DAVID BOWIE [ 2004.03.08. 日本武道館 ]
デビッド・ボウイが好きだ、とは以前にも書いたと思うが、改めてまた書きたいと思う。僕はデビッド・ボウイが大好きだぁぁぁ!!! 宮崎の田舎でボウイさんを聴き狂っていた頃から長年思い焦がれてきたマイ・スーパー・スター、マイ・スーパー・ヒロー、デビッド・ボウイ。わが人生28年目の節目となるこの日、ついにその念願のライブを観る時が訪れたのだった。何と言う、運命のめぐり合わせ。まぁしかし、そんな個人的な思い入れを抜きにしても、今回のライブは歴史的公演と断言できる素晴らしすぎるものだったと思う。ウドーの先行予約で買ったチケットは2階席真ん中あたりではあれど、ステージ正面。贅沢言わない。僕には十分すぎる席でございます。映像をバックに登場するオープニングから「愛しき反抗」のギターリフが武道館に轟くと、既に大興奮トランスフォームド状態。2曲目でちょっと我に返った途端、ボウイさんのライブを観ている実感が込み上げてきて、早くも涙するも、「アメリカのすごくいいバンド」と言って始まった、前作『HEATHEN』でカヴァーしたピクシーズの「CACTUS」に熱狂。イギー・ポップを救ったように、ひょっとしてピクシーズの再結成にボウイさんの後押しがあったりするのかも?? 昔から世話好きな人だけにあり得なくはないなぁと思うと、ジギー時代のパートナーでもあったミック・ロンソンのバンド、モット・ザ・フープルに書いた大名曲「すべての若き野郎ども」で劇的に盛り上げ、さらにはイギーとの共作「チャイナ・ガール」を楽しげに披露するという見事な連打。プリンスが始まって早々に「PURPLE RAIN」をキメたときのように、初っ端から、えらいことになってきた。ボウイさんの動きも軽やかで、声も随分若返っている! そんでもって、相変わらず愛嬌たっぷりだし、「ハッハッ」というゴキゲンな笑い声も健在。最新作『REALITY』そのまんまのメンバーという凄すぎるツアーバンドの紹介のあとは、クイーンとのコラボレート曲「UNDER PRESSURE」だなんて、嗚呼。もう涙腺ゆるゆるというのに、これに続くタイミングでの「火星の生活」に完全にノックアウト。歌詞わかっていても歌えないくらい涙があふれ出てしまいました。大好きな「流砂」も聴けたし、大好きな『LOW』から3連発なんて嬉しすぎ! どうなっちゃってんだよぉ〜! あまりに凄い、楽しみの尽きない2時間半の圧倒的なステージ。「ジギーはギターを弾いた」必殺のアンコールが終わっても、武道館の白昼夢にすっかり魂を奪われたまま。現在57歳のボウイさんは、驚異的なキャリアを築いた70年代にも劣らないレベルの状態にあると言っても過言ではないだろう。年を取るのが楽しみだと言うほど充実している現在の勢いとモチベーションなら、再び地球を一周して日本に来てくれる日もきっと近いはず。「私達には5年間しか残されていない/泣くことしかできない/知らせに来た男はそう告げて泣いた/地球はすっかり死んでいる/嘘を言ってるわけではなさそうだ/彼の顔は涙ですっかり濡れている」
1.REBEL REBEL 2.NEW KILLER STAR 3.FAME 4.CACTUS 5.ALL THE YOUNG DUDES 6.CHINA GIRL 7.NEVER GET OLD 8.THE LONELIEST GUY 9.THE MAN WHO SOLD THE WORLD 10.HALLO SPACEBOY 11.SUNDAY 12.HEATHEN (THE RAYS) 13.UNDER PRESSURE 14.LIFE ON MARS? 15.LOOKING FOR WATER 16.QUICKSAND 17.DAYS 18.SOUND AND VISION 19.BE MY WIFE 20.A NEW CAREER IN A NEW TOWN 21.ASHES TO ASHES 22.I'M AFRAID OF AMERICANS 23."HEROES"
encore
24.FIVE YEARS 25.SUFFRAGETTE CITY 26.ZIGGY STARDUST
KRAFTWERK [ 2004.03.03. 渋谷AX ]
