ERIC CLAPTON [ 2003.11.30. 日本武道館 ]
ギターの神様。スローハンド。もうライブ活動は引退すると言っての前回のツアーから2年で帰ってきたクラプトン。実を言うと、前回のツアーを観に行かなかったことは、物凄く後悔していたので、このあっさりしたライブ現場復帰はとても喜ばしいことだった。復帰への経緯はよく知らないが、親友ジョージ・ハリソンの追悼コンサートを開いたり、何かポジティブに思えるところがあったのかも知れない。ステージのクラプトンエリアには絨毯が敷かれ、白シャツにジーンズといういつもの普段着で登場したクラプトン。ライブは一度引退した余裕からか、随分とリラックスした雰囲気で、武道館を借りてやってるクラプトンのホームパーティーみたい。お気に入りのブルースを多めに披露したりして、のびのびと演奏を楽しんでいるよう。もちろん必殺の曲や神がかった運指も繰り広げられるわけで、こんなクラプトン冥利につきるパーティーはない。ボーカリストとしての実力も申し分なく、変わらぬキーで歌い切る「いとしのレイラ」は本気でシビれました。ていうか、どの曲もはっきり言って無茶苦茶カッコいい。「コカイン」なんて客みんなが一緒に「コカイン!!」って叫んでいるし、時代なんて関係ない。週末には普通にK-1グランプリ観戦に行ってるのだろうか。もう思う存分、演奏も何も日本で自由にやってください。できるならフェスティバルにこっそり出演して、若いオーディエンスの度肝を抜いて欲しいなぁ。
1.WHEN YOU'VE GOT A GOOD FRIEND 2.CROSSROADS 3.I SHOT THE SHERIFF 4.BELL BOTTOM BLUES 5.RECONSIDER BABY 6.CAN'T FIND MY WAY HOME 7.WHITE ROOM 8.I WANT A LITTLE GIRL 9.GOT MY MOJO WORKING 10.HOOCHIE COOCHIE MAN 11.CHANGE THE WORLD 12.BEFORE YOU ACCUSE ME 13.KIND HEARTED WOMAN 14.BADGE 15.RIVER OF TEARS 16.LAY DOWN SALLY 17.WONDERFUL TONIGHT 18.COCAINE 19.LAYLA
encore
20.SUNSHINE OF YOUR LOVE 21.SOMEWHERE OVER THE RAINBOW
ロジャー&ミー
監督:マイケル・ムーア
ROGER & ME [ 1989年 アメリカ ]
今年『ボーリング・フォー・コロンバイン』でアカデミー賞まで獲ってしまい、一躍有名になったマイケル・ムーアの長編ドキュメンタリー第一作。彼の地元ミシガン州フリントがゼネラル・モータース社の工場閉鎖を契機に失業者が溢れかえり街が荒廃していく資本主義社会下の不況の悲劇をまざまざと写し出している。この地元の現実をGMの会長ロジャー・スミスに見てもらいたいと彼らしく様々な接触を試みているわけだが、今作での突撃取材の成果はほとんど得られなかったのが現実だ。まだヒゲもなく若かったということなのかもしれないが、映画が各所の映画祭で賞を獲るなど認められたことは、彼のキャリアにとって非常に大きかったのではないだろうか。巨大なホテルやテーマパークを建設して、あっという間につぶれてしまう有り様は、僕の故郷宮崎に似て、いろいろと思ってしまう。この映画製作のために彼はあらゆる私財を売り払うだけに足らず、地元で賞金付きビンゴ大会を開催して資金を賄ったらしい。東京都のお台場カジノ計画も、実現していれば物凄い財源を生み出していたのかもしれない。
NEIL YOUNG & CRAZY HORSE [ 2003.11.14. 日本武道館 ]
最新作『グリーンデイル』は架空の街「グリーンデイル」を舞台にした物語を10篇の曲で構成された非常にコンセプチュアルなアルバムだ。単純に曲として書き上げるに止まらず、登場人物の緻密なキャラクター設定や街の概要など細部まで徹底されており、今回のツアーでは舞台セットと何十人ものキャストを動員しての、まさに『グリーンデイル』実演ショーをやってのけたのだった。英語がわからないので、歌詞は全然わからないし、曲間にニール・ヤング自身がいろいろ喋って説明してくれたりしてたけど、言葉はよくわからない。ただ、それでも思いっきり通じるものがあって、ラストの「BE THE RAIN」では震えるほど感動して涙が出た。『グリーンデイル』を全曲演奏することはわかってて観に行ったけど、こんな素晴らしいショーになろうとは! 90分に及ぶ本編が拍手喝采を浴びて終了した後は、代表曲を凝縮したアフターショーとなり、こちらも鬼凄いことに。RUST NEVER SLEEPSの文字をバックに始まった「HEY HEY, MY MY」から興奮の坩堝!! 「ROCK AND ROLL CAN NEVER DIE」に「ROCK AND ROLL IS HERE TO STAY」という言葉をニール・ヤング本人が発する重み。もうとんでもないなと感服。早くも願わずにはいられない再来日への思い。本当に素晴らしくて、今でも余韻に浸っている。
