テープ
監督:リチャード・リンクレイター
TAPE
2001年 アメリカ
『スクール・オブ・ロック』でついにメジャーでも決定打を放ったリチャード・リンクレイター監督が、ちょっと前に低予算で撮りあげた注目の一本。イーサン・ホーク、ロバート・ショーン・レナード、ユマ・サーマンの3人のみのキャストで、とあるモーテルの一室のみで描かれる密室劇。同級生が久々の再会を果たし、かみ合っているようでかみ合ってないような微妙な間合いの会話が同じ時間軸で進行していくという、焦らしの展開ではあるのだが、3人の確かな演技力と、リンクレイター本人が時間を掛けたというだけのことはある巧みな編集裁きでもって、緊張感と興味を失うことなく、最後まで楽しむことができた。ドラッグでハイになりっぱなしのイーサン・ホークと過去のレイプを告白するロバート・ショーン・レナードに、かつて『いまを生きる』で共演した二人だけに、時の流れを感じてしまう。
aiko [ 2004.04.28. 日本武道館 ]
ツアー最終日として、これほど幸福なものもないだろうと思えるほど、ものすごいテンション、ものすごいノリノリ、ものすごい一体感で、ものすごいエネルギーが充満していた日本武道館。飛び交う声援を受け止め、カツゼツ良く、ゆうに30分はしゃべってたかもしれないが、ファンとの距離を近いものに印象付けるaikoの姿勢は本当にひたむきなるもので、彼女の強みに思えるのだった。インディーズ時代の初期の曲までフォローするなど、いつまでも初心忘れずという新鮮な気持ちを大事にしているような、だからこそ恋の歌があんなにも生まれてくるのだろう。単に作曲能力が高いだけではなく、幅広く大衆に受け入れられる彼女のポップソングを生み出す才能は、桑田佳佑や松任谷由実にも並ぶ、怪物的スケールを持った21世紀の天才だと思う。
1.彼の落書き 2.桜の時 3.愛の病 4.帽子と水着と水平線 5.夢のダンス 6.アンドロメダ 7.蝶々結び 8.えりあし 9.メドレー(赤い靴〜傷跡〜more&more〜マント〜終わらない日々〜ひまわりになったら〜September) 10.白い服黒い服 11.be master of life 12.相合傘(汗かきmix) 13.ジェット 14.イジワルな天使よ 世界を笑え!
encore
15.かばん 16.天の川
TOMMY AIRLINE / TOMMY FEBRUARY6
昨年出たペット・ショップ・ボーイズのベスト盤『POPART』は、ド頭から「GO WEST」という「POP」盤と「WEST END GIRLS」などが収録されている「ART」盤に分かれた2枚組だった。エレポップリバイバルの象徴となったトミー・フェブラリーにとっての大大大傑作ファーストは言うなれば「POP」で、今回のセカンドは「ART」なんだと思う。チアリーダースタイルでカモフラージュされていた、手強いメガネっ娘としての知性と毒っ気が発揮されつつあるような雰囲気が感じられる。まさにトミーの風格といったところか。さすがであります。
カフェ・オ・レ
監督:マチュー・カソヴィッツ
METISSE
1993年 フランス
いまとなっては『アメリ』が恋する男役で有名になったマチュー・カソヴィッツの監督デビュー作。監督作では『憎しみ』のイメージが強いため気鋭の社会派に捉えられがちだが、この作品は実に楽しいラブコメであります。マチュー・カソヴィッツ本人も『アメリ』に通じるチャーミングな役柄を好演。彼が演じる集合住宅に暮らす白人(ユダヤ人)と外交官一家のおぼっちゃまの黒人。その彼らを二股していた共通のガールフレンドが妊娠を告白したことで、てんやわんやの三角関係が描かれていく。恋愛模様に人種を絡めた、ある意味『憎しみ』にもつながる内容はなかなか鋭く、カフェ・オ・レという邦題はなるほど!と思ってしまった。『憎しみ』よりも、こっちを勧めるようにしましょう。ヴァンサン・カッセルも出ています。
MOVIETONE / マヘル・シャラル・ハシュ・バズ [ 2004.04.18. 国立地球屋 ]
