open-air

青の炎

CINEMA

青の炎

監督:蜷川幸雄
2002年 日本

かれこれ6年くらい前の東京に出たての頃、わけもわからず最初にやったアルバイトがイベント会場設営の仕事だったのですが、その流れで半月ほど蜷川幸雄の舞台の裏方で大型セットを動かしたりする仕事もやったりしていたのを思い出す。蜷川幸雄にとって21年振りという映画監督作は貴志祐介原作の同名小説を映画化したもの。日本屈指の人気を誇るアイドル二人を起用したことで話題になったが、松浦亜弥の出演シーンは肩透かしを食らうぐらい限られたもので、映画は嵐の二宮和也で一貫された、彼のひとり芝居状態となっている。青春映画なりの若さ、青さは、21年振りという蜷川幸雄自身の映画への新鮮さとともに伝わってくる。

THE LAST GREAT WILDERNESS / THE PASTELS

ALBUM

THE LAST GREAT WILDERNESS / THE PASTELS

お久しぶりのパステルズから届けられた新作はデビッド・マッケンジー監督による同名映画のサウンドトラック。わずか30分弱でサントラの性格上インストナンバーがほとんどだけど、これはこれで結構手応えというか聴き応えアリ! ティーンエイジのジェリーさんや我らが日本の工藤冬里といった、地元グラスゴーからレーベルのジオグラフィック関係その他のパステル人脈総動員といえるゲストが満載。そんでもって、共同プロデューサーはジョン・マッケンタイアなわけですが、パステルズならではの音響〜映画スコアアプローチをしっかりフォローしてくれているような、あくまでほんわかムードが心地よいです。ナイスな選曲と言えるカトリーナが歌うスライのカバー「EVERYBODY IS A STAR」と、今回のゲスト軍団ユニットTHE NU FOREST名義でジャービス・コッカーが独特の節回しを久々に聴かせてくれる「I PICKED A FLOWER」、このわずか2曲ながら今回収録されたボーカルトラックの素晴らしさも聴き逃せない。

マルホランド・ドライブ

CINEMA

マルホランド・ドライブ

監督:デビッド・リンチ
MULHOLLAND DRIVE
2001年 アメリカ・フランス

なんとなくわけわからんのだろうなぁというイメージがあって、観るのを後回しにしてきたこの映画ですが、確かに一回観ただけではわけわからんながらも、かなりおもしろかったです。スローペースの展開から一転、ラスト30分は急にピッチが上がって、謎と謎を結びつけるシーンの断片があれよあれよと映し出され、なんとも不思議な興奮を味わってしまいました。結局、2回目を観て大方納得したわけですが、現実と幻想の倒錯した世界という、いかにもデビッド・リンチらしくもあり、舞台のハリウッドらしくもある、なかなか秀逸な出来映えであります。

ECLECTIC / 小沢健二

ALBUM

ECLECTIC / 小沢健二

二転三転した挙句ようやっとリリースされたシングル集『刹那』は、ジャケットが3種類もあるものの曲数が8曲プラス1トラックと、予想以上に厳選されてしまっているため、またしても謎が増えてしまった結果となったように思える。2年前、復活作として世に放った『ECLECTIC』の出来映えは素晴らしいものであったが、ここでも扉は開かれることなく、ついに表に登場することはなかった。タイミングの問題なのか、ポジショニングの問題なのか、契約上の問題なのか、何か決めあぐねずにはいられない環境なのかもしれない。元々、フリッパーズ・ギター〜小沢健二に距離を置いてきた自分にとって、アーバンソウルな洋楽インテリファンク的ハイ・フィデリティー・サウンドでバリバリ聴かせる『ECLECTIC』の変貌ぶりは特に気になることもなかったものだが、こう何年もだんまり決め込んでいるのは、さすがに気持ちが悪い。ブルーノートあたりでライブやっちゃえば良かったのに、小沢健二の沈黙とスティーブン・セガールの沈黙シリーズはいつまで続くのだろう。

DOGTOWN & Z-BOYS

CINEMA

DOGTOWN & Z-BOYS

監督:ステイシー・ペラルタ
DOGTOWN & Z-BOYS
2001年 アメリカ

スケートボードに何の思い入れもないが、この映画はおもしろい。1970年代、退廃したビーチに集まるサーファー達が結成したスケーターチーム、Z-BOYSのドキュメント。彼らは波乗りの要領を活かして過激にダイナミックなスケートボードの革新的なスタイルを確立し、他人の家に不法侵入して干上がったプールでスケボー三昧の日々から一躍名声を得たのだった。成功と引き換えにチームは解散し、バラバラになった個々の未来が平等に輝いていたわけではない現実。遊びのパイオニア達のプロジェクトXに中島みゆきが似合うはずもなく、彼らにとってのスケーターミュージック、ジミ・ヘン、ツェッペリン、T-REX、ストゥージズからバズコックス、DEVOにいたるまで、ギンギンと呼ぶにふさわしい最高のロックンロールが全編にわたって流れている。この音楽編集能力が大変素晴らしく、これだけでも十分楽しめるほどだ。ナレーションは田口トモロヲに負けじと『ミスティック・リバー』が大評判な俳優ショーン・ペンが引き受けております。