1st set "GREENDALE"
1.FALLING FROM ABOVE 2.DOUBLE E 3.DEVIL'S SIDEWALK 4.LEAVE THE DRIVING 5.CARMICHAEL 6.BANDIT 7.GRANDPA'S INTERVIEW 8.BRINGIN' DOWN DINNER 9.SUN GREEN 10.BE THE RAIN
encore 1
11.HEY HEY, MY MY (INTO THE BLACK) 12.ALL ALONG THE WATCH TOWER 13.POWDERFINGER 14.LOVE AND ONLY LOVE
encore 2
15.ROCKIN' IN THE FREE WORLD
突入せよ!「あさま山荘」事件
監督:原田眞人
[ 2002年 日本 ]
先日、群馬県にある川原湯温泉に行ってきた。数年後にはダムの完成とともに湖底に沈んでしまう運命にある切ない情緒が印象的な温泉地だったが、そこへの行きのバスでベテランらしきバスの運転手さんがいろいろとガイド的な薀蓄や季節の話題を披露してくれて、浅間山噴火による溶岩での被害のことも話してくれた。群馬と長野の県境に位置する浅間山。その浅間山の麓、軽井沢に河合楽器の保養所としてあったのが「あさま山荘」だ。1972年2月19日、5人の連合赤軍が人質をとり、あさま山荘に篭城。この戦後昭和の大事件のひとつ「連合赤軍あさま山荘事件」を当時警察庁から派遣され現場で任務にあたった佐々淳行(映画では役所広司が演じるその人)による原作を映画化したのが今作である。映画が進むにつれ感じる事件そのもののスケールの小ささは、ちょっと興醒めかもしれない。この事件では現場も会議室もバカばっかりだったんだなぁという皮肉がたっぷりだ。所詮、組織は有能無能をひっくるめての足の引っ張り合いか。ラストにおける任務終了の達成感より虚脱感の大きいこと。
TODAY IS THE DAY / YO LA TENGO
彼らには恒例となっているようなEPカットという形式のミニアルバム。1曲より6曲のバリエーションで聴かせたほうが、ヨ・ラ・テンゴというバンドをプレゼンするには大いに適しているのだろう。今回の聴き所は純フォークと呼ぶべきバート・ヤンシュのカヴァーか。インスト曲の洗練のされ具合も見事としか言いようのない。深くてシンプルな音楽の表現者として、ヨ・ラ・テンゴはますます揺らぎないものになっている。12月のライブは思いっきり楽しむぞ!
小島麻由美 [ 2003.11.01. 文教大学越谷キャンパスメインアリーナ ]
学祭行脚第2弾はこれまた遥か埼玉県は越谷へと行ってまいりました。片道2時間はかかったものの、小島麻由美のライブが1500円で観れてしまうとあれば即決ですよ。この日はHERMANN H. & THE PACEMAKERSとの2本立てだったため(ちなみに小島麻由美が先だったのでそっちは観てないです)、40分という濃縮セットでプレイ。ASA-CHANGを筆頭にいつものバックメンバーでしたが、今回はフルート&ラッパ組がいなかったので、その分余計に弾きまくっていたギター(塚本功)のカッコ良さが物凄く際立っていました。冒頭4曲は今年あたまにリリースされた『愛のポルターガイスト』まんまでしたが、このアルバムは本当に名作でしたね。
1.ポルターガイスト 2.眩暈 3.赤と青のブルース 4.黒い革のブルース 5.黒猫 6.真面目な青年 7.結婚相談所 8.パレード 9.ひまわり 10.恋の極楽特急
クレイジーケンバンド [ 2003.10.25. 日本大学湘南校舎体育館アリーナ ]
わざわざ藤沢まで出掛けて行ったのも、20000円もするディナーショーですら軒並み完売させてしまう勢いのクレイジーケンバンドを1800円のお手ごろ価格でありながら難なくチケットが取れてしまったからでありまして、こういったショービジネスと区別された昔ながらの学祭コンサートというのはとても素敵なことだと思います。一部、普通のライブ料金並のチケット代でもって話題取りだけで有名どころを呼んだりして、学生のプライドがあまり感じられず興味がないものもありますが、総じて学祭は小さくとも大いに一生懸命盛り上がって欲しいものであります。今回行ってきた日本大学の湘南校舎は生物資源学部のみの大学施設ということで、勝手に古くて高校並みのスケールだろうと想像していたのですが、なんともまあ恵比寿ガーデンプレイスのような嫌味に立派で新しくデカいとこでした。