SMASH THE SYSTEM (singles and more) / SAINT ETIENNE
最近、CD屋さんにセイント・エチエンヌの新譜らしきものが置いてあると思ったら、それはアメリカ向けの彼らのベスト盤でした。まあでも今更ながらもセイント・エチエンヌが割と好きなので、もっと評価されていてもいいのになぁ、とも思うわけです。割と好き、という物言いが微妙なニュアンスに取られかねないですが、割と好き、という感じが実によく当てはまってしまうから仕方がない。そんなわけで新しいのに限らずいろいろ出ている彼らのベスト盤ですが、個人的には新しいやつより2001年版の2枚組ベスト盤『SMASH THE SYSTEM』をオススメします。1990年のデビューから1999年までの軌跡がたっぷり詰まっていますが、この変わらない一貫した音楽スタイルは何なのでしょうか。当時は何も考えずに聴いてましたが、こうして振り返ってみると、結構すごいことのように思えてきます。メロディ・メイカー誌出身がいるだけに、メロディ・メイカーとしても実は素晴らしいポップチューンだらけ。その昔、ライブはカラオケという評判を聞いたものですが、スパンク・ハッピーよりずっと以前にそんなライブを堂々とやっていたというだけでも、再評価されてしかるべきかもしれません。そろそろ日本にも来てくれないかなぁ。今こそライブが観たい。
列車に乗った男
監督:パトリス・ルコント
L’HOMME DU TRAIN
2002年 フランス・ドイツ・イギリス・スイス
そのタイトル(邦題)からして、ヴィム・ヴェンダース初期のロードムービーのようなものを期待してしまいましたが、列車のカットはオープニングしかなくて、とんだアテ外れでありました。しかしながら、とある田舎町の駅で列車を降りた男(物静かな銀行強盗)と、その町に住むひとり暮らしの老紳士(銀行強盗を夢見る元学校教師)という、地味渋に描かれる男ふたりの短い友情物語は、かつて『タンデム』という作品がルコントにはありましたが、ユーモアのエッセンスも含めた哀愁がやたら切なくさせる良作だったと思います。
殺人の追憶
監督:ポン・ジュノ
MEMORIES OF MURDER
2003年 韓国
実際にあった未解決の連続婦女強姦殺人事件をもとに描かれた作品。韓国の田舎の風景と住民をのどかにユーモラスに見せて和ませつつ、次第にシリアスになっていく状況に引き込まれていく。手がかりらしい手がかりもなく、唯一犯人の可能性のある容疑者を問い詰める警官の姿は『セブン』のブラッド・ピットを思わせる極限の苦悩があった。実話通り事件の解決には至らぬも、おおいに見応えのある力強い作品だ。
奥田民生 [ 2004.10.30. 広島市民球場 ]
広島の音楽家の夢。ソロデビュー10周年の偉業ライブ。前人未到、念願の広島市民球場でのひとり股旅スペシャル。天気予報はあきらめるしかない降水確立90%の雨。前日にKOBさんから「座席を拭くものも含めて、雨対策もお忘れなく」というメールをもらい、同時にひのさんから「きっと夕方にはやむでしょう。かならず」というメールをもらった。当日、雨ガッパに折り畳み傘を持参して小雨降る東京から新幹線で駆けつけると、広島はまさかの晴れ。あっぱれひのさんの予言的中。何はともあれ、素晴らしいコンディション。広島カープ大野豊投手の引退試合以来だというくらい、見事に埋まりきった客席スタンド。始まる前から会場のマジックがあふれる感じが凄かった今日の広島市民球場。この雰囲気はもはやライブの感覚ではなく、野球の試合観戦そのもののようで、民生は決して球場を汚さない、野球の方法でコンサートを実行したのだった。ウグイス嬢のアナウンス紹介でバックスタンドから登場し、審判のプレイボールの掛け声で始まり、ジェット風船での応援やブルペンカーに乗っての再登場。最後は優勝セレモニーそのものの場内パレードに歓喜の胴上げ。奥田民生にとって、民生ファンにとって、広島にとって、本当にかけがいのない忘れられない誇りに思える一大イベントだった。いつになく気合の入った民生が珍しく二度もギターの弦を切ったことが、とても印象的だった。美しく燃えた広島よ、ありがとう。お世話になったみなさん、本当にどうもありがとう。またいつか行こうと思った。
