ロスト・イン・トランスレーション
CINEMA

ロスト・イン・トランスレーション

監督:ソフィア・コッポラ
LOST IN TRANSLATION [ 2003年 アメリカ・日本 ]
西洋人セレブの目線で綴る日本滞在記。結局のところ不思議の国ということで勝手に面白がられて終わっている薄いものでしかなく、何がよくてヒットしたのかさっぱりわからない、つまらない映画だった。外国人に受けるならまだしも、日本人がこれを面白いと思えるのか、かなり疑問だ。代官山で遊んでいる人たちなんか、全員頭悪そうだったしなぁ。ヴィム・ヴェンダースの『東京画』や『都市とモードのビデオノート』と比べれば全然たいしたことないし、オシャレでもなければ、アートでもない。映画のビル・マーレイが冷めた芝居をしていたように、冷めた気分で観てしまった。

posted on 2005/01/04
華氏911
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華氏911

監督:マイケル・ムーア
FAHRENHEIT911 [ 2004年 アメリカ ]
マイケル・ムーア監督が自身の持論に信念を抱き、時論として発展させるために作り上げた、マイケル・ムーアなりの『ゆきゆきて神軍』ともいえる、今のアメリカ・ブッシュ政権へのカウンターとしてのドキュメンタリープロパガンダ映画。好きも嫌いも賛否両論いろいろあれど、この作品が2004年を最も象徴する映画として世の中に果たした役割は非常に大きいのではないだろうか。同時多発テロ発生以降、アメリカの主要メディアは政府のプロパガンダとしての性格を一層強めたといわれているこの時代、インターネットで知ることができる情報も確かに多いが、一般市民にとってこの映画で見る実際の映像のインパクトはものすごいものだと思う。そしてムーアの才能に拠るところが大きく、この映画は全米でも大ヒットした。アメリカの戦争はハリウッドの先行投資と言われたりもしてきたが、とうとう現行の政権そのものを敵とする、この映画がウケてしまった。「体制と犠牲、予定通り予定外、もうわからない!、責任者出て来い!」とは斉藤和義の歌の歌詞にあったけど、田中宇のサイトを読んだり、朝まで生テレビを見たりして、一般のテレビや新聞報道が伝えない情報を見聞きしても、アメリカ国家というのは混沌としまくっていて本当によくわからない。イラクで戦死した米軍兵士の母親が涙ながらに嘆く「知っているようで何も知らない」という言葉が、強烈なメッセージとして突き刺さる。

posted on 2004/12/16
陽だまりのイレブン
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陽だまりのイレブン

監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ
UMA AVENTURA DE ZICO [ 1998年 ブラジル ]
ほのぼのレイクのCMが懐かしい、今となってはサッカー日本代表監督を務めるジーコのほのぼの主演映画。しかもジーコの一人二役! かたやマジメで論理的なジーコ本人「オリジナル」、そしてもう一方は陽気で無邪気なジーコ複製人間「ジーコピー」を熱演しています。ブラジル全国から選抜されたちびっこたちがジーコサッカースクールに招待され、ジーコから直接指導を受けながら、サッカーを学び楽しみ成長していく過程で、ジーコピーが作られる珍事件があったりという、楽しんで観るにはもってこいの映画です。ツッコミどころ満載ながら、こういう仕事も気取らずやってしまうジーコって、やっぱ素敵ですよ。代表監督でなんやかんや言われながらもなぜか結果を残しているように、この映画もブラジルでは大ヒットしたらしい。運も実力のうちと言うけれど、ジーコの強運は本物なのだろう。

posted on 2004/12/04
太陽を盗んだ男
CINEMA

太陽を盗んだ男

監督:長谷川和彦
[ 1979年 日本 ]
ジュリーこと沢田研二といえば、塚本晋也監督の『妖怪ハンター ヒルコ』での怪演がなかなか微笑ましかったものですが、やはりジュリーにとって銀幕のカルトスターの地位を決定付けたのは、この作品となるのだろう。U2が『How to Dismantle an Atomic Bomb(原子爆弾を解除する方法)』というアムバムを先ほどリリースしたばかりではあるけれど、この作品でジュリーが演じた中学理科教師は、東海村の原発からプルトニウムを盗み、なんと自らマンションの自室で原子爆弾を作り上げてしまう。伝説の日本映画とも呼ばれているだけの、異様な空気に満ちたエネルギーに翻弄されながら、最後の菅原文太との対決シーンは『DEAD OR ALIVE』の哀川翔VS竹内力のときのように興奮してしまいました。国家レベルのパワーを核によって手に入れたものの、野球のナイター中継を試合終了まで見せろ、ということ以外、自分が何がしたいのかわからない、と告白した主人公にグッとくるものがあった。

posted on 2004/11/27
列車に乗った男
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列車に乗った男