ライブ会場の体育館というのも観客スタンドがあるくらい大きくて後ろ半分は可動式の座席が出てたり、ほぇ〜、とか思ってしまいました。で、剣さんですが、初めて観た感想として、やはりカッコよかった!ということです。誰もに一言目には「カッコいい」と言わせてしまうカッコ良さが物凄くあります。オモシロ可笑しく真剣に楽しませるショーを実践せんとしたバンドのコンビネーションも素晴らしく、珍しく歌詞を飛ばしてしまった剣さんを見事にフォロー。イイネ!も余計に出てました。最後は客もいっしょにみんなでお金持ちになろう!と百万円コール〜一千万円コール〜一兆円コール。一兆円で剣さん転倒! 一兆円で多すぎるのもあんまり良くないということで、三億円くらいが丁度いいとして、三億円コールでお見事大団円。さすが。
1.美人 2.香港グランプリ 3.BRAND NEW HONDA 4.I LIKE SUSHI 5.ウォーカーヒルズ・ブーガルー 6.夜のヴィブラート(藤桜祭仕様) 7.肉体関係 8.長者町ブルース 9.ボサボサノヴァノヴァ 10.パパ泣かないで 11.イカ釣り船 12.けむり〜ざくろ 13.ヨコスカンショック 14.Let's Go! Crazy Ken Band〜タイガー&ドラゴン 15.あ、やるときゃやらなきゃだめなのよ。 16.GT
encore
18.老人と子供のポルカ 19.Surf Side 69 20.涙のイタリアン・ツイスト 21.葉山ツイスト 22.クリスマスなんて大嫌い!なんちゃって♥ 23.まっぴらロック〜ゲバゲバ90秒
COMMUNICATION / KARL BARTOS
クラフトワークの新作を紹介したなら、こちらの新作も紹介せねばなるまい、かつてクラフトワークだったカール・バルトスのソロ・アルバム。この人の専売特許といえるロボット・ボイスが炸裂というか歌いまくりですよ。ちょいと前にはエレクトロニック(バーナード・サムナーとジョニー・マーのアレです)にも参加してたこともあったわけで、この作品はまさにクラフトワークが思いっきりエレポップに傾倒してできてしまったような、キャッチーで究極という素晴らしい出来映え。ひょっとしたらこのおじさんも来年日本に来るかもしれないだなんて、コンピューターワールド万歳。
TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS / KRAFTWERK
出ました17年振りの新作。「TOUR DE FRANCE」そのものは1983年にリリースされたシングルで、電気グルーヴ懐かしの変名コンピレーション『ドリルキング・アンソロジー』でのペダル踏弥「ツルっとフランス子守唄」の元曲だったりもするのだが、2003年、TOUR DE FRANCE100周年を記念して一新、長編アルバム化、ただしジャケットはそのまんまという、クラフトワークの芸の術を見事なまでに注ぎ込まれた会心の一枚。実を言うと、懺悔しますが、かの前作『エレクトリック・カフェ』は大学のときに買ったものの、あまり聴かなくて売ってしまったのであります。若かりし頃に、こうすんなりクラフトワークに行っちゃうのも、気味悪い気もするし、まぁ良しとしてやってください。1998年、2002年と見逃し続けたライブも、再度新たにチャンス到来! 来年の単独公演が本当に楽しみでなりません!!
BEFORE AND AFTER SCIENCE / BRIAN ENO
最近のメキシコ映画に『天国の口、終わりの楽園』という作品がある。羨ましいほど青い男子学生ふたりとワケありの人妻との青春ロードムービーで、なかなかの秀作である。クリス・コロンバスの後を継ぎ、ハリー・ポッターシリーズの次回作『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を監督することが決定したらしい監督のアルフォンソ・キュアロンは、この映画を撮るにあたってエンドクレジットで流れるフランク・ザッパの曲にインスピレーションを受けたことが契機となったみたいだが、僕がこの映画の音楽で最も印象的だったのが、劇中、ブライアン・イーノの曲「BY THIS RIVER」が車のラジオから流れて、曲の途中でラジオが故障するシーンだったりする。単音のメロディが切なく訴えかける美しい名曲「BY THIS RIVER」を収録したアルバム『BEFORE AND AFTER SCIENCE』は、ベルリンでデビッド・ボウイの傑作群をプロデュースしていた頃とほぼ同じ時代の1977年発表。その後のアンビエントの世界へと突入していく直前のもので、曲調にその辺りの影響が既に表れてはいるものの、まだまだイーノもほとんどの曲で歌っており、非常にバランスのいい優れたアルバムだと思う。