1.ふれあい 2.荒野を行く 3.新曲 4.スカイウォーカー 5.ブルース 6.羊の歩み 7.野ばら 8.たったった 9.イオン 10.アーリーサマー 11.桜の季節(フジファブリック) 12.君という花(ASIAN KUNG-FU GENERATION) 13.最後のニュース(井上陽水) 14.最初から今まで(冬のソナタ・RYU)
〜休憩・それ行けカープ(若き鯉たち)〜
15.唇をかみしめて(吉田拓郎) 16.人間 17.The STANDARD 18.息子 19.MOTHER 20.ラーメンたべたい(矢野顕子) 21.陽 22.人ばっか10.30 23.青春 24.花になる 25.イージュー★ライダー 26.さすらい
encore 1
27.すばらしい日々
encore 2
28.冬のソナタ 29.CUSTOM
NEVER DIE! 4 [ 2004.10.24. 新宿ロフト ]
出演:THE ZOOT16、スチャダラパー
渡辺俊美のTOKYO NO.1 SOUL SETではない方のバンド、ZOOT16のアルバムリリース記念のような今回のイベント。早々と登場したのは、実は今回が初めて観るスチャダラパー。場所がロフトなだけに、かなり間近に観てしまった。休憩中は横をBOSEやアニが通ったりしてたし。ライブでは最終兵器と呼ばれていたロボ宙を加えた3MC1DJの布陣で盛り上げる踊らせる叫ばせる笑わせる。曲はほとんど最新作『THE 9TH SENSE』からだったけど、思いっきり楽しかったです。ラップMCのプロであり、ライブMCのプロでもあるベテランの実力をさらりと見せつけてくれました。合間のおしゃべりだけでも飽きないなぁ。時間が1時間もなかったのであっという間ですよ。次こそ単独公演に行くぞ! その後のZOOT16は事情により途中で退場。年末のソウルセットは観に行きたいです。
1.2TRUE 2.EXTRAエクストラ 3.Where ya at? 4.ワイルドカード 5.R.U.Ready? 6.FUN-KEY4-1 7.ミュータントディスコ 8.LET IT FLOW 9.LET IT FLOW AGAIN 10.スキマチック
チェ・ゲバラ 人々のために
監督:マルセロ・シャプセス
CHE, UN HOMBRE DE ESTE MUNDO
1999年 アルゼンチン
10月9日はチェ・ゲバラの命日だった。革命家としての思想に決定的な影響を与えた南米各国を旅した若き日のチェを描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、是非とも観たい映画のひとつだが、そもそも彼とは何者なのかを知っておくにはちょうどいいドキュメント作品。生前の彼を知る、ともに闘い、間近で接してきた者たちによる証言の数々。キューバでの革命が成功後も安住の道を選ばず、つねに現場へと身を投じ、民衆の解放を信念として生きたがために、最後はボリビアで無残な死を遂げてしまったチェ・ゲバラ。しかし、だからこそ厚く信頼され、真のリーダーとしての魅力は、ジョン・レノンをして「あの頃世界で一番かっこいいのがゲバラだった」と言わしめたほど、彼の死後衰えることはない。
朝霧JAM [ 2004.10.02-03. 朝霧アリーナ ]
今年はまともに観たのがロン・セクスミスだけだった、というユルさにますます拍車がかかった朝霧JAM。朝の集合時には暑いほどの日差しだったものの、北山工業団地の駐車場に着いてしばらくするころには太陽の元気も無くなり、暗くなりだしたころには小雨がぱらつき、宿に戻って夜中から二日目はザーザー降りの豪雨という、見事に急降下していった天候のおかげで、今年は去年ほどイベントを満喫するに至らなかったのは凄く残念。しかしながら、そんな大雨により旅の仲間全員の意思が一致して二日目を行かないことに決めて、富士宮焼きそばを市内のちっちゃい食堂(佐野食堂)にて食して帰るという、諦めが潔いのも朝霧らしいかなとも思える。まあ天候は天候で仕方なくも、とにかく食って飲んでと楽しかったです。ただし、駐車場と会場を結ぶバス輸送のシステムの悪さだけは、相当頭に来たので、ここの部分の改善はしっかりやってくれないと、愛想尽かされるだろう。待ちがひどくて2時間かかるなんて、冗談じゃないぞ。会場は今年はDJステージエリアが巨大で、かなり良いところだったと思う。それだけにファットボーイ・スリムには息子の運動会か知らないが、帰国させずにスケジュールをなんとかしてもらって、出演させた方が良かったんじゃなかろうか。発表されるメンツの段階で、もう少し盛り上がれる印象が与えられれば、もっといいのになぁ。今年はやはりコレしか前で観てないということもあり、ロン・セクスミスが素晴らしく良かった! 雨天だったものの、野外で堪能する醍醐味は十分味わえたと思う。あとモグワイもいつになく音が通っていて、なんか感動的だった。爆音がいいのかも知らんが、前に観たのは爆音すぎてイヤだったので、今回のは凄くよかったなぁ。旅の仲間の「いつまでも前奏みたいで素敵」とは、よく言ったものだと思う。
