ドッグヴィル
監督:ラース・フォン・トリアー
DOGVILLE [ 2003年 デンマーク ]
舞台となる「ドッグヴィル」という小さな村を、これといったセットもなく、床に描いた白線だけで表現された、壮大な実験作というイメージが強すぎて、正直なかなか観るのに気乗りしなかったわけですが、観てよかった。面白いです。映画としてはかなりの挑戦だったと思うけど、ストーリーは明解。ラース作品に共通する人間の醜態を、壁のないセットなだけに筒抜けで撮りまくってます。そんな撮影環境を記録したメイキングドキュメント『ドッグヴィルの告白』も観てみると、構図によってはセット全体がカメラに写るため、ほぼ全編にわたって役者全員が芝居に集中しなければいけないという、そんな緊張と疲労がアリアリで、かなり過酷そうでした。しかもスウェーデンの山奥のスタジオに約2ヶ月の合宿状態。まあでも監督ラース・フォン・トリアーの精神状態が一番つらそうに見えましたが、映画作家としてどこまで突き進んでくれるのか、まだまだ興味が尽きない才能の持ち主だと思う。
ロスト・イン・トランスレーション
監督:ソフィア・コッポラ
LOST IN TRANSLATION [ 2003年 アメリカ・日本 ]
西洋人セレブの目線で綴る日本滞在記。結局のところ不思議の国ということで勝手に面白がられて終わっている薄いものでしかなく、何がよくてヒットしたのかさっぱりわからない、つまらない映画だった。外国人に受けるならまだしも、日本人がこれを面白いと思えるのか、かなり疑問だ。代官山で遊んでいる人たちなんか、全員頭悪そうだったしなぁ。ヴィム・ヴェンダースの『東京画』や『都市とモードのビデオノート』と比べれば全然たいしたことないし、オシャレでもなければ、アートでもない。映画のビル・マーレイが冷めた芝居をしていたように、冷めた気分で観てしまった。
ピエール瀧とベートーベン [ 2004.12.24. 恵比寿リキッドルーム ]
昨年の7hoursで結成されたミラクルバンド、ピエール瀧とベートーベン(ピエール瀧/Vocal、ブラボー小松/Guitar Beethoven、ジニームラサキ/Bass Beethoven、吉村由加/Drum Beethoven、砂原良徳/Synthesizer Beethoven)がクリスマスイブに一夜限りの復活ライブ! 7hoursに行けず涙したあの日も良き思い出となる、最高に楽しいクリスマスパーティでありました! 運命のテーマ「じゃじゃじゃじゃーん」と歌いながら現れた瀧は裸にタキシード+シルクハット姿で、否が応にも見事に突き出た美腹(保険かけててもおかしくないほどケアが施されているのか毛一本生えてない芸術品)に目がいってしまう。そしていきなりカバーの選曲素晴らしく「ゴーストバスターズのテーマ」から狂乱の大宴会へと場内沸騰。人生時代の名曲も早々に炸裂し、「キンタマが右に寄っちゃった オールナーイトローング」という歌で盛り上がれる、こんな至福なクリスマスイブはないだろう。後半はジッパー付き赤ビキニパンツをくい込ませながら電飾付き緑の毛皮へと露出を高めて衣装チェンジ。出来すぎなまでに面白すぎます。兎にも角にも楽しくて楽しくて、終始ハイテンションで久々に汗をかきかきはしゃいでしまいました。これで気持ち良く晴れやかに年が越せそうです。来年、電気グルーヴとしての活動におおいに期待しています!
