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ギャラクシー・クエスト

CINEMA

ギャラクシー・クエスト

監督:ディーン・パリソット
GALAXIE QUEST
2000年 アメリカ

「スタートレック」のパロディを下敷きにしながら、話は妙な方向へでっかく展開。旬を過ぎた営業で食いつないでいる元ギャラクシー・クエストの役者たちが、いま一度、一致団結し、捨て身の大冒険を決行する。「NEVER GIVE UP ! NEVER SURRENDER !」という決めゼリフは、あまりに陳腐すぎて失笑されるのが普通だろうけど、これが劇中で猛烈な感動を呼びおこす。本気で戦っている人は、本気で楽しませて感動させてくれる。思いっきり笑ったり泣いたりしたい僕たちにとって、シガニー・ウィーバーのお色気も許せてしまうかけがえのない一本。

ロザリー・ゴーズ・ショッピング

CINEMA

ロザリー・ゴーズ・ショッピング

監督:パーシー・アドロン
ROSALIE GOES SHOPPING
1989年 西ドイツ

あまりにも有名すぎる『バグダッド・カフェ』に比べると、こちらの方がカルト映画と呼ぶにはふさわしいように思えるパーシー・アドロン監督作品。アーカンソーの田舎で暮らすドイツ系子沢山変わり者一家の妻ロザリーを同じく『バグダッド・カフェ』のマリアンネ・ゼーゲブレヒトが演じている。一家のやりくりのため、ロザリーは犯罪的なまでにお金に執着。自ら犯した罪や悪事を全部カソリック神父に懺悔しつつも、クレジットカードや小切手に細工を加え、ドイツから旅行で来た両親の帰りの航空券をだまって売却し、しまいにはコンピューター・ハッキングを堂々かまして一財を築いてしまう。まさにカルトなヘンチクリンな映画。

EUREKA

CINEMA

EUREKA

監督:青山真治
2000年 日本

台詞の言葉数こそ少ないが、だからこそ発せられる言葉のひとつひとつが重く、鮮明に心に響く。セピアな色調(クロマチックB&W)でプリントされた目にやさしい見事な映像は、主人公達を、映画を繊細なまでに深く深くさらけ出す。変わらない日常を生き続ける僕たちも、傷を負った主人公達の共同生活や旅姿を追いながら、ただ逃げているだけの日々を送っているのか、漠然とでも何かを始めようとしながら生きているのか、自らの存在意義、探し求めているものは何なのか、自らの哲学を問い考える。物語終盤、ジム・オルークの「ユリイカ」が流れる特別で秀逸なシーンを思い出しながら、また考える。変わらない日常でありつづけようが、行きようと意志を持った瞬間にすべてが色づきはじめるマジック。3時間37分の長尺を気にしてはいけない。静かな感動が波打つ、2000年代を代表する傑作。九州人として、九州が素敵に懐かしく思えた映画でもあった。

リアル・ブロンド

CINEMA

リアル・ブロンド

監督:トム・ディチロ
THE REAL BLONDE
1997年 アメリカ

ブラボー!! マジでブラボーですよ!! この映画が公開されたときはウディ・アレンの後継者とかいわれて気にしてはいたんだけど、今日になって観て、いやはや素晴らしかったです。ウディ・アレン狂な僕からしても、まんまウディ・アレンな映画でしたが、故意的にマネようという意図であったとしても(ニューヨークが舞台の恋愛群像劇で精神科医もちゃっかり出てくる)、この巧さと完成度では認めざるを得ないでしょう。トム・ディチロ、スゲーよ!と思っていたら、調べたところ『ジョニー・スウェード』(ブラピ主演の空からブーツが降ってくるニック・ケイヴもヘンな人で出てくる奇妙な映画)をデビュー作として撮ってた人でした。な〜るほどねぇ〜。

黒猫白猫

CINEMA

黒猫白猫

監督:エミール・クストリッツア
CHAT NOIR, CHAT BLANC
1999年 フランス・ドイツ・ユーゴスラビア

なにかとせわしない東欧の田舎町。老若男女、ヘンな人がたくさんでとにかく楽しい映画だった。その生のエネルギーと躍動感はなにゆえに?と思ってしまうけど、そんな疑問が頭に浮かんだ時点で僕らは負けているのだろう。生活とはそもそもこの映画のようにエネルギーに満ち溢れているものなのだ。正にも負にも振れ幅が少ない生活はつまらない。思いっきり笑ったあとで、そんなことをひとり思う。それにしてもじいちゃんサイコーだったな。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

