

小島麻由美 2003.02.28. 赤坂ブリッツ
昨年に引き続き新作『愛のポルターガイスト』を発表した彼女の単独ライブを観ることができて、本当に幸せだ。歌ってないときは相変わらずハラハラさせられっぱなしだったけど、アクションも表情も最小限にあの見事なほど妖艶な声で歌う彼女はとにかくカッコ良い。ASA-CHANGを中心としたおっさんばかりの激渋バンドは、ゲストに新作で参加したサックス・菊地成孔を加え、それはそれは大変に艶やかで素晴らしく、客として何とも贅沢な気分を味わうことができた。赤いホットパンツにブーツという彼女に春の訪れを感じた一夜でした。
1.愛のポルターガイスト 2.恋はサイケデリック 3.ショートケーキのサンバ 4.ロックステディガール 5.真夜中のパーティー 6.セシルカットブルース 7.月の光 8.蜜蜂 9.はつ恋 10.背後に気をつけろ! 11.赤と青のブルース 12.ハードバップ 13.黒猫 14.眩暈 15.黒い革のブルース 16.結婚相談所 17.パレード 18.愛しのキッズ 19.恋の極楽特急 20.皆殺しのブルース


ボーリング・フォー・コロンバイン
BOWLING FOR COLUMBINE
監督:マイケル・ムーア
2002年 カナダ
イラク問題などでアメリカ政府の動向に注目が集まっているタイムリーなタイミングで心の中にあるアメリカへのモヤモヤした感じを多少なりともスッキリさせたいのか、異例の大ヒットとなっているアメリカ銃社会をテーマにしたドキュメント映画。何も天才的なひらめきや表現があるわけではなく、ただ普通に思っている疑問を投げかける視点の鋭さとユニークさ、またカメラを連れて突撃取材を敢行する行動力によって、ドキュメントであるけどもマイケル・ムーアの作品としての個性が強く印象に残る。そして、それが物凄くおもしろい。アメリカ白人の脅え、カナダとの比較、マリリン・マンソンの明晰な会話、恐怖と消費のアメリカ社会、全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストンなどなどといったジャーナリスティックな知的好奇心を満たす刺激的な内容が満載だ。


7 WORLDS COLLIDE / NEIL FINN & FRIENDS
2001年4月に行なわれた元クラウデッド・ハウスのニール・フィンによる地元ニュージーランドでの凱旋ライブ。バックバンドにジョニー・マー、レディオヘッドのエド・オブライエン&フィル・セルウェイが全面参加しているのに加え、エディ・ヴェダーが数曲リード・ボーカルとしてその存在感たっぷりの声を披露している。脇役に徹しながらもジョニー・マーとエド・オブライエンというギタリストの競演は胸が高鳴るわけで、「ゼア・イズ・ア・ライト〜」がここで演奏されている事実に否が応にも反応せざるを得ない。どうにもこうにもジョニー・マーの繊細なプレイが聞けただけで幸せだったりするけれど、ニール・フィンの楽曲の良さに感銘を受けることなお多し。至福のエンディングは大名曲「DON’T DREAM IT’S OVER」。合唱して歌っているみんなはきっといい表情しているんだろうなぁ。


LIVE IN NEW YORK CITY / BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND
アメリカを象徴するロックンロール・ヒーローは何と言ってもブルース・スプリングスティーンである。古く昔から第一線で活躍し続け、常にアメリカを背負ってロックに託してきたブルース・スプリングスティーン。デーモン・ゴッホ=バッドリー・ドローン・ボーイが彼のブート盤をコレクションしていたり、アダム・サンドラーが本気のモノマネでレコードを出していたりするなど、時代にとらわれなく聞き手をとにかく魅了してやまない。そして、エルビス・コステロにアトラクションズ、ニール・ヤングにクレイジーホースがいるように、ブルース・スプリングスティーンにはEストリートバンドという70年代に『明日なき暴走』『闇に吠える街』といった傑作群を生み出した盟バンドがいたわけで、ここで紹介するライブ盤はそのEストリートバンドと12年振りに組んだツアー音源が収録されている。「永遠の人生を約束することはできないが、今、ここの瞬間の人生を約束することはできる」という彼の言葉。僕は全てを信じて観に行きたくて仕方がない。


ブラックホーク・ダウン
BLACK HAWK DOWN
監督:リドリー・スコット
2001年 アメリカ
クリントン政権時代、1993年10月のアメリカのソマリア軍事介入における失敗に終わった作戦を描いた実話の映画化作品。ほば全編が戦闘シーンで説明的な部分がほとんどなく、アメリカ軍兵士の視点での戦場ドキュメントと言える。ソマリア側の状況、立場については全くといっていい程触れられていないが、かと言って、アメリカの正義を押し付けるプロパガンダ的な内容でもないのは、リドリー・スコット監督がイギリス人という国籍の違いによるものかもしれない。ユアン・マクレガーとユエン・ブレンナーの『トレインスポッティング』コンビが米兵役で出演しているのも観る者にとっては興味深い。