夢見心地とはこういうことか。ステージの白いカーテンに4人のシルエットが浮かび上がるニクいほどの演出で会場を埋めた老老老若男男男女のボルテージが一気に沸き立つオープニング。ついに幕が開かれると赤シャツに黒スーツ&タイの人間解体仕様で4人が横並びに立っているという、これはもう本当にたまりません! 『アウトバーン』から30年。オリジナルメンバーはラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーのふたりしか残っていないのが残念でなりませんが、この2000年代になってこれほどまで精力的に活動することになろうとは、コンピューターの進歩がようやくクラフトワークの能力レベルをサポートするまで追いついたということなのかもしれません。ライブはあくまで自分たちのスタジオがライブ会場に置き換わっただけというふうに、SONY VAIOノートのキー操作にほとんど終始するという、本当に突っ立っているだけだったりするのですが、そんな彼らの立ち姿と後方ステージ幅いっぱいの巨大スクリーンの映像と究極の音楽が完璧な構図で一体化している様は、見事としか言いようがなく、とにかく大興奮で圧倒されっぱなし。しかも往年の名曲も惜しげも無く披露され、特に「放射能」では震えるほど感激してしまいました。日本ならではの「電卓」の合唱もあり、嬉しすぎるロボットの登場もあり、面白さ、楽しさでもダントツのライブ体験。まだまだこの日の夢に浸っていたい。
1.INTRO 2.THE MAN-MACHINE 3.PLANET OF VISIONS(EXPO 2000) 4.TOUR DE FRANCE 2003(PROLOGUE〜ETAPE 1〜ETAPE 3〜CHRONO〜ETAPE 2) 5.VITAMIN 6.TOUR DE FRANCE 83 7.AUTOBAHN 8.THE MODEL 9.NEON LIGHTS 10.SELLAFIELD 11.RADIOACTIVITY 12.TRANS-EUROPE EXPRESS〜METAL ON METAL〜ABZUG
encore 1
13.NUMBERS〜COMPUTER WORLD 14.IT'S MORE FUN TO COMPUTE〜HOME COMPUTER 15.POCKET CALCULATOR〜電卓
encore 2
16.THE ROBOTS
encore 3
17.ELEKTRO KARDIOGRAMM 18.AERO DYNAMIK 19.MUSIC NON STOP
黄泉がえり
監督:塩田明彦
[ 2003年 日本 ]
3週間限定公開というささやかな映画作品のつもりが、まさかのロングラン大ヒットで2003年興行収入第4位となる30億7000万円を記録した話題の作品。業界もびっくりのヒットの仕方といい、主題歌もヒットしたことといい、ストーリーの内容といい、これはまさに日本版『ゴースト』ではないか! この映画でいちばんのファンタジーは田中邦衛の娘を伊東美咲が演じていることだと思うのですが、高校のときに観た『ゴースト』がすごく好印象だったように、この『黄泉がえり』もなかなか楽しめました。
ガキ帝国
監督:井筒和幸
[ 1981年 日本 ]
いまやタレント、コメンテーターとして茶の間に浸透している井筒監督の初期作品。若き日の紳助竜介を主役に据えた大阪アウトサイダーグラフィティといった内容で、不良同士によるケンカ映像が絶え間無く繰り広げられる。かなり粗いつくりではあれど、粗さがむしろ時代と映画の空気をより鮮明に描き出している。ヤクザな上岡龍太郎が、少年院あがりの不良という紳助より、ずっとリアルだった。
キラ キラ! / 氣志團
露出、認知、評価、ともに理想的で、バンドとして完成形に至ってしまったのではないかという思いもしていた氣志團が、ここにきて猛烈に素晴らしいシングルを発表してくれた。こんなに本気でカッコいいビートロックを鳴らされては、心にロックを持つリスナーは全員トリコになってしまうだろう。また間奏でヘビメタに転調して銅鑼とか鳴ってるところも最高!! そんなかつてないほど重厚な音圧とともに、綾小路翔のロック・ボーカリストとしての破壊力も見事に引き出した傑作。おおおーっ!!って思わず嬉しくて楽しくて唸ってしまう、このシンプルなわかりやすさは本当に感動的だ。ひょっとしたらミッシェル・ガン・エレファント周辺のファンも巻き込んで、この先さらに氣志團は凄いことになってしまうかもしれない。
宇多田ヒカル [ 2004.02.10. 日本武道館 ]
武道館5日間だけながら、今回ライブを行なった意味はものすごく大きかったのではないだろうか。その事の重大さを噛み締めながら、ほとんどのシングル曲を網羅した素晴らしくて美しいライブに見惚れること約2時間半。デビューライブではスチャダラパーとネプチューンにサポートしてもらった彼女も武道館をひとりで背負って立ち、本当に誠実に観衆と向き合ったパフォーマンスは圧倒的に感動的なるものだった(中でも「SAKURAドロップス」と「Deep River」は息を飲むほど圧巻!)。そうしてアンコールで溢れ出した彼女の涙もまた、もの凄く大きな思いが伝わってきた劇的な瞬間を実感するのだった。この先、アメリカでも化けるのかどうかはわからないが、「次は遠くの地方にも行く!」と約束した彼女を応援する気持ちは変わらないだろう。