CINEMA

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

監督:ヴィム・ヴェンダース
BUENA VISTA SOCIAL CLUB
1999年 ドイツ・アメリカ・フランス・キューバ

今月のSWITCH北野武号に山本耀司のインタヴューが掲載されていて、北野武と「今時の若い奴より、俺達の方が未来があるよな」といった話をしたと書いてあるのが、ものすごくグサッときた。この映画に登場する伝説的なキューバの老演奏家たちが、とにかくカッコよくて感動的なのは、いまもなお生き生きと人生の歩みを続けているからだ。キューバという国家を背景に生きる姿・表情・言葉・エネルギー。素晴らしく気持ちよいキューバ音楽とともに、強い憧れを抱いてしまう。2000年の単館作品興収ナンバー1を記録。

ストレイト・ストーリー

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ストレイト・ストーリー

監督:デビッド・リンチ
THE STRAIGHT STORY
1999年 アメリカ

1998年の夏に東京から実家のある宮崎まで青春18きっぷを使って3日かけて帰ったことがあるけど、それさえも異様に速いと思えるほど、この映画の旅はゆっくりとしたスピードで進んでいく。そもそも旅にスピードを求めるべきではないのだ。人生を旅と置き換えるなら、そのスピードはいかがなものか。僕は僕なりのスピードで目的地にむかって、この映画の主人公のように自力でたどりつきたい。リンチの前作『ロスト・ハイウェイ』から一転、『パリ、テキサス』のハリー・ディーン・スタントンが兄役で登場し、ゆっくり静かに言葉を交わし空を見上げるラストも秀逸な素敵に思える作品だ。

アメリカン・ビューティー

CINEMA

アメリカン・ビューティー

監督:サム・メンデス
AMERICAN BEAUTY
1999年 アメリカ

いつの時代であれ、人は他者とのコミュニケーションなしには生きている気がしないし、幸せになることはできない。その根本的な認識さえ麻痺してしまうほど、現代社会には時が過ぎていくたびに新たなモラルやルールや価値観が創り出され、他者とのコミュニケーションを成立させるにはあまりに複雑化してしまっている。時が流れるスピードはどうすることもできないが、それでも自分の人生をなんとかしていきたいというポジティブな気持ちに、この映画は思わせてくれる。

デッド オア アライブ 2 逃亡者

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デッド オア アライブ 2 逃亡者

監督:三池崇史
2000年 日本

力と翔。前作が敵対する関係だった分、ふたりの本当の共演シーンは世紀の決闘ラストシーンのみで終わってしまったが、今回は三池版「コインロッカー・ベイビーズ」ともいえる完全なるバディ・ムービーとしてVシネ界の最強タッグが存分に楽しめる。予定調和のレベルを軽く超えた豪快で強引なもっていきかたは、今作でも随所に散りばめられ、(SHOW&笑&衝)=ショウ撃度も凄まじい。力のハジけっぷりといい、翔のヌケ具合といい、ふたりとものびのびしてて、ヤクザ映画とのギャップがとても気持ちいい。ラースの『キングダム』とともに続編が待ち遠しく思えるほど、トリコになる作品だ。

ダンサー・イン・ザ・ダーク

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ダンサー・イン・ザ・ダーク

監督:ラース・フォン・トリアー
DANCER IN THE DARK
2000年 デンマーク

最初のミュージカル・シーンが始まったときのゾクゾクっと瞬時に覚醒するほどのカタルシス。両目から涙をたれ流しながら傍観することしかできないラスト〜最後から2番目の歌。ストーリー自体は、いたってシンプルなものだが、喜怒哀楽という四字熟語以上の感情の大きな振れ幅は、ビョーク=セルマの歌と音楽による効果があまりに大きい。一世一代の役をビョークはフィルムに刻んでいたし、ビョークとともに迫真の演技で対抗したカトリーヌ・ドヌーブも本当に素晴らしかった。セルマの母親像はあまりに極端なものではあったが、だからこそ真実の感動があったのだろう。ラースは映像作家として、また究極のものを作り上げてしまった。目を赤くして放心状態で劇場をあとにすることは避けられない。