

ブラックホーク・ダウン
BLACK HAWK DOWN
監督:リドリー・スコット
2001年 アメリカ
クリントン政権時代、1993年10月のアメリカのソマリア軍事介入における失敗に終わった作戦を描いた実話の映画化作品。ほば全編が戦闘シーンで説明的な部分がほとんどなく、アメリカ軍兵士の視点での戦場ドキュメントと言える。ソマリア側の状況、立場については全くといっていい程触れられていないが、かと言って、アメリカの正義を押し付けるプロパガンダ的な内容でもないのは、リドリー・スコット監督がイギリス人という国籍の違いによるものかもしれない。ユアン・マクレガーとユエン・ブレンナーの『トレインスポッティング』コンビが米兵役で出演しているのも観る者にとっては興味深い。


DISTANCE
監督:是枝裕和
2001年 日本
カルト教団による無差別殺人実行犯遺族4人と元教団信者1人の5人が一日をともに過ごし、5人による対話とそれぞれの回想シーンを挟みながら、教団側へと傾き去っていった者と残った者との人間関係・距離を描き出していく。妻と夫、兄と弟、父と子。あくまで5人が5人の立場・思い・視点での言葉をドキュメント的に捉えた映画は、なぜ関係を絶ってまで去っていったのか、また事件に関する事実関係など、はっきりとはわからないままに、リアルな姿が印象に残る。元信者を演じた浅野忠信は『青春デンデケデケデケ』『119』以来と思えるほど、この映画では実によかったと思う。


猟奇的な彼女
MY SASSY GIRL
監督:クァク・ジェヨン
2001年 韓国
ただなんとなくではあったけれど、『シュリ』以降続々と輸入されてくる韓国映画を全然観てなくて、思い起こせば学生の時に観た『風の丘を越えて』という親子の暗い話の映画以来かもしれない。しかしこの映画『猟奇的な彼女』は面白かった! ラブコメというよりSMです。劇的なエピソードに事欠かなく、見事にかみ合った猟奇的な彼女Sと振りまわされっぱなしの彼氏Mの関係。思いっきり楽しめたのは無茶苦茶なんだけど全てをアリにしてしまう彼女を演じたチョン・ジヒョンの魅力に尽きる。これはオススメです。


リリイ・シュシュのすべて
監督:岩井俊二
2001年 日本
元々はインターネット上でその物語を発表し、架空の人気アーティスト「リリイ・シュシュ」を作り上げ、そこに一般の閲覧者からによるBBSへの書き込みを反映させ肉付けをしたうえで映画が制作されたこの作品。一連のプロジェクト性から、物語上・映画上での殺人や自殺といった少し余計にも思えた描写も含めて、岩井俊二のサブカルチャー資質が全面に発揮された作品となっている。中学生活にはびこるいじめ、現実逃避の拠り所としての絶対的なアーティスト「リリイ・シュシュ」。非常に暗く、重くのしかかってくる映画ではあれど、それでも思春期はかけがえのないものとして、ずっと若い世代へのやさしさを感じさせる、美しくあまりに爽やかな映像に妙な居心地を感じながら、思いのほか見入ってしまった。ギャオス内藤(生活指導の先生)に小出監督(沖縄の案内人)も出てると思ったら別の役者だったようだ。


千と千尋の神隠し
監督:宮崎駿
2001年 日本
先日テレビ放送があったけど、たまたまレンタルしてたので同日深夜にビデオで観た。おそらく3月のアカデミー賞で世界的な認知を得るであろう日本最大のヒット作はそのテレビ視聴率も記録を塗り替えたようだが、それだけの国民性、国民的行事に仕立て上げた宮崎駿は凄い映画監督だと思う。人間界から離れた風呂屋というシュールな舞台にすっかり惹き込まれ、満足いくまで楽しめました。


