下妻物語
CINEMA

下妻物語

監督:中島哲也
[ 2004年 日本 ]
下妻上等!! 下妻市民及び茨城県民に限らず、日本国民にとって必見かつ誇りに思える今年最高の日本映画。ロリータファッションに身を包み田んぼの畦道を優雅な空想を膨らませて歩くスッとぼけた感じが完璧に合致した深田恭子がとにかくラブリー。片や田舎ならではのヤンキーレディース役で水野晴男を見つけて喜ぶ垢抜けないセンスを堂々と披露しまくる土屋アンナの根性も見事。NHKイタリア語会話での目付きの悪さは、この役の影響だったのか?! ハイテンションな流れから、そんなふたりのコンビネーションに愛着を感じ、行く先の分からぬ青春に熱いものがたぎるキラキラした感覚に魅せられまくり。『アメリカン・パイ』のような賞とは関係ない青春コメディをやりたかったという中島哲也監督だが、向こうのマネごととしてではなく、しっかりオリジナルな新しい日本の青春映画を撮り上げた手腕は素晴らしい。

posted on 2004/07/06
スチームボーイ
CINEMA

スチームボーイ

監督:大友克洋
[ 2004年 日本 ]
世界的なセンセーションを巻き起こした1988年『AKIRA』の大友克洋による待望の新作を観に、公開に先駆けた新宿厚生年金会館での一般試写会に行ってきた。監督作としてはオムニバスアニメ『MEMORIES』の中の一篇「大砲の街」以来、9年振りとなるだけに誰もが期待してしまうのも致し方ないが、期待して観るには少しストーリーが弱すぎるように思えてならなかった。あくまで蒸気と鉄製マシーンにこだわった映像はさすがに見応えのあるものだっただけに、内容にもっと説得力があればなぁ、と少し残念な感じ。大友克洋らしい騒々しさは、たっぷり堪能できました。

posted on 2004/06/27
アモーレス・ペロス
CINEMA

アモーレス・ペロス

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
AMORES PERROS [ 1999年 メキシコ ]
新作『21グラム』も気になるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のデビュー作。『赤い薔薇ソースの伝説』や、もっと昔のアレハンドロ・ホドロフスキ監督作品など、カルトな名作はいくつかあったが、現在、かつてないほどメキシコ映画に注目が集まっている切っ掛けは、この作品の成功と、ガエル・ガルシア・ベルナルという若きスターを生み出したことによるところが大きい。荒々しくパワフルでエネルギッシュに見せつけながらも、緻密なカット割りテクニックと3つの物語が交錯する巧みに計算された構成は本当に見事だ。胸を抉られそうなほど直情に訴えかける痛みや喜び、悲しみ。残されたほんの小さな希望を持って生きる人間の生の奥深さ。この映画の凄みを強烈に感じながら見入ってしまう。闘犬がいろいろ絡んでくるだけに、犬好きは注意が必要かもしれません。

posted on 2004/06/03
永遠のモータウン
CINEMA

永遠のモータウン

監督:ポール・ジャストマン
STANDING IN THE SHADOWS OF MOTOWN [ 2002年 アメリカ ]
音楽好きじゃなくても知っているような数々の名曲をヒットチャートに送りこんだモータウンレコード。スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、スプリームス、フォー・トップス、テンプテーションズなどなどファンク〜ソウルミュージックの象徴的存在を生んだ影には、彼らのバックバンド、スタジオ・ミュージシャンを務めたファンク・ブラザーズという最高のミュージシャン達がいたことを語ったドキュメンタリー。現役のファンク・ブラザーズの証言と、再結成された彼らと彼らをリスペクトするシンガー達との共演ライブを中心に構成された最高に楽しめる内容になっている。ほとばしる熱い感動。チャカ・カーンが歌う反戦メッセージの込められたマーヴィン・ゲイの代表曲「WHAT’S GOING ON」に自然と胸が震えた。ファンク・ブラザーズの素晴らしさよ。サントラを買って帰ったほど、ファンクミュージックがますます好きになってしまった。美しく楽しい音楽がここにある。

posted on 2004/05/31
ウォーカー
CINEMA

ウォーカー

監督:アレックス・コックス
WALKER [ 1987年 アメリカ ]
民主主義の大義名分を都合良くこじつけて、軍事力でもって支配し、政治的・経済的覇権を奪うアメリカ合衆国に対する痛烈な批判。この映画で描かれる実在したウィリアム・ウォーカー(エド・ハリスが熱演!)は中米ニカラグアに出征して全土を制圧後、デタラメな選挙で大統領となり、無茶苦茶にやりたいようにやった挙句、追放され処刑された人物である。そんな彼が生きた時代は19世紀半ばでありながら、現在のイラクなどにおけるアメリカの政治外交姿勢と比較しても、何ら変わっていないということで、いまこの映画を観ておいて、損はないだろう。制作当時は「強いアメリカ」を標榜したレーガン政権がニカラグアへ介入しており、その映像や19世紀にはあり得ないTIME誌やヘリコプターまで登場させるなど、昔も今も同じであることを皮肉っている。ニカラグアはサンディニスタ革命ということで、音楽はコックス監督なじみのジョー・ストラマー。マイケル・ムーア以前にアメリカへの反抗を堂々とやってのけたアレックス・コックスの傑作。

posted on 2004/05/27
不思議惑星 キン・ザ・ザ
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不思議惑星 キン・ザ・ザ

