を演じた『シド・アンド・ナンシー』をあわせておすすめしておきます。


ゲンセンカン主人
監督:石井輝男
1993年 日本
つげ義春の漫画作品の中から「季さん一家」「紅い花」「ゲンセンカン主人」「池袋百点会」の4話を映像化したオムニバス作品。すべて佐野史郎主演というわけで、大のつげファンである彼の念願の企画だったようだ。4話をつなぐサイドストーリーは別として、かなり原作そのままに描かれており、その熱意と愛情に僕も拍手を送りたい。ほのぼのとしつつもゾクっとさせる人間描写とエロティシズム。クセのある役者が多数出演する中、最後はその全員に温かく見守られ、つげ義春本人も家族と共に登場してくれる。妙な清々しさがあってステキだった。


アメリ
LE FABULEUX DESTIN D’AMELIE POULAIN
監督:ジャン・ピエール・ジュネ
2001年 フランス
観ようと思った頃には既に若者のファッションになってしまっていて、なかなか観れずにいたこの映画。結局4度目の挑戦で渋谷シネマライズと決別し、新宿の映画館にて、ついにそのシートをゲットすることができた。映画はまさに素敵な現代ファンタジー。主人公のアメリが誰もが振りかえるような美女ではないにせよフランス的キュートなルックスで、自分の恋を実らせようとあれこれ直線的に行けない、もどかしいほど遠回りして作戦立てたり妄想でウキウキしたり涙を流したりする姿は最高にいとおしい! おじいさんが応援するのもわかるし、同じく不器用なニノもアメリを追いかける彼の気持ちに共感。同じ匂いを持ったふたりがお互い惹かれ結ばれる、このことが何より素晴らしいと思ったし、前向きにさせてくれる。話的に過去のジュネ監督作と比べると毒が薄くなりがちだけど、常連ドミニク・ピノンその他脇役たちのサイドストーリーがしっかりオチまであったり充実してたのが彼らしいし、ニノ役のマチュー・カソヴィッツが自分の撮る映画は陰鬱なのに、こんなに好青年を演じているところがまたニクイ。年は越してしまったけど、観れて良かったと思えたのが良かった。


トラフィック
TRAFFIC
監督:スティーブン・ソダーバーグ
2000年 アメリカ
麻薬戦争をドキュメントタッチで様々な地点で起こりうる経過を巧みにシンクロさせながら描いた、ソダーバーグらしい一本。本当にこの監督は巧いなぁと思う。個人的には『アウト・オブ・サイト』がいちばん好きだけど、この作品も全然飽きないです。深夜に見てても眠くならなかったし。それにしても麻薬対策を指揮する最高責任者の娘がヤク中って、すごい皮肉だよな。カタギにしても悪にしても、でかい役職の仕事なんてやるもんじゃないね。僕は目立たない自由で幸せな生活を望みたいです。


殺し屋1
監督:三池崇史
2001年 日本
正月早々、イヤーなもの見ちゃったなぁ。派手なスプラッターはそれはそれでめでたいように思いたいけど、ここまで生々しく痛々しいのは辛くて気持ち悪かった。殴る・蹴る・撃つの暴力より、切る・刺す・ちぎるのオンパレード。ひえー、もうやめてー! とにかく悪趣味なショッキング映像をここまで見せられては拒絶反応を示さざるを得ない。そこが三池崇史の狙いだったのか。映画の暴力シーンに麻痺している現代人に本気で目をそむけさせるほどリアルな感情としての痛みを感じさせることへの挑戦。それかただ単に登場人物の死亡率、出血量を日本映画史上最高にしたかっただけなのか。ピーター・ジャクソンの『ブレイン・デッド』はOKだけど、これは苦手です。もう二度と観たくないと思った。


カラテ大戦争
監督:南部英夫
1978年 日本
ザッツ昭和エンターテインメント! これは凄い。かなりきてます。梶原一騎と大山倍達の原作の映画化作品なのだが、これを観るとどうして香港のカンフー映画のように日本にカラテ映画が根付かなかったのか不思議だ。ブルース・リーやジャッキー・チェンのようなスターが生まれなかったのが原因か。確かに主演の真樹日佐夫(梶原一騎の実弟)は石原裕次郎チックでちょっとおっちゃんだけど、えいやー!エイヤー!と敵を蹴り飛ばすサマは爽快。いまだからこそあまりに斬新に見えすぎるのかも知れないけど、これはサイコーです。極限流カラテ(いわゆる極真カラテ)の師匠役には大滝秀治が! 存在感ありますな。
