

MAY AND DECEMBER / GREAT3
「ウィー・アー・グレイト3、フロム・シカゴ」とベースの高桑圭がこの前のシー・アンド・ケイクとのライブのときにMCで言っていたけど、まさにそのソフト・ロックな佇まいへとシフトした新作。いままでとはがラッと空気を変えて、弾けはせずとも、達者に組み立てられたサウンドの妙。地味に売れる早すぎたバンドの宿命は拭えないかもしれないが、このバンドのファンであることを誇りに思える充実の復活作。


1984
NINETEEN EIGHTY-FOUR
監督:マイケル・ラドフォード
1984年 イギリス
デビッド・ボウイの傑作アルバム『ダイアモンドの犬』(1974年発表)は、この映画の原作であるジョージ・オーウェルのSF小説をミュージカル化するというアイデアから生まれたものだ。結局ミュージカル化は著者の未亡人が許可しなかったため制作されることはなかったが、その後に出会ったウイリアム・バロウズの精神性と融合し、『ダイアモンドの犬』となったのである。スクリーンで監視され、政治プロパガンダ放送がひっきりなしに流れ、言葉を制限し、歴史の史実は日々作り変えられる、徹底的に管理された国。思想犯罪は容赦ない拷問と洗脳の末に処刑される、自由や異とすることを思っては生きていけない世界。教科書の言葉が消えていったり、変わっていったりしている今の日本を考えると、この物語も2001年にしてフィクションとして語れなくなっているようで恐ろしい。


STEREO NIGHTS / 石野卓球
いきなりスコーンと抜けちゃってる感じがするほどドリーミーなエレクトロポップでびっくり。電気の『イルボン2000』が売れなかったことへの嘆きなのかヤケなのか、そういう気もしないでもないが、トラックの完成度はさすがであります。ロシアの有名なエル・リシツキー「USSR」をパロったジャケットも元が元だけにインパクトがあって素晴らしいです。


ワンダーランド駅で
NEXT STOP WONDERLAND
監督:ブラッド・アンダースン
1998年 アメリカ
最近の日本の恋愛ドラマは毎度高視聴率を上げているようだが、全く観ていないのでさっぱりよくわからない。なかにはよいものもあるのかもしれないけど、この映画の粋な完成度を越えるなんてものは絶対ないと自信を持っていえるほど、これは素晴らしく良い映画でございました。ストーリー、俳優、セリフ、カメラワーク、演出、ボストンという街・・・そのどれもが日本のドラマ関係者が悔しがる(パクリたい)ような冴えたセンスを放っていて、とにかくステキすぎます。この映画のように、都市生活の孤独からサヨナラしたいな。


KNOW YOUR ENEMY / MANIC STREET PREACHERS
前作『THIS IS MY TRUTH, TELL ME YOURS』の成功に対する反動、初期に戻ったマニックスとして、この通算6枚目の新作を全面的に歓迎することは残念ながらできなかった。前作は三人マニックスのあり方を一身に受け入れたという意味において、とても感動的な作品だった。過去との決別をついに果たせたはずなのだ。それを成功による反動としてなのか、再びパンクス宣言してしまった。新たな気持ちで作品に取り組む心意気は立派だが、過去を取り戻そうとしたのは、やはり失敗だったのではないだろうか。寄る年波と肉付きによって、エッジも丸くなっていることは否めないし、何よりオーバープロデュースすぎるところが不満だ。その本心を証明するにはもっとソリッドで剥き出しのライブ演奏のような気迫と性急な焦燥感を表現すべきだったのだ。たとえ一本調子でも、生身の三人でやり遂げるべきだったのだ。デビッド・ホルムズもケビン・シールズも必要なかったのだ。いまだに大好きなバンドだし、三人のマニックスとしての誇りはキューバでのライブなどから十分に伝わった。それは本当に素晴らしいことだと思う。あとは中身をどう追いつかせるかだろう。


