MOVIETONE / マヘル・シャラル・ハシュ・バズ [ 2004.04.18. 国立地球屋 ]
国立はマヘルの工藤さんが昔住んでいたか何かで馴染みがあったらしく、古い友人とおぼしき子連れの客がいるなど、ほんとはもっとのんびりアットホームなパーティにしたかったのかもしれないが、幸か不幸か、ちっちゃな飲み屋らしき会場では入場制限せざるを得ないほど人が来てしまった。そんな混乱で開演前から随分もたついた中、長引いたリハーサルの流れでマヘルがスタート。あまりに窮屈で演奏を楽しむのに身が入らないながらも、マヘルらしい独特のアンサンブルで空気を和ませてくれるのだった。マヘルが終わると、ようやく会場にも余裕ができて、腰を落ち着けてMOVIETONEを楽しむことができた。ブリストル出身の彼らは日本が初めてだったらしく、ツアー中あらゆることに驚いていたらしいが、ここでは僕らが彼らのライブパフォマンスの素晴らしさに驚かされるのだった。繊細に奏でられる一音一音が緊張を保ったままダイレクトに響いてくる。実に巧い。終演後は久々に会う人達と談笑。ツアーお疲れ様でした。
1.かいぶつは... 2.SUSPENDED SEASON 3.過去の、知られていない幸福 4.一橋大学構内の朝の歌 5.夏 6.鎌倉 7.OPEN FIELD 8.エチオピア
RADIOHEAD [ 2004.04.17. 幕張メッセ ]
ファーストアルバム『パブロ・ハニー』が93年だから、もう10年以上になる。金髪で長髪だったトムが懐かしい。そんな10年来親しんできたバンドが、また来日してくれるのは本当に嬉しいことだと思う。ステージセットも含めて、昨年のサマーソニックのときと内容はあまり変わらない印象だった今回の来日公演。それでも彼らは素晴らしくカッコいい。カッコいいレディオヘッドの写真を撮りたいのは分からんでもないが、携帯で撮ってもロクに写らないだろう。恥ずかしいだけじゃないのか? 会場の幕張メッセが寸分の狂いもなく思いっきりフラットな床面だったため、Bブロックの後ろで見るにはあまりにステージが見えづらい。音響も場所によってかなりつらいので、最初の2曲くらいはあちこち移動して聴きやすい場所を探すのだった。女の子の大半は身長差のため遥か彼方の幅がちょろっとしかないケチくさかったスクリーンを確認するのが精一杯だったのではないだろうか。この状況は酷すぎる。よくもまあこんな中途半端な環境をセッティングしてくれたものだ。これがすべて同一料金で売られているのは犯罪的だ。CCCDや輸入権の問題が最近いろいろと疑問視され失望と怒りの声が聞こえてきているが、ライブの現場でも音楽を提供するプロとは言い難い仕事でうやむやにされてしまいそうな、そういう危機感を抱いてしまった。エヴリシング・イズ・ブロークン、エヴリワン・イズ・ブロークン、アンコールで演奏された「PLANET TELEX」は最高に嬉しかった。
1.2+2=5 2.MYXOMATOSIS 3.WHERE I END AND YOU BEGIN 4.LUCKY 5.JUST 6.THE GLOAMING 7.SAIL TO THE MOON 8.I MIGHT BE WRONG 9.GO TO SLEEP 10.YOU AND WHOSE ARMY? 11.LIKE SPINNING PLATES 12.CLIMBING UP THE WALLS 13.THE NATIONAL ANTHEM 14.FAKE PLASTIC TREES 15.SIT DOWN. STAND UP 16.PARANOID ANDROID 17.THERE THERE
encore 1
18.WE SUCK YOUNG BLOOD 19.KARMA POLICE 20.IDIOTEQUE 21.HOW TO DISAPPEAR COMPLETELY
encore 2
22.PLANET TELEX 23.EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE
アダプテーション
監督:スパイク・ジョーンズ
ADAPTATION [ 2002年 アメリカ ]
センセーションを巻き起こした『マルコヴィッチの穴』再びの監督&脚本家によるコンビ第2作。脚本家チャーリー・カウフマンがなんと自分自身役を登場させる飛び技でもって、『マルコヴィッチの穴』で成功と名声を得た後の新作の脚本がうまく書き進められないスランプで悩み苦しむストレスをヤケクソで描いているように見えて、なんのこれしきチャーリー・カウフマンはやはりタダモノではないなと唸らずにはいられない映画でありました。現実世界の状況がいつしかファンタジーゾーンに入り込んでいる巧みな展開で、不思議な感覚に魅せられます。本人役が映画の中で動いているだけに、チャーリー・カウフマンの双子の弟ドナルド(ニコラス・ケイジの二役)なんて、途中まで半信半疑ながらも実在するのだろうなと思っちゃいますよ。脚本ばかりに焦点が当てられがちですが、役者も監督も力量ほとぼしる立派な仕事っぷりで、スパイク・ジョーンズのこだわりが炸裂してたオープニングは本当に素晴らしかった。