岡村靖幸 [ 2004.09.09. ZEPP TOKYO ]
9年振りの新作『Me-imi』を発表し、ファンも業界も岡村ちゃん本人も本当の復活の手応えを掴んでの1年振りのライブツアー初日。この1年の充実振りは『Me-imi』の出来映えに早くも表れていたので、昨年のライブのような客として構える緊張感は薄かったものの、岡村ちゃんのニコニコした顔が印象的な全員で岡村ワールドを楽しく分かち合う、そんなライブだった。初日のせいか、前半は音がデカすぎて特に岡村ちゃんのボーカルがバリバリつぶれて耳に悪かったのが残念だったが、それでもお客さんの反応を確かめながら楽しそうに歌い踊る岡村ちゃんを観てると、どうにも楽しくなってしまう。体型は変わらずでもスタミナがついたのか、メンバーソロ演奏コーナーや着替えによる岡村ちゃん休憩時間は若干短縮され、ダンスの身のこなしも昨年以上に軽くなってました。今の岡村ちゃんは今の岡村ちゃんで年相応に風格あって、もう違和感ないような、青春を歌ってもむしろ凄い説得力があったりして、ますますこれからが楽しみであります。無難なロックじゃ楽しくない。今回のツアーも必見です!
1.5!! モンキー 2.19(nineteen) 3.家庭教師 4.ア・チ・チ・チ 5.聖書 6.モン-シロ 7.ステップUP↑ 8.カルアミルク 9.adventure 10.ハレンチ
〜intermission〜
11.ミラクルジャンプ 12.JUMPING JACK FLASH 13.Check Out Love 14.だいすき 15.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう
encore
16.弾き語り〜友人のふり 17.真夜中のサイクリング 18.(E)na 19.愛してくれない〜ハッピーウェディング 20.Out of Blue
CODE46
監督:マイケル・ウィンターボトム
CODE46
2003年 イギリス
最近特に精力的に作品を量産しているようなウィンターボトム監督の最新作。記憶に新しい『24アワー・パーティ・ピープル』は前々作にあたるようで、前作『イン・ディス・ワールド』の存在をすっかり忘れてました。今作は彼にとって初のSF作品ということで、日本では突然公開された感もありますが、一応世界のメディアではなかなか評判のようであります。しかし、やはりイギリス映画。SFという方面を期待するには、あっさりしているというか、お金かかってないなぁと思ってしまいました。SFラブストーリーという総合面で観ますと、悪くはなかったのですが、サマンサ・モートンがほとんど坊主頭なところも含めて(演技はさすがだったと思うが)、ジョージ・ルーカスの『THX-1138』にかなり近いものを感じてしまいました。劇中の管理された都市(上海)からアラブ世界へ逃避行をするわけですが、今までも『ウェルカム・トゥ・サラエボ』でのボスニアや『イン・ディス・ワールド』でのアフガニスタンなど、ドキュメント出身のウィンターボトムらしい行動の早さ、映像作家としての姿勢は立派だと思う。
NY式ハッピー・セラピー
監督:ピーター・シーガル
ANGER MANAGEMENT
2003年 アメリカ
これは『パンチドランク・ラブ』第2章ってことなのか。内向的でストレスを抑えこみすぎてしまうがために、突然ブチ切れて時々泣きたくなってしまう男を『パンチドランク・ラブ』で切なく演じたアダム・サンドラーですが、今作の役でもそのキャラクターのほとんどを引き継いでいて、当然のごとくイイのです。加えて共演のジャック・ニコルソンとのコンビがコワいくらい大当たりの面白さ! 基本的に負けを認めない、謝らないアメリカ社会に生きる人たちは、映画のエンドクレジットでローリング・ストーンズの「19回目の神経衰弱」が流れてたけど、精神ストレスって相当レベルでありそうに思えてしまう。