国立はマヘルの工藤さんが昔住んでいたか何かで馴染みがあったらしく、古い友人とおぼしき子連れの客がいるなど、ほんとはもっとのんびりアットホームなパーティにしたかったのかもしれないが、幸か不幸か、ちっちゃな飲み屋らしき会場では入場制限せざるを得ないほど人が来てしまった。そんな混乱で開演前から随分もたついた中、長引いたリハーサルの流れでマヘルがスタート。あまりに窮屈で演奏を楽しむのに身が入らないながらも、マヘルらしい独特のアンサンブルで空気を和ませてくれるのだった。マヘルが終わると、ようやく会場にも余裕ができて、腰を落ち着けてMOVIETONEを楽しむことができた。ブリストル出身の彼らは日本が初めてだったらしく、ツアー中あらゆることに驚いていたらしいが、ここでは僕らが彼らのライブパフォマンスの素晴らしさに驚かされるのだった。繊細に奏でられる一音一音が緊張を保ったままダイレクトに響いてくる。実に巧い。終演後は久々に会う人達と談笑。ツアーお疲れ様でした。
1.かいぶつは... 2.SUSPENDED SEASON 3.過去の、知られていない幸福 4.一橋大学構内の朝の歌 5.夏 6.鎌倉 7.OPEN FIELD 8.エチオピア
RADIOHEAD [ 2004.04.17. 幕張メッセ ]
ファーストアルバム『パブロ・ハニー』が93年だから、もう10年以上になる。金髪で長髪だったトムが懐かしい。そんな10年来親しんできたバンドが、また来日してくれるのは本当に嬉しいことだと思う。ステージセットも含めて、昨年のサマーソニックのときと内容はあまり変わらない印象だった今回の来日公演。それでも彼らは素晴らしくカッコいい。カッコいいレディオヘッドの写真を撮りたいのは分からんでもないが、携帯で撮ってもロクに写らないだろう。恥ずかしいだけじゃないのか? 会場の幕張メッセが寸分の狂いもなく思いっきりフラットな床面だったため、Bブロックの後ろで見るにはあまりにステージが見えづらい。音響も場所によってかなりつらいので、最初の2曲くらいはあちこち移動して聴きやすい場所を探すのだった。女の子の大半は身長差のため遥か彼方の幅がちょろっとしかないケチくさかったスクリーンを確認するのが精一杯だったのではないだろうか。この状況は酷すぎる。よくもまあこんな中途半端な環境をセッティングしてくれたものだ。これがすべて同一料金で売られているのは犯罪的だ。CCCDや輸入権の問題が最近いろいろと疑問視され失望と怒りの声が聞こえてきているが、ライブの現場でも音楽を提供するプロとは言い難い仕事でうやむやにされてしまいそうな、そういう危機感を抱いてしまった。エヴリシング・イズ・ブロークン、エヴリワン・イズ・ブロークン、アンコールで演奏された「PLANET TELEX」は最高に嬉しかった。
1.2+2=5 2.MYXOMATOSIS 3.WHERE I END AND YOU BEGIN 4.LUCKY 5.JUST 6.THE GLOAMING 7.SAIL TO THE MOON 8.I MIGHT BE WRONG 9.GO TO SLEEP 10.YOU AND WHOSE ARMY? 11.LIKE SPINNING PLATES 12.CLIMBING UP THE WALLS 13.THE NATIONAL ANTHEM 14.FAKE PLASTIC TREES 15.SIT DOWN. STAND UP 16.PARANOID ANDROID 17.THERE THERE
encore 1
18.WE SUCK YOUNG BLOOD 19.KARMA POLICE 20.IDIOTEQUE 21.HOW TO DISAPPEAR COMPLETELY
encore 2
22.PLANET TELEX 23.EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE
アダプテーション
監督:スパイク・ジョーンズ
ADAPTATION
2002年 アメリカ
