ウォーカー
CINEMA

ウォーカー

監督:アレックス・コックス
WALKER [ 1987年 アメリカ ]
民主主義の大義名分を都合良くこじつけて、軍事力でもって支配し、政治的・経済的覇権を奪うアメリカ合衆国に対する痛烈な批判。この映画で描かれる実在したウィリアム・ウォーカー(エド・ハリスが熱演!)は中米ニカラグアに出征して全土を制圧後、デタラメな選挙で大統領となり、無茶苦茶にやりたいようにやった挙句、追放され処刑された人物である。そんな彼が生きた時代は19世紀半ばでありながら、現在のイラクなどにおけるアメリカの政治外交姿勢と比較しても、何ら変わっていないということで、いまこの映画を観ておいて、損はないだろう。制作当時は「強いアメリカ」を標榜したレーガン政権がニカラグアへ介入しており、その映像や19世紀にはあり得ないTIME誌やヘリコプターまで登場させるなど、昔も今も同じであることを皮肉っている。ニカラグアはサンディニスタ革命ということで、音楽はコックス監督なじみのジョー・ストラマー。マイケル・ムーア以前にアメリカへの反抗を堂々とやってのけたアレックス・コックスの傑作。

posted on 2004/05/27
UA [ 2004.05.21. 渋谷公会堂 ]
LIVE

UA [ 2004.05.21. 渋谷公会堂 ]

前作『泥棒』で行くとこまで行ってしまったような感覚があったが、そこからの反動のように解放感で溢れた新しい境地の新作『SUN』を引っさげた今回のツアー。真っ白なステージ、超絶ツアーバンド(ギター:内橋和久、ベース:鈴木正人、ドラム:外山明、サックス:菊池成孔、トランペット:佐々木史朗、キーボード/クラリネット:清水一登)、そしてUA。これ以上、何が必要というのか。生楽器中心の演奏は迫力満点でありながら、あまりに気持ち良く、UAの歌うたいとしての資質がより際立ち、座って聴きながらもゾクゾクすることしきり。新作の世界を維持しつつ、過去の名曲がこのバンドでのアレンジで歌われるのも大きな見所だったと思う。楽しかった。

set list
1.そんな空には踊る馬 2.忘我 3.情熱 4.閃光 5.世界 6.ファティマとセミラ 7.ブエノスアイレス 8.スカートの砂 9.ミルクティー 10.TORO 11.ロマンス 12.踊る鳥と金の雨 13.LIGHTNING
encore
14.UA UA RAI RAI 15.太陽ぬ落てぃまぐれ節 16.雲がちぎれるとき
posted on 2004/05/25
不思議惑星 キン・ザ・ザ
CINEMA

不思議惑星 キン・ザ・ザ

監督:ゲオルギー・ダネリヤ
KIN-DZA-DZA! [ 1986年 ソビエト連邦 ]
クー。これを観たら「クー」としか言いようがない、おもしろすぎる怪作。最近、不思議という言葉に無意識に警戒してしまいがちですが、この不思議さは本物です! うっかり地球に迷い込んだ宇宙人(といっても靴下をはいてないだけの人間)の瞬間移動装置をポチっと押してしまったため、キン・ザ・ザ星雲にワープしてしまった地球人ふたりが、なんとか地球に戻ろうとするのだけど、なかなかのん気な展開でシリアスさが微塵もないSF物語。星に出てくるキャラクターといい、釣鐘みたいな宇宙船といい、上下関係のヘンなルールやら、抜けまくったユルい雰囲気がたまらなく好きになってしまう。『サボテン・ブラザーズ』の決めポーズとこの映画の「クー」のおじぎで通じ合えたら楽しいだろうなぁ。

posted on 2004/05/19
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
CINEMA

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

監督:ピーター・ジャクソン
THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING [ 2003年 ニュージランド・アメリカ ]
終わった。映画作品として、究極の3部作だったと思う。上映期間が終わりそうだったけど、劇場へ観に行って本当に良かった。過去2作のストーリーを思い出しながらの鑑賞ではあったけど、いざ映画が展開していくと心が打ち震えるシーンの連続で、スクリーンに全て飲み込まれてしまう感覚で圧倒されっぱなし。戦闘シーンの迫力と映像美の素晴らしさと言ったら、それだけで泣けてしまうほど。徹底的にやり抜いた表現者の情熱とロマンと勇気に惜しみない拍手を。未公開シーンをたっぷり加えて再編集した完全版がそのうち出るだろうから、細かいところはそっちでまた堪能したい。

posted on 2004/05/16
スクール・オブ・ロック
CINEMA

スクール・オブ・ロック

監督:リチャード・リンクレイター
SCHOOL OF ROCK [ 2003年 アメリカ ]
ジャック・ブラック、アッチョンブリケー!な最高傑作。ガチガチに規律厳しい私立学校の子供たち(現場では音楽コンサルタントを担当したジム・オルーク直伝の教育を受けた精鋭子供バンド!)にロックのすべてを情熱たっぷりに闘魂注入しまくるという、ジャック・ニコルソンばりの怪演でひたすら楽しませてくれる完璧なハマリ役。ロック好きにはたまらないのは当たり前で、観る人を問わない普遍的な面白さが詰まったこの映画をカルトなもので終わらせるのはあまりに勿体無い。頼りない友人役でもあったマイク・ホワイトの脚本も素晴らしく、散々笑わしてくれるものの、ジャック・ブラック先生が放つセリフはストレートに心を打ち抜くものばかりだ。さらばハリー・ポッター。熱血感動、血行促進。大人も子供もロックにトキメくこと間違いなし。エンドロールまで必見です。