8人の女たち

CINEMA

8人の女たち

監督:フランソワ・オゾン
8 FEMMES
2002年 フランス

8人8様、カラフルで艶やかなフランス代表クラスの名女優による演技合戦ということで、さすがに魅せる魅せる。オシャレにキメキメなビジュアルと彼女たちの魅力でカモフラージュしつつも、時代設定が古いので映画としてはユルい方向でまとまってますが、オゾン監督特有のブラックな毒も微量ながら盛り込まれております。エマニュエル・ベアールのメイド姿は思いっきり反則な気もしながら、案の定、旦那様と関係していてお見事としか言いようがない。若手組ヴィルジニー・ルドワイヤンと『焼け石に水』に引き続いてのオゾン作品出演となるリュディヴィーヌ・サニエは思わず目で追ってしまうほど魅力的。アメリカのトップ女優を8人並べてもこの映画は作れないと思わせる、フランス女優の素晴らしさに見入ってしまった。

バトル・オブ・シリコンバレー

CINEMA

バトル・オブ・シリコンバレー

監督:マーティン・バーグ
PIRATES OF SILICON VALLEY
1999年 アメリカ

アップルのスティーブ・ジョブズとマイクロソフトのビル・ゲイツ。現代のコンピューター社会を築いた有名すぎるこの二人を学生時代から遡った半生を描いたこの作品は、ノア・ワイリーとアンソニー・マイケル・ホールのなりきり演技も良く、あくまで人物像を中心に描いているので誰でも楽しめる内容ではあるが、ちょっとでもパソコンに興味があるならかなりおもしろく観れるはずだ。常に理想を追い求め、業界をリードしてきたジョブズに対し、ハッタリと商売人的嗅覚が天才的に冴えまくって成功したゲイツ。成功と失敗、パクりパクられのコンピューター業界。彼らの創世記におけるIBMとゼロックスのバカっぷりを見るに、大企業ってつくづく哀れだなぁと思う。世の中を激変させてしまったのが強烈にヘンな人達というのは、なんとなく誇らしい。映画ではフォローしてないが、ジョブズはアップルだけではなく、いまをときめくPIXERも作ったのだから凄いよなぁ。

岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 番長足

CINEMA

岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 番長足

監督:宮坂武志
2003年 日本

竹内力、史上最高の壊れ役、カオルちゃんがここに再び! 定時制高校を舞台に少林サッカーとくっつけてみましたという安易な企画も、カオルちゃんという圧倒的にオリジナルなキャラによって、超B級へとスケールアップしてしまうところがすごい。また超B級にふさわしくゲストも船木誠勝、ムルアカというビデオ映画のフットワークの軽さを感じさせるワンダーな人選も見逃せない!

モロ・ノ・ブラジル

CINEMA

モロ・ノ・ブラジル

監督:ミカ・カウリスマキ
MORO NO BRASIL
2002年 ドイツ・フィンランド・ブラジル

カウリスマキの兄の方、ミカ・カウリスマキによるブラジル音楽大好き追っかけドキュメント。ブラジルインディオ現住民族の儀式的な歴史の根本を感じさせる祭囃子としてひたすら打ち鳴らされるリズムに始まり、サンバはサンバであれど現代までサンバなりに移り変わっていった様々なスタイルのブラジルミュージシャンたちがめまぐるしく登場する。ライ・クーダとヴェンダースが追っかけした『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の面々がそれなりのオーラや説得力があったのに比べると、ブラジルの彼らは皆、一様にどこか素人臭いというか垢抜けない雰囲気があって面白い。ミュージシャンに限らずとも音楽と身近に暮らしていることが素敵に思えます。

マッドマックス

CINEMA

マッドマックス

『マッドマックス』
監督:ジョージ・ミラー
MAD MAX
1979年 オーストラリア

『マッドマックス2』
監督:ジョージ・ミラー
MAD MAX 2
1981年 オーストラリア

『マッドマックス/サンダードーム』
監督:ジョージ・ミラー、ジョージ・オギルヴィー
MAD MAX BEYOND THUNDERDOME
1985年 オーストラリア

マッドマックスシリーズ全3作をまとめて観なおす。まずはパート1。メル・ギブソンがとにかく若く、短髪のハンサムボーイぶりは今となってはすごく新鮮かも。当時は無名で演劇学校に通っていたという話だけに、メル・ギブソン主演と言えど、超低予算映画だったということは映画を観れば一目瞭然だ。しかし低予算だからこその斬新なアイデアが見事に冴えまくっている。登場するマシンへのこだわり、速い車はカッコイイと単純に思わせるスピード感溢れる映像と復讐の鬼となったマックスのキャラクターが強烈な印象を残すのだった。傑作。パート2は現代劇だったパート1からいきなり時代が飛んで核戦争後の未来が舞台。子供の頃に観た記憶があったのは、どうやら「2」だったようだ。パート1とのつながりは特になく、未来なのか原始なのか何だかエラいことになっているアナーキー加減がいかにもマッドマックスでおもしろい。問題はパート3だ。いちばん金がかかってはいるが、なんだこれ!? メル・ギブソンもよく出演したなぁと思えるほどガッカリの出来。敵の女ボスがティナ・ターナーというのも謎びっくりだが、最後の最後でマックスを追い詰めたかと思ったら高笑いして去って行くという物凄いオチをやってくれている。これ以上、続編が作られなかったのも納得と言ったところで、なんとパート4製作中とのニュースが! メル・ギブソン&ジョージ・ミラーのタッグはそのままとのことだが、期待していいのやら。インターセプターは復活するのか?!