アメリ
監督:ジャン・ピエール・ジュネ
LE FABULEUX DESTIN D’AMELIE POULAIN
2001年 フランス
観ようと思った頃には既に若者のファッションになってしまっていて、なかなか観れずにいたこの映画。結局4度目の挑戦で渋谷シネマライズと決別し、新宿の映画館にて、ついにそのシートをゲットすることができた。映画はまさに素敵な現代ファンタジー。主人公のアメリが誰もが振りかえるような美女ではないにせよフランス的キュートなルックスで、自分の恋を実らせようとあれこれ直線的に行けない、もどかしいほど遠回りして作戦立てたり妄想でウキウキしたり涙を流したりする姿は最高にいとおしい! おじいさんが応援するのもわかるし、同じく不器用なニノもアメリを追いかける彼の気持ちに共感。同じ匂いを持ったふたりがお互い惹かれ結ばれる、このことが何より素晴らしいと思ったし、前向きにさせてくれる。話的に過去のジュネ監督作と比べると毒が薄くなりがちだけど、常連ドミニク・ピノンその他脇役たちのサイドストーリーがしっかりオチまであったり充実してたのが彼らしいし、ニノ役のマチュー・カソヴィッツが自分の撮る映画は陰鬱なのに、こんなに好青年を演じているところがまたニクイ。年は越してしまったけど、観れて良かったと思えたのが良かった。
SPIRITUALIZED [ 2002.01.08. 渋谷AX ]
ケビン・シールズがプライマル・スクリームで余生を送っている現在において、このスピリチュアライズドのライブ体験というのは、それこそマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン以上の意味があると思うのだが、初来日のリキッドが嘘のように会場はガラガラ・・・。東京の恥ですよ、これは。なんだか悲しい気分で開演を待ちながら、あのジャケットのお面がプリントされたTシャツは何枚売れたんだろう?などと考えたりしてしまったものだけど、いざ始まればこれほど贅沢なものはなかったわけで、ほんと観なかった人は後悔してください。ラッパのファンファーレに導かれていった2時間半の世界は体験した人にしかわからないでしょう。前回以上にフリーキーに冴え渡る轟音ノイズと目潰し光線が凄い! うるさすぎて轟音モードに入るとジェイソンの声はほとんど聞こえないんだけど、実に計算された演奏で素晴らしいのなんの。グガー!!って状態から急転直下で「SHINE A LIGHT」のイントロに入ったときは、まさに至福昇天ですよ。相変わらずボケーっと突っ立って、手だけはいそがしく動いてるジェイソンだったけど、彼のヴォーカルは頼りなくも心に響くものがあって大好きだ。大仰極まりない音楽かもしれないが、彼らのレベルで発せられては、どうにも気持ち良くて最高としか言いようがない。次回の来日公演があるのか、それが気がかりだ。
1.COP SHOOT COP 2.ELECTRICITY 3.SHINE A LIGHT 4.ELECTRIC MAINLINE 5.OUT OF SIGHT 6.ON FIRE 7.DO IT ALL OVER AGAIN 8.NO GOD ONLY RELIGION 9.THE STRAIGHT AND THE NALLOW 10.TAKE YOUR TIME 11.I THINK I'M IN LOVE 12.WON'T GET TO HEAVEN (THE STATE I'M IN) 13.DON'T JUST DO SOMETHING
encore 1
14.TAKE ME TO THE OTHER SIDE 15.COME TOGETHER
encore 2
16.LORD CAN YOU HEAR ME
ECSTASY / LOU REED
正真正銘馬年だったのがルー・リード。1942年3月2日生まれ(同じ魚座だったのね)ということで、今年でなんと60歳の還暦を迎えます。ルー・リード60歳、カッコ良すぎるではないか! 彼の一枚なら自信を持って2000年発表の最新作を紹介。これは本気で素晴らしい大傑作でございますよ。これ聴かずしてヴェルヴェッツを語るなかれ。ルーのおじさんがジャケットスリーブでまんまエクスタシーな表情を浮かべておりますが、これほど官能的で攻撃的でロマンティックなものを耳にすると、ステレオの前で土下座するしかないでしょう。最終曲の「BIG SKY」では泣きの8ビートロックという、このダメ押しが嬉しすぎてたまらんです。しっかり聴いて、男の生きる道を修行したいと思います。
LIVE RUST / NEIL YOUNG & CRAZY HORSE
馬年といえばやはりこの人、御大ニール・ヤングが頭に浮かぶ人も多いかもしれません。『イヤー・オブ・ザ・ホース』って映画で「馬年」と漢字でどどーんというオープニングだったし。でも調べてみると彼は1945年(11月12日)の生まれなので、今年で57歳。実は馬年ではなく、酉(トリ)年だったのだ! なんとまあ・・・ということですが、気を取りなおして馬がらみでクレイジー・ホースとのライブ盤を紹介しましょう。1991年発表の2枚組『WELD』も好きですが、1枚モノではこれがベストといえるライブ盤ではないでしょうか。1979年発表で、同年に発表された傑作『RUST NEVER SLEEPS』同様に前半アコースティック、後半はエレクトリックにクレイジー・ホースとの圧巻な演奏と代表曲もふんだんに盛り込まれ全16曲と申し分ない内容です。昨年のフジロックを見逃した後悔というものが日に日に大きくなっていってるような。馬年の今年こそ再び来日を!