1.運命 2.Ghost Bustersのテーマ 3.オールナイトロング 4.バカ正則 5.さみしがりやの瀧 6.ちょうちょ 7.モテたくて・・・ 8.元祖・力医師 9.ジャンボタニシ 10.キラーポマト 11.俺が畳だ! 殿様だ! 12.富士山 13.ガリガリ君 14.あすなろサンシャイン
ending
餅まき
華氏911
監督:マイケル・ムーア
FAHRENHEIT911 [ 2004年 アメリカ ]
マイケル・ムーア監督が自身の持論に信念を抱き、時論として発展させるために作り上げた、マイケル・ムーアなりの『ゆきゆきて神軍』ともいえる、今のアメリカ・ブッシュ政権へのカウンターとしてのドキュメンタリープロパガンダ映画。好きも嫌いも賛否両論いろいろあれど、この作品が2004年を最も象徴する映画として世の中に果たした役割は非常に大きいのではないだろうか。同時多発テロ発生以降、アメリカの主要メディアは政府のプロパガンダとしての性格を一層強めたといわれているこの時代、インターネットで知ることができる情報も確かに多いが、一般市民にとってこの映画で見る実際の映像のインパクトはものすごいものだと思う。そしてムーアの才能に拠るところが大きく、この映画は全米でも大ヒットした。アメリカの戦争はハリウッドの先行投資と言われたりもしてきたが、とうとう現行の政権そのものを敵とする、この映画がウケてしまった。「体制と犠牲、予定通り予定外、もうわからない!、責任者出て来い!」とは斉藤和義の歌の歌詞にあったけど、田中宇のサイトを読んだり、朝まで生テレビを見たりして、一般のテレビや新聞報道が伝えない情報を見聞きしても、アメリカ国家というのは混沌としまくっていて本当によくわからない。イラクで戦死した米軍兵士の母親が涙ながらに嘆く「知っているようで何も知らない」という言葉が、強烈なメッセージとして突き刺さる。
陽だまりのイレブン
監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ
UMA AVENTURA DE ZICO [ 1998年 ブラジル ]
ほのぼのレイクのCMが懐かしい、今となってはサッカー日本代表監督を務めるジーコのほのぼの主演映画。しかもジーコの一人二役! かたやマジメで論理的なジーコ本人「オリジナル」、そしてもう一方は陽気で無邪気なジーコ複製人間「ジーコピー」を熱演しています。ブラジル全国から選抜されたちびっこたちがジーコサッカースクールに招待され、ジーコから直接指導を受けながら、サッカーを学び楽しみ成長していく過程で、ジーコピーが作られる珍事件があったりという、楽しんで観るにはもってこいの映画です。ツッコミどころ満載ながら、こういう仕事も気取らずやってしまうジーコって、やっぱ素敵ですよ。代表監督でなんやかんや言われながらもなぜか結果を残しているように、この映画もブラジルでは大ヒットしたらしい。運も実力のうちと言うけれど、ジーコの強運は本物なのだろう。
太陽を盗んだ男
監督:長谷川和彦
[ 1979年 日本 ]
ジュリーこと沢田研二といえば、塚本晋也監督の『妖怪ハンター ヒルコ』での怪演がなかなか微笑ましかったものですが、やはりジュリーにとって銀幕のカルトスターの地位を決定付けたのは、この作品となるのだろう。U2が『How to Dismantle an Atomic Bomb(原子爆弾を解除する方法)』というアムバムを先ほどリリースしたばかりではあるけれど、この作品でジュリーが演じた中学理科教師は、東海村の原発からプルトニウムを盗み、なんと自らマンションの自室で原子爆弾を作り上げてしまう。伝説の日本映画とも呼ばれているだけの、異様な空気に満ちたエネルギーに翻弄されながら、最後の菅原文太との対決シーンは『DEAD OR ALIVE』の哀川翔VS竹内力のときのように興奮してしまいました。国家レベルのパワーを核によって手に入れたものの、野球のナイター中継を試合終了まで見せろ、ということ以外、自分が何がしたいのかわからない、と告白した主人公にグッとくるものがあった。
SMASH THE SYSTEM (singles and more) / SAINT ETIENNE
