カフェ・オ・レ
CINEMA

カフェ・オ・レ

監督:マチュー・カソヴィッツ
METISSE [ 1993年 フランス ]
いまとなっては『アメリ』が恋する男役で有名になったマチュー・カソヴィッツの監督デビュー作。監督作では『憎しみ』のイメージが強いため気鋭の社会派に捉えられがちだが、この作品は実に楽しいラブコメであります。マチュー・カソヴィッツ本人も『アメリ』に通じるチャーミングな役柄を好演。彼が演じる集合住宅に暮らす白人(ユダヤ人)と外交官一家のおぼっちゃまの黒人。その彼らを二股していた共通のガールフレンドが妊娠を告白したことで、てんやわんやの三角関係が描かれていく。恋愛模様に人種を絡めた、ある意味『憎しみ』にもつながる内容はなかなか鋭く、カフェ・オ・レという邦題はなるほど!と思ってしまった。『憎しみ』よりも、こっちを勧めるようにしましょう。ヴァンサン・カッセルも出ています。

posted on 2004/04/27
アダプテーション
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アダプテーション

監督:スパイク・ジョーンズ
ADAPTATION [ 2002年 アメリカ ]
センセーションを巻き起こした『マルコヴィッチの穴』再びの監督&脚本家によるコンビ第2作。脚本家チャーリー・カウフマンがなんと自分自身役を登場させる飛び技でもって、『マルコヴィッチの穴』で成功と名声を得た後の新作の脚本がうまく書き進められないスランプで悩み苦しむストレスをヤケクソで描いているように見えて、なんのこれしきチャーリー・カウフマンはやはりタダモノではないなと唸らずにはいられない映画でありました。現実世界の状況がいつしかファンタジーゾーンに入り込んでいる巧みな展開で、不思議な感覚に魅せられます。本人役が映画の中で動いているだけに、チャーリー・カウフマンの双子の弟ドナルド(ニコラス・ケイジの二役)なんて、途中まで半信半疑ながらも実在するのだろうなと思っちゃいますよ。脚本ばかりに焦点が当てられがちですが、役者も監督も力量ほとぼしる立派な仕事っぷりで、スパイク・ジョーンズのこだわりが炸裂してたオープニングは本当に素晴らしかった。

posted on 2004/04/15
ブロンド・ライフ
CINEMA

ブロンド・ライフ

監督:スティーブン・ヘレク
LIFE OR SOMETHING LIKE IT [ 2002年 アメリカ ]
アンジェリーナ・ジョリーの美女っぷりを確認するにはもってこいの一本。「一週間後に死ぬ」という予言を聞いてしまった彼女が、残りわずかな人生をどうやり抜くか、その苦悩と行動を描いた、ちょっとシリアスだったりするラブコメ。似たようなので、医者に余命わずかという話を勝手に聞き違えて、人間変わったように奮闘する『天国に行けないパパ』というのもありましたね。彼女に関しては初期の2本、独特の風貌が魅力的に思えた『サイバーネット』、元夫ビリー・ボブ・ソーントンと結ばれるに至った『狂っちゃいないぜ』、この2本がやっぱり良いですが、今作も『陽のあたる教室』『ビルとテッドの大冒険』のスティーブン・ヘレク監督らしい、良作です。

posted on 2004/04/11
僕の妻はシャルロット・ゲンズブール
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僕の妻はシャルロット・ゲンズブール

監督:イヴァン・アタル
MA FEMME EST UNE ACTRICE [ 2001年 フランス ]
『愛を止めないで』と『ラブetc.』で共演したふたりが結婚したときは「えっ!?」と動揺にも似た驚きを発したのも、今は昔。夫イヴァン・アタルが監督し、まんま夫婦役というか、ほぼ自分を演じているかのようなこの作品ですが、昨今のフランス映画の中では断トツに面白い。盲目的に夫婦だけで盛り上がっているカスみたいな映画が多々あるなかで、妻シャルロットの映画撮影を発端に、二人のスレ違いが赤裸々に描かれていく様に、逆にこっちがハラハラしてしまうほど。もちろん話は全部フィクションなんだけど、共演者テレンス・スタンプに嫉妬しまくりのイヴァン・アタルが最高に面白くて楽しませてくれる。シャルロットの方もリュディヴィーヌ・サニエにちょっと嫉妬したりと、まあ二人がお互い嫉妬しあうというのはアツアツってことのようで、よろしいのではないかと。

posted on 2004/04/09
殺人魚フライングキラー
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殺人魚フライングキラー

