DISTANCE
監督:是枝裕和
[ 2001年 日本 ]
カルト教団による無差別殺人実行犯遺族4人と元教団信者1人の5人が一日をともに過ごし、5人による対話とそれぞれの回想シーンを挟みながら、教団側へと傾き去っていった者と残った者との人間関係・距離を描き出していく。妻と夫、兄と弟、父と子。あくまで5人が5人の立場・思い・視点での言葉をドキュメント的に捉えた映画は、なぜ関係を絶ってまで去っていったのか、また事件に関する事実関係など、はっきりとはわからないままに、リアルな姿が印象に残る。元信者を演じた浅野忠信は『青春デンデケデケデケ』『119』以来と思えるほど、この映画では実によかったと思う。
猟奇的な彼女
監督:クァク・ジェヨン
MY SASSY GIRL [ 2001年 韓国 ]
ただなんとなくではあったけれど、『シュリ』以降続々と輸入されてくる韓国映画を全然観てなくて、思い起こせば学生の時に観た『風の丘を越えて』という親子の暗い話の映画以来かもしれない。しかしこの映画『猟奇的な彼女』は面白かった! ラブコメというよりSMです。劇的なエピソードに事欠かなく、見事にかみ合った猟奇的な彼女Sと振りまわされっぱなしの彼氏Mの関係。思いっきり楽しめたのは無茶苦茶なんだけど全てをアリにしてしまう彼女を演じたチョン・ジヒョンの魅力に尽きる。これはオススメです。
ブラックホーク・ダウン
監督:リドリー・スコット
BLACK HAWK DOWN [ 2001年 アメリカ ]
クリントン政権時代、1993年10月のアメリカのソマリア軍事介入における失敗に終わった作戦を描いた実話の映画化作品。ほば全編が戦闘シーンで説明的な部分がほとんどなく、アメリカ軍兵士の視点での戦場ドキュメントと言える。ソマリア側の状況、立場については全くといっていい程触れられていないが、かと言って、アメリカの正義を押し付けるプロパガンダ的な内容でもないのは、リドリー・スコット監督がイギリス人という国籍の違いによるものかもしれない。ユアン・マクレガーとユエン・ブレンナーの『トレインスポッティング』コンビが米兵役で出演しているのも観る者にとっては興味深い。
リリイ・シュシュのすべて
監督:岩井俊二
[ 2001年 日本 ]
元々はインターネット上でその物語を発表し、架空の人気アーティスト「リリイ・シュシュ」を作り上げ、そこに一般の閲覧者からによるBBSへの書き込みを反映させ肉付けをしたうえで映画が制作されたこの作品。一連のプロジェクト性から、物語上・映画上での殺人や自殺といった少し余計にも思えた描写も含めて、岩井俊二のサブカルチャー資質が全面に発揮された作品となっている。中学生活にはびこるいじめ、現実逃避の拠り所としての絶対的なアーティスト「リリイ・シュシュ」。非常に暗く、重くのしかかってくる映画ではあれど、それでも思春期はかけがえのないものとして、ずっと若い世代へのやさしさを感じさせる、美しくあまりに爽やかな映像に妙な居心地を感じながら、思いのほか見入ってしまった。ギャオス内藤(生活指導の先生)に小出監督(沖縄の案内人)も出てると思ったら別の役者だったようだ。
奥田民生 [ 2003.02.01. 日本武道館 ]
昨年リリースしたアルバム『E』に伴う全国ホールツアーのファイナル、武道館2DAYSの最初の日に行ってきました。思えば昨年1月、川崎クラブチッタで観たとき話の流れで「次のツアーで衣装でも作りますか」と言ってたけど、本当にバンドメンバーも含めて全員同じスーツで今回のツアーは決めてきたみたいで、毎度飽きさせない新しいことをやってくるところはさすが。サックスを二度三度手に取って吹いたりもしてたし、古田たかしさんが宙に舞いあがったり、珍しいもの見せてくれます。中でも、「御免ライダー」のときの超巨大ミラーボールは笑ったけど、感動したなぁ。あれ一曲だけしか出番がないなんて、ちょっと勿体無かった気もするほど、デカかった! ツアーファイナルとあって、途中ゲストとしてドラムにチャーリー・ドレイトン、ベースに小原礼も参加する一幕も。その際、ドラムセットのセットチェンジの最中、小ネタを挟んだりと、いろいろ楽しませてくれました。何と言っても歌と演奏は申し分ないわけで、「ヘヘヘイ」の高揚感は特別凄かったです。楽曲がこうしてナマの場ででき上がるわけで、やはり民生はライブを堪能してこそですね。
1.俺は知ってるぜ 2.まんをじして 3.海へと 4.家に帰れば 5.E 6.トリコになりました 7.AND I LOVE CAR 8.HORSES(斉藤有太ソロ曲) 9.人間 10.荒野を行く 11.鼻とフラワー三世 12.鼻とフラワー 13.ヘヘヘイ 14.イージュー★ライダー 15.さすらい 16.The STANDARD - instrumental (サックス奥田民生&キーボード斉藤有太) 17.みんな元気 18.抱きしめたい 19.The STANDARD 〜消灯〜 〜白い恋人たち 20.御免ライダー 21.花になる 22.手紙 23.マシマロ 24.哀愁の金曜日 25.ドースル?
