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ハイ・フィデリティ
監督:スティーブン・フリアーズ
HIGH FIDELITY
2000年 アメリカ
「失恋するから音楽を聴くのか。音楽を聴くから失恋するのか。」とはこの映画につけられたよくできたコピーである。当然ながら客観視できるわけもなく、なんとなくハッピーエンドで終わったのが良かったのかどうなのか。あの状況でヨリが戻るのは不思議でしょうがないが、階級の違ってしまっているキャサリン・ゼタ・ジョーンズを最低と思う気持ちや、一本入魂のテープ作りで他人の詞に自分の思いを託すところなど、大肯定できる場面がやはりほとんどだったりして。陰気な音楽ファンというのは、どうしてこうも難しい人種なんだろうね、まったく・・・。わかってくれるかなぁ、わかってほしいなぁ、わかってもらえないと困るなぁ、と思うのであります。♪High Fidelity・・・。
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クラークス
監督:ケヴィン・スミス
CLERKS
1994年 アメリカ
しがないコンビニ店員とビデオ屋店員のしょーもない会話の掛け合いをメインに軽快に楽しませてくれる、ヘンな客、友人、売人、ガールフレンドたちが織り成すショートコント集のような映画。僕も学生の頃、ビデオ屋でバイトしてたけど、座ってビデオ見てたり、がやがやお喋りしてたり、好き放題やってたもの。うっとおしいあいさつを強要するような社員教育のない個人経営の店でよかったよかった。いまはもうなくなってしまった店だけど、あそこにもいろんな客がいたものです。
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ケイゾク/映画
監督:堤幸彦
2000年 日本
話題となった刑事ドラマの映画版は同じスタッフとキャストが作った悪ふざけ? かなり出来の悪いパロディでしかなくて、ドラマと同じテンションで観る必要は全然なかったようだ。途中から違和感アリアリの無理矢理というか完全に投げてるとしか思えないヘンな展開で、ダメさ加減が凄まじい。とにかくそのあまりあるギャップをチェックするという意味において楽しめる映画。やはり「ケイゾク」はドラマで完結していたということだ。ドラマの完成度は群を抜いて素晴らしいものだった。
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スターダスト・メモリー
監督:ウディ・アレン
STARDUST MEMORIES
1980年 アメリカ
ウディ・アレン好きとはいえ、あまりに作品を量産してらっしゃる方なので、ところどころ取りこぼしてるわけですが、こいつがまたうなるほどの傑作でした。『アニー・ホール』、『マンハッタン』、『カイロの紫のバラ』をベスト3に挙げてしまいがちですが、これもかなり肉迫するくらい好きかも。ずば抜けた皮肉と笑いのセンスで気を抜かせたあとに、ほとばしるロマンチックな描写にノックアウト。シャーロット・ランプリングを見つめるシーンに恋人のいない僕も至福を感じてしまいました。でもこれは恋人のいるいないも、男も女も関係ないでしょう。アレン版『8 1/2』といえる彼の趣味・嗜好も色濃く出た、見応え十分、必見の一本。
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まわり道
監督:ヴィム・ヴェンダース
FALSCHE BEWEGUNG
1975年 西ドイツ
人はそのときどきにおいて壁にブチ当たったり途方に暮れたりしてしまうものだ。僕にもよくあることだが、特に2ヶ月前は仕事もなく本当にどうしようもない状況で、とにかく徹底的に痛めつけられているような気分の毎日だった。そんな時にこの映画を観た。書けなくなった小説家が母親の勧めで旅に出て、その先々で出会う見知らぬ人達といつしか行動を共にする。非常に低いテンションで先の見えぬ旅を続ける姿につられるまでもなく気分はロウのままであったが、最後を締める「結局僕はまわり道ばかりしてるのかもしれない」という言葉が僕にとってかなりの救いだったのかもしれない。
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チェブラーシカ
監督:ロマン・カチャーノフ
CHEBURASHKA
1969年 ロシア
生まれてこのかたペットらしいペットを飼ったことがない僕ですが、チェブラーシカとならいっしょに暮らしたいなと思ってしまいました。なんかめちゃめちゃウマが合いそう。自分が何物かがわからないアイデンティティの所在のなさが決定づけている、こんなキャラクターにあるまじき地味な性格。ひとりぼっちで内気でほとんど視線は下向きだけど、ちょっぴり天然で純粋なまんまるい目と時折見せる笑顔があまりにチャーミング!! しんみりしつつも強烈にシンパシーを抱いてしまったのであります。
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代官山物語
監督:新藤三雄
1998年 日本
先日、初めて行った代官山。特に街をぶらつくこともなく「代官山食DO」でランチを食べて、さっさと帰ってしまった。こういうのを観ると自分が東京的なファッションやオシャレに対して歪んだコンプレックスを持っているというか、なんかものすごい嫌悪感を感じてしまう。テイ・トウワがレコードを万引きするのはカラックス『ボーイ・ミーツ・ガール』へのオマージュのつもりか。でもテイ・トウワのヘンな感じはおもしろかった。さすが吉本。あとはあの髪型でない小山田圭吾の姿が観れるのはここだけかも。単に女装してるだけだけど。
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シベリア超特急
監督:水野晴男
1996年 日本
悠長にグレープフルーツジュースでも飲みながら観ようかと思ってコップに口をつけた瞬間吹き出してしまった。監督の期待とは全く別の意味で評判となりシリーズ第3作が作られようとしている現在、すっかり水野晴男は日本のエド・ウッドの地位を手中にしたかに見える。巨大なおばけタコがハリボテの作り物だったように、舞台のシベリア特急は決して前へ進まない。その他大勢の映画評論家がコキ下ろせばコキ下ろすほどに、水野晴男の立場がより強固なものへと確立されていく大逆転の構造を生み出したわけで、ある意味日本映画史に残る作品といっていいだろう。
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フォーエバー・フィーバー
監督:グレン・ゴーイ
FOREVER FEVER
1998年 シンガポール
いわゆるシンガポール版の『サタデー・ナイト・フィーバー』なのだが、エスニックな東南アジアの要素が絡み合って異様な映画になっていて、かなり笑ってしまった。ブルース・リーに憧れる青年が『サタデー・ナイト・フィーバー』を観て、突如ダンスに目覚める。コンテストに出場し、その優勝賞金でバイクを買うのが夢だ。しかし、弟が突然、性転換手術を受けるとカミングアウト! 妄想で出てくる似てないジョン・トラボルタに指南され、成長していく主人公の、アヤシイ青春ダンシング・ムービー。
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シックスティナイン
監督:ベンエーグ・ラッタナルアーン
6IXTYNIN9
1999年 タイ
ウォシャウスキ兄弟の『バウンド』を彷彿とさせるサスペンス映画。こちらもかなりおもしろい。突然会社を不運にもくじ引きで解雇された女性が100万バーツの大金を手にしたことから次々と巻き起こる危険な出来事。恐ろしく冷静な主人公にドキドキさせられっぱなし。ラストのカポーティの言葉が印象深い。