最近、CD屋さんにセイント・エチエンヌの新譜らしきものが置いてあると思ったら、それはアメリカ向けの彼らのベスト盤でした。まあでも今更ながらもセイント・エチエンヌが割と好きなので、もっと評価されていてもいいのになぁ、とも思うわけです。割と好き、という物言いが微妙なニュアンスに取られかねないですが、割と好き、という感じが実によく当てはまってしまうから仕方がない。そんなわけで新しいのに限らずいろいろ出ている彼らのベスト盤ですが、個人的には新しいやつより2001年版の2枚組ベスト盤『SMASH THE SYSTEM』をオススメします。1990年のデビューから1999年までの軌跡がたっぷり詰まっていますが、この変わらない一貫した音楽スタイルは何なのでしょうか。当時は何も考えずに聴いてましたが、こうして振り返ってみると、結構すごいことのように思えてきます。メロディ・メイカー誌出身がいるだけに、メロディ・メイカーとしても実は素晴らしいポップチューンだらけ。その昔、ライブはカラオケという評判を聞いたものですが、スパンク・ハッピーよりずっと以前にそんなライブを堂々とやっていたというだけでも、再評価されてしかるべきかもしれません。そろそろ日本にも来てくれないかなぁ。今こそライブが観たい。
列車に乗った男
監督:パトリス・ルコント
L’HOMME DU TRAIN [ 2002年 フランス・ドイツ・イギリス・スイス ]
そのタイトル(邦題)からして、ヴィム・ヴェンダース初期のロードムービーのようなものを期待してしまいましたが、列車のカットはオープニングしかなくて、とんだアテ外れでありました。しかしながら、とある田舎町の駅で列車を降りた男(物静かな銀行強盗)と、その町に住むひとり暮らしの老紳士(銀行強盗を夢見る元学校教師)という、地味渋に描かれる男ふたりの短い友情物語は、かつて『タンデム』という作品がルコントにはありましたが、ユーモアのエッセンスも含めた哀愁がやたら切なくさせる良作だったと思います。
殺人の追憶
監督:ポン・ジュノ
MEMORIES OF MURDER [ 2003年 韓国 ]
実際にあった未解決の連続婦女強姦殺人事件をもとに描かれた作品。韓国の田舎の風景と住民をのどかにユーモラスに見せて和ませつつ、次第にシリアスになっていく状況に引き込まれていく。手がかりらしい手がかりもなく、唯一犯人の可能性のある容疑者を問い詰める警官の姿は『セブン』のブラッド・ピットを思わせる極限の苦悩があった。実話通り事件の解決には至らぬも、おおいに見応えのある力強い作品だ。
奥田民生 [ 2004.10.30. 広島市民球場 ]
広島の音楽家の夢。ソロデビュー10周年の偉業ライブ。前人未到、念願の広島市民球場でのひとり股旅スペシャル。天気予報はあきらめるしかない降水確立90%の雨。前日にKOBさんから「座席を拭くものも含めて、雨対策もお忘れなく」というメールをもらい、同時にひのさんから「きっと夕方にはやむでしょう。かならず」というメールをもらった。当日、雨ガッパに折り畳み傘を持参して小雨降る東京から新幹線で駆けつけると、広島はまさかの晴れ。あっぱれひのさんの予言的中。何はともあれ、素晴らしいコンディション。広島カープ大野豊投手の引退試合以来だというくらい、見事に埋まりきった客席スタンド。始まる前から会場のマジックがあふれる感じが凄かった今日の広島市民球場。この雰囲気はもはやライブの感覚ではなく、野球の試合観戦そのもののようで、民生は決して球場を汚さない、野球の方法でコンサートを実行したのだった。ウグイス嬢のアナウンス紹介でバックスタンドから登場し、審判のプレイボールの掛け声で始まり、ジェット風船での応援やブルペンカーに乗っての再登場。最後は優勝セレモニーそのものの場内パレードに歓喜の胴上げ。奥田民生にとって、民生ファンにとって、広島にとって、本当にかけがいのない忘れられない誇りに思える一大イベントだった。いつになく気合の入った民生が珍しく二度もギターの弦を切ったことが、とても印象的だった。美しく燃えた広島よ、ありがとう。お世話になったみなさん、本当にどうもありがとう。またいつか行こうと思った。
1.ふれあい 2.荒野を行く 3.新曲 4.スカイウォーカー 5.ブルース 6.羊の歩み 7.野ばら 8.たったった 9.イオン 10.アーリーサマー 11.桜の季節(フジファブリック) 12.君という花(ASIAN KUNG-FU GENERATION) 13.最後のニュース(井上陽水) 14.最初から今まで(冬のソナタ・RYU)
〜休憩・それ行けカープ(若き鯉たち)〜
15.唇をかみしめて(吉田拓郎) 16.人間 17.The STANDARD 18.息子 19.MOTHER 20.ラーメンたべたい(矢野顕子) 21.陽 22.人ばっか10.30 23.青春 24.花になる 25.イージュー★ライダー 26.さすらい
encore 1
27.すばらしい日々
encore 2
28.冬のソナタ 29.CUSTOM