

THE KILLER 暗殺者
The Killer
監督:チェ・ジェフン
2022年 韓国
事務所が潰れて解散状態の公園少女、エン(イ・ソヨン)の映画デビュー作。ジョン・ウィックとか、イコライザーとか、リーアム・ニーソンのもろもろのとかと同じように、主人公に特別なピンチがあるでもなく、敵方が死体の山となっていく痛快作として楽しめる。


ある女優の不在
3 Faces
監督:ジャファル・パナヒ
2018年 イラン
イラン本国から自由を奪われながらも活動を続けるジャファル・パナヒ監督作。冒頭スマホ動画の導入から、山岳地帯への移動、ペルシャ語とトルコ語、人探しの先の展開からラストの遠景まで、まあ見事に巧いし、映画としてめちゃめちゃ面白い。


落下の解剖学
Anatomie D’une Chute
監督:ジュスティーヌ・トリエ
2023年 フランス
夫の方が死んでいるとはいえ、ザンドラ・ヒュラーをメリル・ストリープと思えば、ほぼほぼ『クレイマー、クレイマー』のような映画だった。裁判の関心より、傷付くばかりの子供がただただ可哀想で仕方なかった。


オッペンハイマー
Oppenheimer
監督:クリストファー・ノーラン
2023年 アメリカ
3時間途切れることなく畳みかけてくる分、昔の映画のようにインターミッションでいったん整理して小休止したいと思えるほど、濃密で重厚な映画だった。彼が後悔した瞬間のことを、全世界はどんな気持ちで観たのだろうか。核兵器、赤狩り、政治判断。恐怖と危機感を切実に訴えてくる。


ちひろさん
監督:今泉力哉
2023年 日本
逞しくて、賢くて、優しく見える人も、本当は壊れる手前で踏ん張って生きているのかもしれない。そうした想像を持つこと。有村架純の素晴らしさが、また一段と際立っていた。


瞳をとじて
Cerrar Los Ojos
監督:ビクトル・エリセ
2023年 スペイン
時は熟し、時は来た。ビクトル・エリセ監督の新作を劇場で味わうという、神秘的な映画体験にただただ没入。アナ・トレントの存在と、彼女の瞳が改めて刻まれる。かつて映画監督だった男はエリセの分身か。大学時代にビクトル・エリセを知った映画好きの端くれとして、望外の喜びを感じる最新かつ不滅の一本。


FALL
Fall
監督:スコット・マン
2022年 イギリス・アメリカ
めちゃめちゃ怖かった! でも本当に怖いのは頂上に昇るまでの過程で、降りれなくなってからはそこまで楽しめる映画ではなかったのが残念。技術のあるフリークライマーなのに、なぜか軽率すぎて、後半の見応えがあまりない。アクシデントを想定した入念な準備・道具と技術・体力・筋力で、あの状況から降りる過程も見せてくれたら、擬似体験としてなおのこと恐怖を味わえたように思う。


対峙
Mass
監督:フラン・クランツ
2021年 アメリカ
以前観たセウォル号沈没事故の遺族を描いた韓国映画『君の誕生日』で感じたときのようないたたまれなさも思い出しつつ、今作で描くシチュエーションの凄みに次第に圧倒されていく。両極端な立場に置かれた遺族が、教会の一室でテーブルを挟み、緊張を保ちながら思いの丈を絞り出していく。当事者同士の対話を凝視しながら、ここにまで至った時間の重さも考えてしまう。素晴らしい作品だった。


縁路はるばる
Far Far Away
監督:アモス・ウィー
2021年 香港
香港版『モテキ』のようなラブコメだけど、知り合う女性たちがみんなしっかりイキイキしてるのと、中心部から離れた辺鄙なとこに住んでいるという設定が上手い。ハンナ・チャンが出てたのも嬉しい。島が多くて、船が交通手段として重要だったり、香港北部の中国国境地帯は一般立入禁止で住民以外は許可証がないと入れないとか、旅行者目線で見ても興味深かった。


哀れなるものたち
Poor Things
監督:ヨルゴス・ランティモス
2023年 アメリカ
フランケンシュタインやブラック・ジャックのピノコとはまた違った主人公ベラ誕生の衝撃。性と自我と言葉を知り、外の世界に導かれる彼女の無垢なる成長を通してあばかれる、哀れなるものたち。人間の業の肯定と否定。いやはや赤塚不二夫かフェリーニか。凄まじい映画芸術を体現してみせたエマ・ストーンを讃えたい。
