

悪は存在しない
監督:濱口竜介
2023年 日本
『ハッピーアワー』にも通じる意味深なタイトル。善と悪。自然と開発。上流と下流。人間と動物。理屈はシンプルでも、究極で成り立っている現代の複雑で脆いバランス。『北の国から』のスピンオフを濱口竜介が撮ったかのような、人間ドラマとしても抜群に面白い作品だった。


苦い涙
Peter von Kant
監督:フランソワ・オゾン
2022年 フランス
1972年のライナー・ベルナー・ファスビンダー監督作をフランソワ・オゾンがリメイク。主人公がペトラからピーターに性別と職業が置き換わり、女性同士の愛憎劇がそのまま男性同士となるのはオゾンらしい。オリジナルと見比べて物語やセリフもほぼほぼ変わらないけれども、オゾン版の嫉妬の爆発っぷりが凄まじくて爆笑。面白かった!


鉄道運転士の花束
Dnevnik Masinovodje
監督:ミロシュ・ラドビッチ
2016年 セルビア・クロアチア
鉄道運転士にとって、人を轢いて一人前という、映画でのなかなかブラックな物言いだけど、実際の人身事故のニュースやアナウンスの多さを思うと、殺意なき無実の事故からメンタル克服してこそ務まる仕事なのかもと思わされる。セルビアのゆるいユーモアたっぷりの映画から、改めて鉄道運転士・関係者にリスペクト。


毒舌弁護人 正義への戦い
A Guilty Conscience
監督:ジャック・ン
2023年 香港
タイトルに原題から引用した「毒舌」とあるけど、毒舌の印象は薄く、あくまでオーソドックスなわかりやすい法廷劇として楽しめる。香港では返還後もイギリス領時代から変わらず、法廷ではかつらを着用しているようだ。なお今作は香港で香港映画としての歴代興行収入を塗り替える大ヒットを記録し、今年の香港電影金像獎の作品賞を受賞している(作品賞のプレゼンターは是枝裕和)。


THE WITCH 魔女 増殖
The Witch: Part 2 – The Other One
監督:パク・フンジョン
2022年 韓国
原題サブタイトルが「The Other One」ということで、前作でセンセーショナルだったキム・ダミがほとんど出ないものの、今作は今作で超人バトルに振り切ってて面白かった。主人公が超人というか超超人で無敵なので、次作はどうバランス取るのかアイデアに期待したい。


パスト ライブス 再会
Past Lives
監督:セリーヌ・ソン
2023年 アメリカ・韓国
12歳、24歳、36歳。ソウル、スカイプ、ニューヨーク。3つの時代と遠く離れた距離・異なる国、それでも導かれる縁と運命。劇伴はGrizzly Bearの2人。たまらないラスト。とにかく品がよく、至高の作品だった。


カセットテープ・ダイアリーズ
Blinded by the Light
監督:グリンダ・チャーダ
2019年 イギリス
実にいい映画だった。ブルース・スプリングスティーンの音楽・歌詞・魂とは如何なるものなのか、その入門としても実にいい映画だと思う。主人公のモデルとなった人物は150回以上ボスのライブを観ているらしい。僕は一度も観たことがない。1998年に上京してからずっと待ち望んでいるけど、全く来日する気配がない。本当にとても悔しい。


THE KILLER 暗殺者
The Killer
監督:チェ・ジェフン
2022年 韓国
事務所が潰れて解散状態の公園少女、エン(イ・ソヨン)の映画デビュー作。ジョン・ウィックとか、イコライザーとか、リーアム・ニーソンのもろもろのとかと同じように、主人公に特別なピンチがあるでもなく、敵方が死体の山となっていく痛快作として楽しめる。


ある女優の不在
3 Faces
監督:ジャファル・パナヒ
2018年 イラン
イラン本国から自由を奪われながらも活動を続けるジャファル・パナヒ監督作。冒頭スマホ動画の導入から、山岳地帯への移動、ペルシャ語とトルコ語、人探しの先の展開からラストの遠景まで、まあ見事に巧いし、映画としてめちゃめちゃ面白い。


落下の解剖学
Anatomie D’une Chute
監督:ジュスティーヌ・トリエ
2023年 フランス
夫の方が死んでいるとはいえ、ザンドラ・ヒュラーをメリル・ストリープと思えば、ほぼほぼ『クレイマー、クレイマー』のような映画だった。裁判の関心より、傷付くばかりの子供がただただ可哀想で仕方なかった。