posted on 2004/05/09
トーク・トゥ・ハー
CINEMA

トーク・トゥ・ハー

監督:ペドロ・アルモドバル
HABLE CON ELLA [ 2002年 スペイン ]
変態開放路線とでもいうか、そんな独自のスタイルを確立してきたアルモドバルも、近年はだんだんとシリアス路線の作品を発表している。前作『オール・アバウト・マイ・マザー』と今作で連続してアカデミー賞を獲得するなど、評価と知名度も世界的なレベルに達した巨匠といってもいいかもしれない。個人的には『オール・アバウト・マイ・マザー』があまりフィットしなかったのだが(『ライブ・フレッシュ』も素晴らしかったけど、やはり『キカ』あたりまでの作品が好きだ)、今作はグッと見入ってしまいました。アルモドバルらしい異常性愛を描いてはいれど、変態性というより、人間の性そのものを深く見つめた傑作。

posted on 2004/05/08
テープ
CINEMA

テープ

監督:リチャード・リンクレイター
TAPE [ 2001年 アメリカ ]
『スクール・オブ・ロック』でついにメジャーでも決定打を放ったリチャード・リンクレイター監督が、ちょっと前に低予算で撮りあげた注目の一本。イーサン・ホーク、ロバート・ショーン・レナード、ユマ・サーマンの3人のみのキャストで、とあるモーテルの一室のみで描かれる密室劇。同級生が久々の再会を果たし、かみ合っているようでかみ合ってないような微妙な間合いの会話が同じ時間軸で進行していくという、焦らしの展開ではあるのだが、3人の確かな演技力と、リンクレイター本人が時間を掛けたというだけのことはある巧みな編集裁きでもって、緊張感と興味を失うことなく、最後まで楽しむことができた。ドラッグでハイになりっぱなしのイーサン・ホークと過去のレイプを告白するロバート・ショーン・レナードに、かつて『いまを生きる』で共演した二人だけに、時の流れを感じてしまう。

posted on 2004/05/04
aiko [ 2004.04.28. 日本武道館 ]
LIVE

aiko [ 2004.04.28. 日本武道館 ]

ツアー最終日として、これほど幸福なものもないだろうと思えるほど、ものすごいテンション、ものすごいノリノリ、ものすごい一体感で、ものすごいエネルギーが充満していた日本武道館。飛び交う声援を受け止め、カツゼツ良く、ゆうに30分はしゃべってたかもしれないが、ファンとの距離を近いものに印象付けるaikoの姿勢は本当にひたむきなるもので、彼女の強みに思えるのだった。インディーズ時代の初期の曲までフォローするなど、いつまでも初心忘れずという新鮮な気持ちを大事にしているような、だからこそ恋の歌があんなにも生まれてくるのだろう。単に作曲能力が高いだけではなく、幅広く大衆に受け入れられる彼女のポップソングを生み出す才能は、桑田佳佑や松任谷由実にも並ぶ、怪物的スケールを持った21世紀の天才だと思う。

set list
1.彼の落書き 2.桜の時 3.愛の病 4.帽子と水着と水平線 5.夢のダンス 6.アンドロメダ 7.蝶々結び 8.えりあし 9.メドレー(赤い靴〜傷跡〜more&more〜マント〜終わらない日々〜ひまわりになったら〜September) 10.白い服黒い服 11.be master of life 12.相合傘(汗かきmix) 13.ジェット 14.イジワルな天使よ 世界を笑え!
encore
15.かばん 16.天の川
posted on 2004/05/02
TOMMY AIRLINE / TOMMY FEBRUARY6
ALBUM

TOMMY AIRLINE / TOMMY FEBRUARY6

昨年出たペット・ショップ・ボーイズのベスト盤『POPART』は、ド頭から「GO WEST」という「POP」盤と「WEST END GIRLS」などが収録されている「ART」盤に分かれた2枚組だった。エレポップリバイバルの象徴となったトミー・フェブラリーにとっての大大大傑作ファーストは言うなれば「POP」で、今回のセカンドは「ART」なんだと思う。チアリーダースタイルでカモフラージュされていた、手強いメガネっ娘としての知性と毒っ気が発揮されつつあるような雰囲気が感じられる。まさにトミーの風格といったところか。さすがであります。

posted on 2004/04/28
カフェ・オ・レ
CINEMA

カフェ・オ・レ

監督:マチュー・カソヴィッツ
METISSE [ 1993年 フランス ]
いまとなっては『アメリ』が恋する男役で有名になったマチュー・カソヴィッツの監督デビュー作。監督作では『憎しみ』のイメージが強いため気鋭の社会派に捉えられがちだが、この作品は実に楽しいラブコメであります。マチュー・カソヴィッツ本人も『アメリ』に通じるチャーミングな役柄を好演。彼が演じる集合住宅に暮らす白人(ユダヤ人)と外交官一家のおぼっちゃまの黒人。その彼らを二股していた共通のガールフレンドが妊娠を告白したことで、てんやわんやの三角関係が描かれていく。恋愛模様に人種を絡めた、ある意味『憎しみ』にもつながる内容はなかなか鋭く、カフェ・オ・レという邦題はなるほど!と思ってしまった。『憎しみ』よりも、こっちを勧めるようにしましょう。ヴァンサン・カッセルも出ています。

posted on 2004/04/27

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