センセーションを巻き起こした『マルコヴィッチの穴』再びの監督&脚本家によるコンビ第2作。脚本家チャーリー・カウフマンがなんと自分自身役を登場させる飛び技でもって、『マルコヴィッチの穴』で成功と名声を得た後の新作の脚本がうまく書き進められないスランプで悩み苦しむストレスをヤケクソで描いているように見えて、なんのこれしきチャーリー・カウフマンはやはりタダモノではないなと唸らずにはいられない映画でありました。現実世界の状況がいつしかファンタジーゾーンに入り込んでいる巧みな展開で、不思議な感覚に魅せられます。本人役が映画の中で動いているだけに、チャーリー・カウフマンの双子の弟ドナルド(ニコラス・ケイジの二役)なんて、途中まで半信半疑ながらも実在するのだろうなと思っちゃいますよ。脚本ばかりに焦点が当てられがちですが、役者も監督も力量ほとぼしる立派な仕事っぷりで、スパイク・ジョーンズのこだわりが炸裂してたオープニングは本当に素晴らしかった。
ブロンド・ライフ
監督:スティーブン・ヘレク
LIFE OR SOMETHING LIKE IT
2002年 アメリカ
アンジェリーナ・ジョリーの美女っぷりを確認するにはもってこいの一本。「一週間後に死ぬ」という予言を聞いてしまった彼女が、残りわずかな人生をどうやり抜くか、その苦悩と行動を描いた、ちょっとシリアスだったりするラブコメ。似たようなので、医者に余命わずかという話を勝手に聞き違えて、人間変わったように奮闘する『天国に行けないパパ』というのもありましたね。彼女に関しては初期の2本、独特の風貌が魅力的に思えた『サイバーネット』、元夫ビリー・ボブ・ソーントンと結ばれるに至った『狂っちゃいないぜ』、この2本がやっぱり良いですが、今作も『陽のあたる教室』『ビルとテッドの大冒険』のスティーブン・ヘレク監督らしい、良作です。
僕の妻はシャルロット・ゲンズブール
監督:イヴァン・アタル
MA FEMME EST UNE ACTRICE
2001年 フランス
『愛を止めないで』と『ラブetc.』で共演したふたりが結婚したときは「えっ!?」と動揺にも似た驚きを発したのも、今は昔。夫イヴァン・アタルが監督し、まんま夫婦役というか、ほぼ自分を演じているかのようなこの作品ですが、昨今のフランス映画の中では断トツに面白い。盲目的に夫婦だけで盛り上がっているカスみたいな映画が多々あるなかで、妻シャルロットの映画撮影を発端に、二人のスレ違いが赤裸々に描かれていく様に、逆にこっちがハラハラしてしまうほど。もちろん話は全部フィクションなんだけど、共演者テレンス・スタンプに嫉妬しまくりのイヴァン・アタルが最高に面白くて楽しませてくれる。シャルロットの方もリュディヴィーヌ・サニエにちょっと嫉妬したりと、まあ二人がお互い嫉妬しあうというのはアツアツってことのようで、よろしいのではないかと。
石野卓球カラオケリサイタル [ 2004.04.04. タワーレコード渋谷店 STAGE ONE ]
インストアイベントをやれば確実にここのお店で400枚は売れるという営業話に乗って催された石野卓球カラオケリサイタル。CD買ってくれたとはいえ、タダなんだから何も期待するな、ただの余興だから終わってから文句を言わないように、伝説とか生まれないから、と念を押しまくって始まったものの、異色の空気に包まれてステージに立ってしまっている状況が生んだ、卓球の芸人としてのカラーが濃厚に放出された、それはそれは楽しくて幸福な体験となったのでした。JOYSOUNDが提供するカラオケにのって歌を披露していく合間に、アメちゃん、ノベルティライター、特製ゴザといったプレゼントコーナーや水の音、雷の音といったアンビエントのコーナーで場をつなぎ、シャンペン一本空けてしまう酒の勢いでもって駆け抜けていくショータイム。歌はどれも恥ずかしがりながらも熱唱で、今日のイチ押し「俺は絶対テクニシャン」は歌いたくてもカラオケになかったがために、わざわざ自分で作ってきたという念の入れよう。日本最高学歴ミュージシャンと紹介して歌った小沢健二の歌では「仔猫ちゃ〜ん!!」と絶叫。オープニングこそ新作からのシングル「THE RISING SUNS」のPVを流したものの、新作と全く関係ないことをイベントでやってくれる卓球が大好きだ。
1.LET'S DANCE(DAVID BOWIE) 2.俺は絶対テクニシャン(ビートたけし) 3.DE DO DO DO, DE DA DA DA/日本語バージョン(THE POLICE) 4.シティ・コネクション/アカペラ(エマニエル坊や) 5.Mr.BOO! インベーダー作戦(サミュエル・ホイ) 6.ぼくらが旅に出る理由(小沢健二)
encore
7.俺は絶対テクニシャン(ビートたけし)