監督:パトリス・ルコント
L’HOMME DU TRAIN [ 2002年 フランス・ドイツ・イギリス・スイス ]
そのタイトル(邦題)からして、ヴィム・ヴェンダース初期のロードムービーのようなものを期待してしまいましたが、列車のカットはオープニングしかなくて、とんだアテ外れでありました。しかしながら、とある田舎町の駅で列車を降りた男(物静かな銀行強盗)と、その町に住むひとり暮らしの老紳士(銀行強盗を夢見る元学校教師)という、地味渋に描かれる男ふたりの短い友情物語は、かつて『タンデム』という作品がルコントにはありましたが、ユーモアのエッセンスも含めた哀愁がやたら切なくさせる良作だったと思います。

posted on 2004/11/23
殺人の追憶
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殺人の追憶

監督:ポン・ジュノ
MEMORIES OF MURDER [ 2003年 韓国 ]
実際にあった未解決の連続婦女強姦殺人事件をもとに描かれた作品。韓国の田舎の風景と住民をのどかにユーモラスに見せて和ませつつ、次第にシリアスになっていく状況に引き込まれていく。手がかりらしい手がかりもなく、唯一犯人の可能性のある容疑者を問い詰める警官の姿は『セブン』のブラッド・ピットを思わせる極限の苦悩があった。実話通り事件の解決には至らぬも、おおいに見応えのある力強い作品だ。

posted on 2004/11/15
チェ・ゲバラ 人々のために
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チェ・ゲバラ 人々のために

監督:マルセロ・シャプセス
CHE, UN HOMBRE DE ESTE MUNDO [ 1999年 アルゼンチン ]
10月9日はチェ・ゲバラの命日だった。革命家としての思想に決定的な影響を与えた南米各国を旅した若き日のチェを描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、是非とも観たい映画のひとつだが、そもそも彼とは何者なのかを知っておくにはちょうどいいドキュメント作品。生前の彼を知る、ともに闘い、間近で接してきた者たちによる証言の数々。キューバでの革命が成功後も安住の道を選ばず、つねに現場へと身を投じ、民衆の解放を信念として生きたがために、最後はボリビアで無残な死を遂げてしまったチェ・ゲバラ。しかし、だからこそ厚く信頼され、真のリーダーとしての魅力は、ジョン・レノンをして「あの頃世界で一番かっこいいのがゲバラだった」と言わしめたほど、彼の死後衰えることはない。

posted on 2004/10/09
CODE46
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CODE46

監督:マイケル・ウィンターボトム
CODE46 [ 2003年 イギリス ]
最近特に精力的に作品を量産しているようなウィンターボトム監督の最新作。記憶に新しい『24アワー・パーティ・ピープル』は前々作にあたるようで、前作『イン・ディス・ワールド』の存在をすっかり忘れてました。今作は彼にとって初のSF作品ということで、日本では突然公開された感もありますが、一応世界のメディアではなかなか評判のようであります。しかし、やはりイギリス映画。SFという方面を期待するには、あっさりしているというか、お金かかってないなぁと思ってしまいました。SFラブストーリーという総合面で観ますと、悪くはなかったのですが、サマンサ・モートンがほとんど坊主頭なところも含めて(演技はさすがだったと思うが)、ジョージ・ルーカスの『THX-1138』にかなり近いものを感じてしまいました。劇中の管理された都市(上海)からアラブ世界へ逃避行をするわけですが、今までも『ウェルカム・トゥ・サラエボ』でのボスニアや『イン・ディス・ワールド』でのアフガニスタンなど、ドキュメント出身のウィンターボトムらしい行動の早さ、映像作家としての姿勢は立派だと思う。

posted on 2004/09/12
NY式ハッピー・セラピー
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NY式ハッピー・セラピー

監督:ピーター・シーガル
ANGER MANAGEMENT [ 2003年 アメリカ ]
これは『パンチドランク・ラブ』第2章ってことなのか。内向的でストレスを抑えこみすぎてしまうがために、突然ブチ切れて時々泣きたくなってしまう男を『パンチドランク・ラブ』で切なく演じたアダム・サンドラーですが、今作の役でもそのキャラクターのほとんどを引き継いでいて、当然のごとくイイのです。加えて共演のジャック・ニコルソンとのコンビがコワいくらい大当たりの面白さ! 基本的に負けを認めない、謝らないアメリカ社会に生きる人たちは、映画のエンドクレジットでローリング・ストーンズの「19回目の神経衰弱」が流れてたけど、精神ストレスって相当レベルでありそうに思えてしまう。

posted on 2004/09/05
28日後…
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28日後…

監督:ダニー・ボイル
28DAYS LATER [ 2002年 イギリス・アメリカ・オランダ ]
暴力性ウイルスの拡大で汚染されたイギリスを舞台に、人間が人間を襲う現代のゾンビ映画。人類の滅亡を思わせる終末的な狂気を見るに、ダニー・ボイル版『ドラゴン・ヘッド』という一言で片付けられなくもないものだったりするのですが、結構当たったみたいで続編『28WEEKS LATER』が作られるとのこと。スケールをデカくしすぎた分、緊張感がイマイチで薄味な印象でした。

posted on 2004/07/18

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