ブロンド・ライフ
監督:スティーブン・ヘレク
LIFE OR SOMETHING LIKE IT [ 2002年 アメリカ ]
アンジェリーナ・ジョリーの美女っぷりを確認するにはもってこいの一本。「一週間後に死ぬ」という予言を聞いてしまった彼女が、残りわずかな人生をどうやり抜くか、その苦悩と行動を描いた、ちょっとシリアスだったりするラブコメ。似たようなので、医者に余命わずかという話を勝手に聞き違えて、人間変わったように奮闘する『天国に行けないパパ』というのもありましたね。彼女に関しては初期の2本、独特の風貌が魅力的に思えた『サイバーネット』、元夫ビリー・ボブ・ソーントンと結ばれるに至った『狂っちゃいないぜ』、この2本がやっぱり良いですが、今作も『陽のあたる教室』『ビルとテッドの大冒険』のスティーブン・ヘレク監督らしい、良作です。
僕の妻はシャルロット・ゲンズブール
監督:イヴァン・アタル
MA FEMME EST UNE ACTRICE [ 2001年 フランス ]
『愛を止めないで』と『ラブetc.』で共演したふたりが結婚したときは「えっ!?」と動揺にも似た驚きを発したのも、今は昔。夫イヴァン・アタルが監督し、まんま夫婦役というか、ほぼ自分を演じているかのようなこの作品ですが、昨今のフランス映画の中では断トツに面白い。盲目的に夫婦だけで盛り上がっているカスみたいな映画が多々あるなかで、妻シャルロットの映画撮影を発端に、二人のスレ違いが赤裸々に描かれていく様に、逆にこっちがハラハラしてしまうほど。もちろん話は全部フィクションなんだけど、共演者テレンス・スタンプに嫉妬しまくりのイヴァン・アタルが最高に面白くて楽しませてくれる。シャルロットの方もリュディヴィーヌ・サニエにちょっと嫉妬したりと、まあ二人がお互い嫉妬しあうというのはアツアツってことのようで、よろしいのではないかと。
石野卓球カラオケリサイタル [ 2004.04.04. タワーレコード渋谷店 STAGE ONE ]
インストアイベントをやれば確実にここのお店で400枚は売れるという営業話に乗って催された石野卓球カラオケリサイタル。CD買ってくれたとはいえ、タダなんだから何も期待するな、ただの余興だから終わってから文句を言わないように、伝説とか生まれないから、と念を押しまくって始まったものの、異色の空気に包まれてステージに立ってしまっている状況が生んだ、卓球の芸人としてのカラーが濃厚に放出された、それはそれは楽しくて幸福な体験となったのでした。JOYSOUNDが提供するカラオケにのって歌を披露していく合間に、アメちゃん、ノベルティライター、特製ゴザといったプレゼントコーナーや水の音、雷の音といったアンビエントのコーナーで場をつなぎ、シャンペン一本空けてしまう酒の勢いでもって駆け抜けていくショータイム。歌はどれも恥ずかしがりながらも熱唱で、今日のイチ押し「俺は絶対テクニシャン」は歌いたくてもカラオケになかったがために、わざわざ自分で作ってきたという念の入れよう。日本最高学歴ミュージシャンと紹介して歌った小沢健二の歌では「仔猫ちゃ〜ん!!」と絶叫。オープニングこそ新作からのシングル「THE RISING SUNS」のPVを流したものの、新作と全く関係ないことをイベントでやってくれる卓球が大好きだ。
1.LET'S DANCE(DAVID BOWIE) 2.俺は絶対テクニシャン(ビートたけし) 3.DE DO DO DO, DE DA DA DA/日本語バージョン(THE POLICE) 4.シティ・コネクション/アカペラ(エマニエル坊や) 5.Mr.BOO! インベーダー作戦(サミュエル・ホイ) 6.ぼくらが旅に出る理由(小沢健二)
encore
7.俺は絶対テクニシャン(ビートたけし)
TITLE#1 / 石野卓球
電気のベストアルバム発売と同じタイミングでリリースとなった卓球のソロアルバム。電気をとりあえず活動停止してから意外と時間が経過してしまっているが、その間のソロ活動の集大成をまとめてリリースする運びとなった第一弾アルバムだ。卓球自身も語っているように、確かに夜のアルバムという印象を受ける。ハイテンションのパーティー仕様ではなく、ひとり部屋でしっくり馴染むやさしい感触。「XTHC」という曲があるほど、ニューウェーブ寄りのサウンドがかなり効いていて、とても気に入っております。