監督:ジェームズ・キャメロン
PIRANHA II : FLYING KILLERS [ 1981年 アメリカ ]
お気楽すぎるB級パニック映画ですが、これこそジェームズ・キャメロンの監督デビュー作なのだ。後に撮り上げた『アビス』や『タイタニック』といった海映画の大作を思えば、ここでの最初の経験も大きかったはず。しかしながら、最後は沈没船を爆破して終わっちゃうのだけど、そんなの全然解決にならんだろうと、その強引さが切なくも可笑しい。ジョーズは一匹だったからわかるけど、突然変異殺人ピラニアはすごくたくさんいるんだもんなぁ。で、この殺人ピラニアなんですが、当局がトビウオとの性質を合体させたという話で、空を飛びまわって人を襲うのです。前代未聞ですよ。しかも、羽と化したヒレをバタつかせると同時に、なぜかヒヨコのようにピヨピヨ音出してて、大笑い。おもしろいよ。

posted on 2004/03/26
黄泉がえり
CINEMA

黄泉がえり

監督:塩田明彦
[ 2003年 日本 ]
3週間限定公開というささやかな映画作品のつもりが、まさかのロングラン大ヒットで2003年興行収入第4位となる30億7000万円を記録した話題の作品。業界もびっくりのヒットの仕方といい、主題歌もヒットしたことといい、ストーリーの内容といい、これはまさに日本版『ゴースト』ではないか! この映画でいちばんのファンタジーは田中邦衛の娘を伊東美咲が演じていることだと思うのですが、高校のときに観た『ゴースト』がすごく好印象だったように、この『黄泉がえり』もなかなか楽しめました。

posted on 2004/03/03
ガキ帝国
CINEMA

ガキ帝国

監督:井筒和幸
[ 1981年 日本 ]
いまやタレント、コメンテーターとして茶の間に浸透している井筒監督の初期作品。若き日の紳助竜介を主役に据えた大阪アウトサイダーグラフィティといった内容で、不良同士によるケンカ映像が絶え間無く繰り広げられる。かなり粗いつくりではあれど、粗さがむしろ時代と映画の空気をより鮮明に描き出している。ヤクザな上岡龍太郎が、少年院あがりの不良という紳助より、ずっとリアルだった。

posted on 2004/02/28
青の炎
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青の炎

監督:蜷川幸雄
[ 2002年 日本 ]
かれこれ6年くらい前の東京に出たての頃、わけもわからず最初にやったアルバイトがイベント会場設営の仕事だったのですが、その流れで半月ほど蜷川幸雄の舞台の裏方で大型セットを動かしたりする仕事もやったりしていたのを思い出す。蜷川幸雄にとって21年振りという映画監督作は貴志祐介原作の同名小説を映画化したもの。日本屈指の人気を誇るアイドル二人を起用したことで話題になったが、松浦亜弥の出演シーンは肩透かしを食らうぐらい限られたもので、映画は嵐の二宮和也で一貫された、彼のひとり芝居状態となっている。そんなひとり芝居が受け入れられるかどうか。脚色の問題か、とにかくセリフの言葉数が多すぎて、そのため演技しすぎな印象を持たれてしまうのが、可哀相といえば可哀相。青春映画なりの若さ、青さは、21年振りという蜷川幸雄自身の映画への新鮮さとともに伝わってくる。

posted on 2004/02/07
マルホランド・ドライブ
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マルホランド・ドライブ

監督:デビッド・リンチ
MULHOLLAND DRIVE [ 2001年 アメリカ・フランス ]
なんとなくわけわからんのだろうなぁというイメージがあって、観るのを後回しにしてきたこの映画ですが、確かに一回観ただけではわけわからんながらも、かなりおもしろかったです。スローペースの展開から一転、ラスト30分は急にピッチが上がって、謎と謎を結びつけるシーンの断片があれよあれよと映し出され、なんとも不思議な興奮を味わってしまいました。結局、2回目を観て大方納得したわけですが、現実と幻想の倒錯した世界という、いかにもデビッド・リンチらしくもあり、舞台のハリウッドらしくもある、なかなか秀逸な出来映えであります。

posted on 2004/01/27
DOGTOWN & Z-BOYS
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DOGTOWN & Z-BOYS

監督:ステイシー・ペラルタ
DOGTOWN & Z-BOYS [ 2001年 アメリカ ]
スケートボードに何の思い入れもないが、この映画はおもしろい。1970年代、退廃したビーチに集まるサーファー達が結成したスケーターチーム、Z-BOYSのドキュメント。彼らは波乗りの要領を活かして過激にダイナミックなスケートボードの革新的なスタイルを確立し、他人の家に不法侵入して干上がったプールでスケボー三昧の日々から一躍名声を得たのだった。成功と引き換えにチームは解散し、バラバラになった個々の未来が平等に輝いていたわけではない現実。遊びのパイオニア達のプロジェクトXに中島みゆきが似合うはずもなく、彼らにとってのスケーターミュージック、ジミ・ヘン、ツェッペリン、T-REX、ストゥージズからバズコックス、DEVOにいたるまで、ギンギンと呼ぶにふさわしい最高のロックンロールが全編にわたって流れている。この音楽編集能力が大変素晴らしく、これだけでも十分楽しめるほどだ。ナレーションは田口トモロヲに負けじと『ミスティック・リバー』が大評判な俳優ショーン・ペンが引き受けております。

posted on 2004/01/08

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