監督:ゲオルギー・ダネリヤ
KIN-DZA-DZA! [ 1986年 ソビエト連邦 ]
クー。これを観たら「クー」としか言いようがない、おもしろすぎる怪作。最近、不思議という言葉に無意識に警戒してしまいがちですが、この不思議さは本物です! うっかり地球に迷い込んだ宇宙人(といっても靴下をはいてないだけの人間)の瞬間移動装置をポチっと押してしまったため、キン・ザ・ザ星雲にワープしてしまった地球人ふたりが、なんとか地球に戻ろうとするのだけど、なかなかのん気な展開でシリアスさが微塵もないSF物語。星に出てくるキャラクターといい、釣鐘みたいな宇宙船といい、上下関係のヘンなルールやら、抜けまくったユルい雰囲気がたまらなく好きになってしまう。『サボテン・ブラザーズ』の決めポーズとこの映画の「クー」のおじぎで通じ合えたら楽しいだろうなぁ。

posted on 2004/05/19
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
CINEMA

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

監督:ピーター・ジャクソン
THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING [ 2003年 ニュージランド・アメリカ ]
終わった。映画作品として、究極の3部作だったと思う。上映期間が終わりそうだったけど、劇場へ観に行って本当に良かった。過去2作のストーリーを思い出しながらの鑑賞ではあったけど、いざ映画が展開していくと心が打ち震えるシーンの連続で、スクリーンに全て飲み込まれてしまう感覚で圧倒されっぱなし。戦闘シーンの迫力と映像美の素晴らしさと言ったら、それだけで泣けてしまうほど。徹底的にやり抜いた表現者の情熱とロマンと勇気に惜しみない拍手を。未公開シーンをたっぷり加えて再編集した完全版がそのうち出るだろうから、細かいところはそっちでまた堪能したい。

posted on 2004/05/16
スクール・オブ・ロック
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スクール・オブ・ロック

監督:リチャード・リンクレイター
SCHOOL OF ROCK [ 2003年 アメリカ ]
ジャック・ブラック、アッチョンブリケー!な最高傑作。ガチガチに規律厳しい私立学校の子供たち(現場では音楽コンサルタントを担当したジム・オルーク直伝の教育を受けた精鋭子供バンド!)にロックのすべてを情熱たっぷりに闘魂注入しまくるという、ジャック・ニコルソンばりの怪演でひたすら楽しませてくれる完璧なハマリ役。ロック好きにはたまらないのは当たり前で、観る人を問わない普遍的な面白さが詰まったこの映画をカルトなもので終わらせるのはあまりに勿体無い。頼りない友人役でもあったマイク・ホワイトの脚本も素晴らしく、散々笑わしてくれるものの、ジャック・ブラック先生が放つセリフはストレートに心を打ち抜くものばかりだ。さらばハリー・ポッター。熱血感動、血行促進。大人も子供もロックにトキメくこと間違いなし。エンドロールまで必見です。

posted on 2004/05/09
トーク・トゥ・ハー
CINEMA

トーク・トゥ・ハー

監督:ペドロ・アルモドバル
HABLE CON ELLA [ 2002年 スペイン ]
変態開放路線とでもいうか、そんな独自のスタイルを確立してきたアルモドバルも、近年はだんだんとシリアス路線の作品を発表している。前作『オール・アバウト・マイ・マザー』と今作で連続してアカデミー賞を獲得するなど、評価と知名度も世界的なレベルに達した巨匠といってもいいかもしれない。個人的には『オール・アバウト・マイ・マザー』があまりフィットしなかったのだが(『ライブ・フレッシュ』も素晴らしかったけど、やはり『キカ』あたりまでの作品が好きだ)、今作はグッと見入ってしまいました。アルモドバルらしい異常性愛を描いてはいれど、変態性というより、人間の性そのものを深く見つめた傑作。

posted on 2004/05/08
テープ
CINEMA

テープ

監督:リチャード・リンクレイター
TAPE [ 2001年 アメリカ ]
『スクール・オブ・ロック』でついにメジャーでも決定打を放ったリチャード・リンクレイター監督が、ちょっと前に低予算で撮りあげた注目の一本。イーサン・ホーク、ロバート・ショーン・レナード、ユマ・サーマンの3人のみのキャストで、とあるモーテルの一室のみで描かれる密室劇。同級生が久々の再会を果たし、かみ合っているようでかみ合ってないような微妙な間合いの会話が同じ時間軸で進行していくという、焦らしの展開ではあるのだが、3人の確かな演技力と、リンクレイター本人が時間を掛けたというだけのことはある巧みな編集裁きでもって、緊張感と興味を失うことなく、最後まで楽しむことができた。ドラッグでハイになりっぱなしのイーサン・ホークと過去のレイプを告白するロバート・ショーン・レナードに、かつて『いまを生きる』で共演した二人だけに、時の流れを感じてしまう。

posted on 2004/05/04

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