殺人魚フライングキラー
監督:ジェームズ・キャメロン
PIRANHA II : FLYING KILLERS [ 1981年 アメリカ ]
お気楽すぎるB級パニック映画ですが、これこそジェームズ・キャメロンの監督デビュー作なのだ。後に撮り上げた『アビス』や『タイタニック』といった海映画の大作を思えば、ここでの最初の経験も大きかったはず。しかしながら、最後は沈没船を爆破して終わっちゃうのだけど、そんなの全然解決にならんだろうと、その強引さが切なくも可笑しい。ジョーズは一匹だったからわかるけど、突然変異殺人ピラニアはすごくたくさんいるんだもんなぁ。で、この殺人ピラニアなんですが、当局がトビウオとの性質を合体させたという話で、空を飛びまわって人を襲うのです。前代未聞ですよ。しかも、羽と化したヒレをバタつかせると同時に、なぜかヒヨコのようにピヨピヨ音出してて、大笑い。おもしろいよ。
IGGY AND THE STOOGES [ 2004.03.22. 渋谷AX ]
羨望と熱狂。問答無用のイギー・ポップ with ザ・ストゥージズ。こんな小さな会場で観れるだけでも奇跡と言っていいくらいなのに、まさかステージの下に降りて、下手のPA近くで観てた僕の側まで来てくれようとは! 手の届く距離とはまさにこのことか、イギー・ポップ様々の大胸筋あたりをバッチリ触ってしまいました!! ライブで触ったのって、ピエール瀧以来かも。嬉しいなぁ。どういういきさつでストゥージズを再結成したのか、詳しい経緯はわからないが、このステージにイギー・ポップとアシュトン兄弟がいるというのは、なんともファン冥利につきる。サックスのスティーブ・マッケイも登場してたし。もっとも、アシュトン兄弟は年齢相応のおじいちゃん状態だったので、演奏するのに必死だったような感じでしたが、ギターソロも無難にこなしたりと、思いの外大丈夫でした。そこにベーシストとして参加しているのが、マイク・ワットというのも物凄く感慨深いものがあります。彼はオリジナルメンバーではないけれど、生死をさまよった原因不明の病気からの復活をJマスシスのサポートを得てストゥージズのカヴァーライブをやったりしてたので、そんな流れで一緒にやるようになったのかな? Jのライブでも「T.V. EYE」を彼が歌っていたのを思い出してしまいます。今回のバンドに関して、彼のベースは非常に大きい存在だったと思う。顔をブルブルさせながらの超絶プレイは、イギーが最後に体当たりのように抱きついてたけど、本当に最高。曲はファーストとセカンドと最新アルバムからしかやらないという、サードアルバム『RAW POWER』もストゥージズ名義ではあるが、セカンドの『FUN HOUSE』でバンドは一度解散してしまっているわけで、そういうコンセプトの再結成だったのだろう。オリジナルストゥージズとして、30年以上経っても変わらぬ凄まじい信念を叩きつけるのだった。
1.LOOSE 2.DOWN ON THE STREET 3.1969 4.I WANNA BE YOUR DOG 5.T.V. EYE 6.DIRT 7.REAL COOL TIME 8.NO FUN 9.1970 10.FUN HOUSE 11.SKULL RING 12.DEAD ROCK STAR 13.LITTLE ELECTRIC CHAIR
encore
14.LITTLE DOLL 15.IDEA OF FAN 16.I WANNA BE YOUR DOG 17.NOT RIGHT
BONNIE ‘PRINCE’ BILLY [ 2004.03.13. 渋谷NEST ]
guest:テニスコーツ、二階堂和美
ジェフ・ベックのようにいろんな名前のキャリアを持つウィル・オールダムが現在の活動名義、ボニー‘プリンス’ビリーとして、とうとう初来日。最前列で観てしまったのですが、つるつる頭にヒゲもじゃの一度見たら忘れない顔のインパクトがまず凄い。ヒゲを取ったらジョン・マルコヴィッチみたいな感じになるのかな。カントリーをベースにしたスローなロックを朗々と歌い上げるには、ものすごく姿勢が良かったり、足をクロスさせてもやはり真っ直ぐ立ってたりと、独特の孤高な空気をまざまざと堪能。素晴らしかった。札止め超満員となってしまっただけに、もう少しゆとりのある会場でやって欲しかったなぁ。二階堂和美はフォークギター一本かかえて歌っている姿と歌の節回しから、流しの矢野顕子というイメージを持ってしまった。テニスコーツはちょっと久々でしたが、とても刺激的なライブパフォーマンスだったように思う。終演後、植野さんに会ったら「今日は疲れなかったから、全然ダメだった」と言っていた。完全燃焼したいという気持ちがどのように表れてくるのか、今後が楽しみだ。