GOOD MORNING SPIDER / SPARKLEHORSE
今年は午(馬)年ですね。馬にあやかって、このバンドもグワーっと盛り上がるなんてことはないのでしょうか? あまり盛り上がりには期待できないですが、小品として扱われるには勿体無いようにも思えます。せめてひっそり来日ぐらいして欲しいものです。馬年だし。これは1998年のセカンドですが、ヒネり具合や歪み具合が絶妙なバランスで調合されたロックでありポップでもあるとても洗練されたマイルドな一品です。
トラフィック
監督:スティーブン・ソダーバーグ
TRAFFIC
2000年 アメリカ
麻薬戦争をドキュメントタッチで様々な地点で起こりうる経過を巧みにシンクロさせながら描いた、ソダーバーグらしい一本。本当にこの監督は巧いなぁと思う。個人的には『アウト・オブ・サイト』がいちばん好きだけど、この作品も全然飽きないです。深夜に見てても眠くならなかったし。それにしても麻薬対策を指揮する最高責任者の娘がヤク中って、すごい皮肉だよな。カタギにしても悪にしても、でかい役職の仕事なんてやるもんじゃないね。僕は目立たない自由で幸せな生活を望みたいです。
9 9/9 ’99野音 / TOKYO No.1 SOUL SET
昨年末に行なわれた渡辺俊美監修によるコンピレーション盤の発売記念イベントで特別にソウルセットとして一時的な復活ステージを披露したらしい。うーむ、やっぱり行けば良かったなぁ。99年以来、活動を休止したままであったので、こういうニュースを聞くと、素直に喜ばしく思える。今年新たなアクションを起こすのかどうかわからないが、なんとなく再び彼らが音楽表現に向かっているようで、ロマンティック伝説に次章が加えられることを静かに期待して待ちたい。
殺し屋1
監督:三池崇史
2001年 日本
正月早々、イヤーなもの見ちゃったなぁ。派手なスプラッターはそれはそれでめでたいように思いたいけど、ここまで生々しく痛々しいのは辛くて気持ち悪かった。殴る・蹴る・撃つの暴力より、切る・刺す・ちぎるのオンパレード。ひえー、もうやめてー! とにかく悪趣味なショッキング映像をここまで見せられては拒絶反応を示さざるを得ない。そこが三池崇史の狙いだったのか。映画の暴力シーンに麻痺している現代人に本気で目をそむけさせるほどリアルな感情としての痛みを感じさせることへの挑戦。それかただ単に登場人物の死亡率、出血量を日本映画史上最高にしたかっただけなのか。ピーター・ジャクソンの『ブレイン・デッド』はOKだけど、これは苦手です。もう二度と観たくないと思った。
カラテ大戦争
監督:南部英夫
1978年 日本
ザッツ昭和エンターテインメント! これは凄い。かなりきてます。梶原一騎と大山倍達の原作の映画化作品なのだが、これを観るとどうして香港のカンフー映画のように日本にカラテ映画が根付かなかったのか不思議だ。ブルース・リーやジャッキー・チェンのようなスターが生まれなかったのが原因か。確かに主演の真樹日佐夫(梶原一騎の実弟)は石原裕次郎チックでちょっとおっちゃんだけど、えいやー!エイヤー!と敵を蹴り飛ばすサマは爽快。いまだからこそあまりに斬新に見えすぎるのかも知れないけど、これはサイコーです。極限流カラテ(いわゆる極真カラテ)の師匠役には大滝秀治が! 存在感ありますな。
BAVARIAN FRUIT BREAD / HOPE SANDOVAL & THE WARM INVENTIONS
今年もクリスマス・イブを迎えてしまいました。ひとりお部屋で暗い音楽祭をということで、基本姿勢の体育座りで早速ホープ・サンドヴァルのアルバムを聴いてみましょう。どよーんとしたアコースティック・ドリーミーな世界と甘美なホープの歌声は基本的にマジー・スターと同じ。あー、沈む。どんどん沈んでいくよぉーと思ったら、白昼夢の果てにすっかり昇天してしまいました。これは例えようのない美しさです。2001年を幕引きするにふさわしい、代表的な一枚。