Dolls
監督:北野武
2002年 日本
いわゆる世間一般のたけし映画に対する認知度、関心度は低いままだろう。話題となっても実際映画を観ている人は非常に限られているのではないだろうか。また、かつて『3-4×10月』や『ソナチネ』で熱を上げたファンも最近はいささか冷静になっているのかもしれない。しかし、ついに10作目となる『Dolls』はそんなヌルい空気に流されて見逃しては、自分は後悔していただろう。この重々しく切ない四季の彩りを静かに見つめながら、深く苦しい感動を味わう。山本耀司の衣装、人形浄瑠璃の舞台、抜群の映像美もさることながら、今作での菅野美穂の演技は特筆に価するものだった。
NEXT WAVE / MONDO GROSSO
夏のパーティ・アルバム決定盤ということで、OL層にも勢い良く売れそうなモンド・グロッソの新作。エスニックな歯切れの良いギターカッティングがスイッチを入れた途端聞こえ出してしまっては、意外と早く飽きるとわかっていながら消費したいという願望が芽生えてしまっても仕方ないのかもしれません。既にラジオで散々耳にしたBoAを起用した曲「EVERYTHING NEEDS LOVE」がここでも一番映えますね。オマケのような「FIGHT FOR YOUR RIGHT」のカバーはいらない気もする。せっかくのUAもなんかの映画の主題歌みたいで正直いただけない。というか、これだけいろんなボーカル使って、半分くらいどっかで耳にしたことがあるってのは、ズルいよなぁ。まあでも、このタイミングでこの音楽をやるという選択とプレゼンができるのも大沢伸一の才能なのだろう。
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN [ 2003.06.27. 渋谷クラブクアトロ ]
ライブアルバム発売とセカンドアルバム録音完了というタイミングで、第2期デートコースのスタートを告げるこの日のライブ。ギターの大友良英が先頃脱退したものの、新ギタリストのジェイスン・シャルトンがうっかりアメリカに帰ったままというハプニングで、その大友良英が代理ヘルパーとして出場。いきなり笑いと拍手が起こる。予告通りアンコールを含めて150分。後半は盛り上がったものの、全体として思ったほどファンキーではなかったかなというのが正直な感想。演奏が小慣れてくるともっとグルーヴ感が増すのかもしれないが、いまいちなんか腰にくる感じが乏しかったんだよなぁ。デートコースでは菊地さんのサックスプレイが観れないのが残念なところ。
1.STRUCTURE (LA STRUCTURE DE AMERIQUE MEDIEVALE) 2.STRUCTURE (LA STRUCTURE DU SOLIDE ROTATOIRE ET DE LA PROSTITUTION) 3.PLAYMATE AT HANOI 4.STAIN ALIVE 5.STRUCTURE (LA STRUCTURE DE LA MAGIE MONDERNE) 6.CIRCLE/LINE〜HARD CORE PEACE 7.HEY JOE
encore
8.STRUCTURE (LA STRUCTURE DU PORT ET DES LIEUX DE PLAISIRE) 9.STRUCTURE (LA STRUCTURE DU PARADISE ET DEEGLISE)
エブリバディ・フェイマス!
監督:ドミニク・デリュデレ
IEDEREEN BEROEMD!
2000年 ベルギー、フランス、オランダ
歌手になって大スターになることを憧れる冴えない娘と、その夢を叶えようと娘の才能を本気で信じて奮闘する冴えない父親のシケた物語のように最初は思えるだろう。しかし、父親の勤めていた工場が不況で閉鎖になったあたりから、おもしろい方向へその親父が大暴走! ヤケクソな立場だといえ、偶然出会ったとてもきれいな大スターの女性歌手を誘拐してしまうのだ。ここまでやれたらステージパパとして立派と認めるしかないだろう。娘が歌う「ラッキー・マヌエロ」という曲があるのだけど、これが親父が作った自我自賛なものだけになかなか良くはないのだが、観終わっても妙に耳に残るんだな。ものまねのど自慢大会のマイケル・ジャクソンが絶妙に決めてたのがナイス。
8 Mile
監督:カーティス・ハンソン
8 MILE
2003年 アメリカ
言わずと知れたエミネムの主演映画。前々作『L.A. コンフィデンシャル』で一気に評価を高めたカーティス・ハンソンとエミネムの接点は謎だが、この映画も思いのほか良かったりします。底辺層から這い上がろうとする若者の青春ストーリーとしてしっかりしたものがあり、何と言ってもスクリーンで見る役者エミネムの姿、表情が素晴らしくいい。そしてラップバトルという名の口ゲンカ合戦で見せる本職としての技。英語がわかればここはもっと面白いんだろうなぁ。5月のエミネムショー来日公演に行かなかったことを激しく後悔しております。
レッド・ツェッペリン 狂熱のライブ
監督:ピーター・クリフトン、ジョー・マソット