シベリア超特急2
監督:水野晴郎
2000年 日本
ついに新春ロードショーとして封切られたパート3。さらに間髪空けず丹波哲郎投入の大技披露となる一度限りの舞台公演パート4。その後も香港ワイヤーアクションを盛り込んだパート5、閣下の恋を描いた完結作パート6へとシベ超大河プロジェクトは走り続けるみたいだ。転んでも転び方に勢いがありすぎた水野晴郎、現72歳、恐るべし。まさかの続編と謳われた第2作も見事にトホホな作りではあるが、水野晴郎の圧倒的な存在感がすべてを帳消しにしてしまう。最後におとずれたユルユルの大団円にはカタルシスを覚えるとともに爆笑してしまった。シベ超がシベ超であることに満足してしまう、つくづく特異なシリーズだと思った。


モンスターズ・インク
MONSTERS, INC.
監督:ピート・ドクター
2001年 アメリカ
次々と傑作を送り出しているPIXERのアニメは僕も大好き。子供部屋に通じるクローゼットの扉から忍び込んでは子供たちを恐がらせ、その悲鳴をエネルギーに成り立っているモンスターの世界。この豊かなイマジネーションの世界に刺激いっぱい引き込まれていってしまうこと必至! 物凄くミクロな部分から積み重なった映画全体から感じられるスケールの大きさは本当に圧倒的だ。何かとイヤミなランドールでしたが、声はスティーブ・ブシェーミだったようです。アニメにも拘らず、ジャッキー映画じゃないのに、最後のスタッフロールでNG集まで見せてくれる粋な計らいも嬉しい第一級エンターテインメント。


爆裂都市 BURST CITY
監督:石井聰亙
1982年 日本
考えるな、感じろ、と言うしかないような、ストーリー訳なしの徹頭徹尾イッちゃってる最高にムチャクチャな暴動フィルム。マッドマックスのような世界でスラムの連中、ロックバンド、ヤクザに警察とごっちゃごちゃに入り乱れての大乱闘が繰り広げられるエネルギーの過剰放出が凄まじい。触るもの皆傷つけまくりというか、暴れまくり。まさにすこぶる狂って候。当時ザ・ロッカーズだった陣内孝則率いるロッカーズとルースターズの混合バンド=バトルロッカーズと遠藤ミチロウ率いるスターリンの過激パフォーマンス合戦。リーダーの登場が爆笑を誘うコント赤信号。妖しいヤバさが滲み出てたヤクザ役の泉谷しげる。そして、さらにヤバかった町田町蔵! 「ヤバい」の本当の意味を知るには持ってこいの一本。


パコダテ人
監督:前田哲
2001年 日本
北海道函館市内で銭湯を営む一家の二女に突然しっぽが生えてしまったことで巻き起こる大騒動ファンタジック・コメディ。子供っぽいという当たり前な感想も否定しないが、素直に好感の持てる面白い作品だと思う。「しっぷ」と「しっぽ」のダジャレから、ここまでの映画ができてしまう爽快な感じがステキだ。寅さん亡き後、こうした地方の庶民的な雰囲気がふんだんにあるだけでもニコニコほんわかしてしまいますよね。


K-19
K-19:THE WIDOWMAKER
監督:キャスリン・ビグロー
2002年 アメリカ
密室的緊張感のおかげでついつい見入ってしまいがちな潜水艦映画。今作は実話を元にした冷戦時代のソビエトを舞台に現代にも通じる原子力の恐怖を描いている。敵対するアメリカに武力を誇示するため突貫工事で完成させてしまった原子力潜水艦「K-19」の原子炉が故障したことから、乗組員たちの死を覚悟した放射能を大量に浴びながらの修理が行なわれるのだが、あまりに悲惨で本当にもう原子力発電所はシンプソンズのアニメの中だけで十分だと思えてしまう。原子力の問題は実体がよくわからないだけに恐ろしい。「安全だ、と言われている」という言葉の保証が一瞬で吹き飛んでしまうエネルギーに頼るしかないのだろうか。艦長をめぐるハリソン・フォードとリーアム・ニーソンの関係はどうでもよかったりしたわけだが、そんなことを考えさせる映画ではあったと思う。