DISTANCE
監督:是枝裕和
2001年 日本
カルト教団による無差別殺人実行犯遺族4人と元教団信者1人の5人が一日をともに過ごし、5人による対話とそれぞれの回想シーンを挟みながら、教団側へと傾き去っていった者と残った者との人間関係・距離を描き出していく。妻と夫、兄と弟、父と子。あくまで5人が5人の立場・思い・視点での言葉をドキュメント的に捉えた映画は、なぜ関係を絶ってまで去っていったのか、また事件に関する事実関係など、はっきりとはわからないままに、リアルな姿が印象に残る。元信者を演じた浅野忠信は『青春デンデケデケデケ』『119』以来と思えるほど、この映画では実によかったと思う。


猟奇的な彼女
MY SASSY GIRL
監督:クァク・ジェヨン
2001年 韓国
ただなんとなくではあったけれど、『シュリ』以降続々と輸入されてくる韓国映画を全然観てなくて、思い起こせば学生の時に観た『風の丘を越えて』という親子の暗い話の映画以来かもしれない。しかしこの映画『猟奇的な彼女』は面白かった! ラブコメというよりSMです。劇的なエピソードに事欠かなく、見事にかみ合った猟奇的な彼女Sと振りまわされっぱなしの彼氏Mの関係。思いっきり楽しめたのは無茶苦茶なんだけど全てをアリにしてしまう彼女を演じたチョン・ジヒョンの魅力に尽きる。これはオススメです。


リリイ・シュシュのすべて
監督:岩井俊二
2001年 日本
元々はインターネット上でその物語を発表し、架空の人気アーティスト「リリイ・シュシュ」を作り上げ、そこに一般の閲覧者からによるBBSへの書き込みを反映させ肉付けをしたうえで映画が制作されたこの作品。一連のプロジェクト性から、物語上・映画上での殺人や自殺といった少し余計にも思えた描写も含めて、岩井俊二のサブカルチャー資質が全面に発揮された作品となっている。中学生活にはびこるいじめ、現実逃避の拠り所としての絶対的なアーティスト「リリイ・シュシュ」。非常に暗く、重くのしかかってくる映画ではあれど、それでも思春期はかけがえのないものとして、ずっと若い世代へのやさしさを感じさせる、美しくあまりに爽やかな映像に妙な居心地を感じながら、思いのほか見入ってしまった。ギャオス内藤(生活指導の先生)に小出監督(沖縄の案内人)も出てると思ったら別の役者だったようだ。


奥田民生 2003.02.01. 日本武道館
昨年リリースしたアルバム『E』に伴う全国ホールツアーのファイナル、武道館2DAYSの最初の日に行ってきました。思えば昨年1月、川崎クラブチッタで観たとき話の流れで「次のツアーで衣装でも作りますか」と言ってたけど、本当にバンドメンバーも含めて全員同じスーツで今回のツアーは決めてきたみたいで、毎度飽きさせない新しいことをやってくるところはさすが。サックスを二度三度手に取って吹いたりもしてたし、古田たかしさんが宙に舞いあがったり、珍しいもの見せてくれます。中でも、「御免ライダー」のときの超巨大ミラーボールは笑ったけど、感動したなぁ。あれ一曲だけしか出番がないなんて、ちょっと勿体無かった気もするほど、デカかった! ツアーファイナルとあって、途中ゲストとしてドラムにチャーリー・ドレイトン、ベースに小原礼も参加する一幕も。その際、ドラムセットのセットチェンジの最中、小ネタを挟んだりと、いろいろ楽しませてくれました。何と言っても歌と演奏は申し分ないわけで、「ヘヘヘイ」の高揚感は特別凄かったです。楽曲がこうしてナマの場ででき上がるわけで、やはり民生はライブを堪能してこそですね。
1.俺は知ってるぜ 2.まんをじして 3.海へと 4.家に帰れば 5.E 6.トリコになりました 7.AND I LOVE CAR 8.HORSES(斉藤有太ソロ曲) 9.人間 10.荒野を行く 11.鼻とフラワー三世 12.鼻とフラワー 13.ヘヘヘイ 14.イージュー★ライダー 15.さすらい 16.The STANDARD - instrumental (サックス奥田民生&キーボード斉藤有太) 17.みんな元気 18.抱きしめたい 19.The STANDARD 〜消灯〜 〜白い恋人たち 20.御免ライダー 21.花になる 22.手紙 23.マシマロ 24.哀愁の金曜日 25.ドースル?
encore 1
26.ショッピング 27.CUSTOM
encore 2
28.BEEF


千と千尋の神隠し
監督:宮崎駿
2001年 日本
先日テレビ放送があったけど、たまたまレンタルしてたので同日深夜にビデオで観た。おそらく3月のアカデミー賞で世界的な認知を得るであろう日本最大のヒット作はそのテレビ視聴率も記録を塗り替えたようだが、それだけの国民性、国民的行事に仕立て上げた宮崎駿は凄い映画監督だと思う。人間界から離れた風呂屋というシュールな舞台にすっかり惹き込まれ、満足いくまで楽しめました。