THE SONG REMAINS THE SAME
1976年 アメリカ
もしもDVDプレイヤーがあったなら、先日リリースされたレッド・ツェッペリンの35周年記念2枚組DVDを買っていただろう。だけど僕にはDVDプレイヤーがない! いい加減DVDが観れるようにしたいなぁと思いつつ、今回はだいぶ前に観た映画ですが、それが出るまでツェッペリンの公式に発表した唯一の映像作品だったライブドキュメント映画を紹介。1973年のニューヨーク、マジソン・スクエア・ガーデンでの公演を収録したもので、合間には彼らのマネージャーだったピーター・グラントが楽屋でキレまくるシーンといったライブの裏側の部分から、ロバート・プラントが中世の騎士になってたりと妙チクリンなイメージ映像が挿入されている。ほとんど何もないステージでの4人の演奏はただただ圧倒的で本心から憧れられるロックの魅力が思いっきり満ち溢れている。マジメな話、ジョン・スクワイアがジミー・ペイジくらいしっかりバンドをまとめてくれてれば、ストーン・ローゼズも今頃は予想もつかないレベルの怪物になってただろうなぁ、という気もするわけで、90年代の後半はローゼズの喪失というボンゾの死=ツェッペリン解散と同等のつらい歴史を僕らは経験したんだとつくづく思う。なお今作のサウンドトラックのライナーノーツには、いまや映画監督として成功したキャメロン・クロウが一筆寄せている。
ソイ天サント / タミオーバンド
タミオーといっても奥田民生とは全然別人の僕と結構つきあいの長い某兄弟のアニでありまして、このバンドはというと僕も一緒に参加している楽器の弾けないメンツでたまに集まっては適当に音を出して楽しくやっている程度のレベルのものです。それがまたどうしてCDを作ったかというと、僕らが知らない間にアニがひとりでひきこもって宅録で捻出していたみたいで、それをmajikickというインディレーベルをやっているアニの知人に聴かせたところ、絶句というか絶倒というか絶賛というか、とにかく気に入られたわけで、めでたくリリースとなったわけです。全10曲なのにトータル時間13分。生み出す側も聴く側も限界ギリギリの濃厚で力の抜けきった13分は一聴の体験価値アリ。かなり隅っこの世界だけど、ある意味凄いです。
THE FOLK IMPLOSION [ 2003.06.14. 渋谷NEST ]
もう7年になるのか。20歳のときだったんだ・・・。96年のREADINGでセバドーを観たもので、彼らは初日セカンドステージのトリ前だったことを思い出す(トリは銀ギラ衣装でキメていたロケット・フロム・ザ・クリプトだった)。当時から向こうではそういう評価だったんだなぁ。メインステージで演奏中のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンをルー・バーロウが茶化していたっけ。今回はフォーク・インプロージョン名義での来日で新作のタイトル通り「ニュー・フォーク・インプロージョン」と自己紹介。「スミマセ〜ン」と日本語で笑いをとりつつも、ルーさんの体調が少しすぐれないのか、曲の合間は随分疲れてそうな表情を見せていた。抜群な歌唱を披露しつつも、そんな感じで本編が1時間でサクっと終了したので、今日は仕方ないのかなと思いきや! 日本公演最終日を名残惜しみながら酒と演奏が進むとともに気分が乗ってきたのか、ギタリストを肩車して弾き語るなんて光景が客に大ウケ。2度のアンコールに応えた第2部アコースティックステージはまさにルー・バーロウ独演会だったわけで、朗々と歌い上げては、もう1曲、もう1曲、と自ら時間を要求して、やりにやったり1時間! その割には映画『KIDS』の「NATURAL ONE」や『アメリカン・ビューティ』の「FREE TO GO」はやらなかったわけだが、最後には12歳の頃に初めて作った曲までいとこが横で吹いてたらしいトランペットの口マネ付きでゴキゲンに披露してくれましたよ。狭すぎた会場だったこと以外はとても満足して楽しめたライブだった。
NOAHLEWIS’ MAHLON TAITS [ 2003.06.08. タワーレコード渋谷店 STAGE ONE ]
1950年代あたりの古いレコードを集めるコレクターは結構いたりするのかもしれないが、当時の音楽を再現してみようとした趣味人の心意気の強いバンドは彼らぐらいなのかもしれない。スローライフってなんとも胡散臭い言葉が流行り出してる昨今の東京であれど、彼らのようなゆったりほんわかとムーディに奏でる音楽は、どうにも似合う街ではないことは確かだと思った。
マイノリティ・リポート
監督:スティーブン・スピルバーグ
MINORITY REPORT
2002年 アメリカ
トム・クルーズの父親役というのはいつもながらしっくりハマらなかったものの、決してつまらない映画ではなかったです。幾分、尺が長いのはスピルバーグだけの特権なのか? 人間対機械というSFの構図をまっとうに映画化したら、こうもクラシカルなものに仕上がってしまうという面白さがあった。