ワールド・イズ・ノット・イナフ
THE WORLD IS NOT ENOUGH
監督:マイケル・アプテッド
1999年 イギリス
「世界ではもの足りない」という007史上に残るジェームズ・ボンドのセリフにシビれましょう。ボンドとしては安定期に入った伊達男ピアース・ブロスナン、ロバート・カーライルとソフィー・マルソーという異様な組み合わせの悪玉コンビ、裏切り者でここでも殺される悪役商会ゴールディ、そしてボンド・ガールは若さに軍配デニース・リチャーズ(彼女の出演作っていいよね!)というキャストの顔ぶれだけでも楽しい。アンチ・マッチョな僕でも、ボンドには憧れてしまいます。


DISCOVERY / DAFT PUNK
彼らが生前に残した(だって今のダフト・パンクって一回死んでサイボーグとして復活した姿なんでしょ?)シングルは本当にSTARDUST名義の「MUSIC SOUNDS BETTER WITH YOU」も含めて、よく聴いたものだ。今回のアルバムはなんともまあ、とにかくキャッチーでスカスカの80年代エレポップということで、笑える。おもしろい。ちょっぴり哀しくて切なくて、チャーミング。でも、本気で真剣にこの音楽を鳴らしている。そこがいい。正直言って、今作のダフト・パンクよりもいい音楽はたくさん存在すると思う。しかし、地球規模の巨大な単位で共有することのできる感動が味わえるのは、今年はこの一枚しかないのではないか。いつの日かこのアルバムをリアルタイムで聴いていたことを思い出して、センチメンタルな気持ちになるときがやって来るだろう。


MONDAY
監督:サブ
2000年 日本
サブ監督作品には過去の3作ともスタンディング・オーベイションを送ってきた僕でも、今回のシュールすぎる展開には、いい意味ではない方向で思わずうなってしまった。毎度シュールといえばシュールなのだけど、いまいち抜けきれていない歯切れの悪さのほうが目立ってしまっている。おなじみ堤真一が主演といえ、酒に酔っただけの主人公だったのがダメだったのかもしれない。ちょっと今作はムダにメッセージ性を盛り込んだり意識しすぎたか。


スナッチ
SNATCH
監督:ガイ・リッチー
2000年 イギリス
観た人誰もが『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』と同じだと思ったことだろう。悪意まる出しのケチはいくらでもつけられる映画かもしれないけど、やっぱりそれでも面白かったと僕は思う。ロンドンが舞台だし、だいたいそんなに真剣に観る必要のない、単純に楽しんでもらう映画として立派に出来ているのだ。登場人物の多さも、ちゃんと使っては消されているし(ベニチオも早かった!)、勢いで見せきる編集の巧さと音楽の使い方は相変わらず抜群のセンスを発揮している。ブラッド・ピットのヘタレ英語もよかったです。犬、大活躍!


AJICO 2001.03.19. 赤坂ブリッツ
完璧と形容するにはあまりに容易すぎて恥ずかしい気もするのだけど、CD以上に本当に言葉を失うくらい最高レベルのライブ・パフォーマンスだった。思い思いに歌を歌い、思い思いにギターを刻み、思い思いにベースと戯れ、思い思いにドラムを打ち鳴らす。バンドの4人の個性がそれぞれ強烈に際立ちつつも、一糸乱れぬ完全体の結晶と化す叙情的なAJICOのグルーヴ。彼らの旅が終着を迎えようとも、至高のライブ体験となったこの日のステージを忘れることはないだろう。
1.青い鳥はいつも不満気 2.TAKE5 3.すてきなあたしの夢 4.美しいこと 5.金の泥 6.GARAGE DRIVE 7.毛布もいらない 8.悲しみジョニー 9.深緑 10.ペピン 11.歪んだ太陽 12.フリーダム 13.波動
encore
14.ひまわり 15.午後 16. カゲロウソング