1.光 2.traveling 3.Letters 4.Another Chance 5.In My Room 6.Can You Keep A Secret? 7.Addicted To You 8.SAKURAドロップス 9.サングラス 10.甘いワナ 〜Paint It,Black〜 11.Movin' on without you 12.蹴っ飛ばせ! 13.Wait & See〜リスク〜 14.COLORS 15.First Love 16.Deep River 17.DISTANCE 18.嘘みたいなI Love You 19.Automatic
encore
20.幸せになろう 21.B&C
青の炎
監督:蜷川幸雄
[ 2002年 日本 ]
かれこれ6年くらい前の東京に出たての頃、わけもわからず最初にやったアルバイトがイベント会場設営の仕事だったのですが、その流れで半月ほど蜷川幸雄の舞台の裏方で大型セットを動かしたりする仕事もやったりしていたのを思い出す。蜷川幸雄にとって21年振りという映画監督作は貴志祐介原作の同名小説を映画化したもの。日本屈指の人気を誇るアイドル二人を起用したことで話題になったが、松浦亜弥の出演シーンは肩透かしを食らうぐらい限られたもので、映画は嵐の二宮和也で一貫された、彼のひとり芝居状態となっている。そんなひとり芝居が受け入れられるかどうか。脚色の問題か、とにかくセリフの言葉数が多すぎて、そのため演技しすぎな印象を持たれてしまうのが、可哀相といえば可哀相。青春映画なりの若さ、青さは、21年振りという蜷川幸雄自身の映画への新鮮さとともに伝わってくる。
THE LAST GREAT WILDERNESS / THE PASTELS
お久しぶりのパステルズから届けられた新作はデビッド・マッケンジー監督による同名映画のサウンドトラック。わずか30分弱でサントラの性格上インストナンバーがほとんどだけど、これはこれで結構手応えというか聴き応えアリ! ティーンエイジのジェリーさんや我らが日本の工藤冬里といった、地元グラスゴーからレーベルのジオグラフィック関係その他のパステル人脈総動員といえるゲストが満載。そんでもって、共同プロデューサーはジョン・マッケンタイアなわけですが、パステルズならではの音響〜映画スコアアプローチをしっかりフォローしてくれているような、あくまでほんわかムードが心地よいです。ナイスな選曲と言えるカトリーナが歌うスライのカバー「EVERYBODY IS A STAR」と、今回のゲスト軍団ユニットTHE NU FOREST名義でジャービス・コッカーが独特の節回しを久々に聴かせてくれる「I PICKED A FLOWER」、このわずか2曲ながら今回収録されたボーカルトラックの素晴らしさも聴き逃せない。
マルホランド・ドライブ
監督:デビッド・リンチ
MULHOLLAND DRIVE [ 2001年 アメリカ・フランス ]
なんとなくわけわからんのだろうなぁというイメージがあって、観るのを後回しにしてきたこの映画ですが、確かに一回観ただけではわけわからんながらも、かなりおもしろかったです。スローペースの展開から一転、ラスト30分は急にピッチが上がって、謎と謎を結びつけるシーンの断片があれよあれよと映し出され、なんとも不思議な興奮を味わってしまいました。結局、2回目を観て大方納得したわけですが、現実と幻想の倒錯した世界という、いかにもデビッド・リンチらしくもあり、舞台のハリウッドらしくもある、なかなか秀逸な出来映えであります。
ECLECTIC / 小沢健二
二転三転した挙句ようやっとリリースされたシングル集『刹那』は、ジャケットが3種類もあるものの曲数が8曲プラス1トラックと、予想以上に厳選されてしまっているため、またしても謎が増えてしまった結果となったように思える。2年前、復活作として世に放った『ECLECTIC』の出来映えは素晴らしいものであったが、ここでも扉は開かれることなく、ついに表に登場することはなかった。タイミングの問題なのか、ポジショニングの問題なのか、契約上の問題なのか、何か決めあぐねずにはいられない環境なのかもしれない。元々、フリッパーズ・ギター〜小沢健二に距離を置いてきた自分にとって、アーバンソウルな洋楽インテリファンク的ハイ・フィデリティー・サウンドでバリバリ聴かせる『ECLECTIC』の変貌ぶりは特に気になることもなかったものだが、こう何年もだんまり決め込んでいるのは、さすがに気持ちが悪い。ブルーノートあたりでライブやっちゃえば良かったのに、小沢健二の沈黙とスティーブン・セガールの沈黙シリーズはいつまで続くのだろう。