encore 1
26.ショッピング 27.CUSTOM
encore 2
28.BEEF
千と千尋の神隠し
監督:宮崎駿
[ 2001年 日本 ]
先日テレビ放送があったけど、たまたまレンタルしてたので同日深夜にビデオで観た。おそらく3月のアカデミー賞で世界的な認知を得るであろう日本最大のヒット作はそのテレビ視聴率も記録を塗り替えたようだが、それだけの国民性、国民的行事に仕立て上げた宮崎駿は凄い映画監督だと思う。人間界から離れた風呂屋というシュールな舞台にすっかり惹き込まれ、満足いくまで楽しめました。
MANIC STREET PREACHERS [ 2003.01.26. 東京ベイNKホール ]
special guest:くるり
東京ディズニーリゾートの奥まった一角に存在するNKホールまで行くのは相当な覚悟が必要だったりするものだけど、それだけのものが間違いなく観れたと思う。まずはギリギリ間に合ったくるり。実はくるりを観るのはずっと縁がなかったのか、今回が初めてだった。ドラムが脱退ということで、この日のバイト君は元ナンバーガールのイナザワアヒト。もうひとりギターのサポートを入れてシンプルな構成で、少し緊張気味だったけど、生身のロックバンドの音を出していたと思う。ラスト2曲を飾った「街」と「東京」を聴いて、くるりも一回りしたのかなと思った。めがねもフッ飛ばして、演奏してたし、なんか感慨深くて良かったなぁ。くるりが終わって、それから30分、ついに暗転してデビッド・ボウイの「SPEED OF LIFE」(!!!!!)をバックにメンバー登場! 「享楽都市の孤独」で幕開いたグレイテストヒッツと銘打った今回のライブツアーはその名の通り惜しげもなく年代問わず次から次へとシングル曲が披露されていく。早々と「モータウン・ジャンク」も演奏され(そういえばこのときのイントロ前にジェームズはこれまたボウイの「REBEL REBEL」を弾いていたなぁ)、「スイサイド・イズ・ペインレス」まで歌ってしまう開き直りっぷりは凄い。こっちがもう演奏されることはないだろうと思っていた曲とともに純白のレスポールカスタムを持ってクルクルケンケンしながらジェームズは歌いつづけ、ショーンはひたすらビートを叩き込み、ニッキーはミニスカ姿で大股ジャンプを繰り返していた。気が付けばともに騒ぎ涙を流して歌っていた自分。ラスト「YOU LOVE US」の狂乱の中、ニッキーはベースアンプの上に仁王立ちして、そこからベースを叩き落してぶっ壊したかと思えば、ジェームズはフロアに飛び降りて絶唱! この時代遅れのパンクスは本当に素敵だと心の底から思えると同時に、これで終わりなのかもしれないという気持ちにもなってしまった。
1.GUILTY 2.ARMY 3.新曲 4.GO BACK TO CHINA 5.リボルバー 6.街 7.東京
MANIC STREET PREACHERS set list
1.MOTORCYCLE EMPTINESS 2.YOU STOLE THE SUN FROM MY HEART 3.THE MASSES AGAINST THE CLASSES 4.THERE BY THE GRACE OF GOD 5.MOTOWN JUNK 6.THEME FROM M*A*S*H (SUICIDE IS PAINLESS) 7.KEVIN CARTER 8.SLASH 'N' BURN 9.TSUNAMI 10.LIFE BECOMING A LANDSLIDE 11.SHE IS SUFFERING 12.OCEAN SPRAY 13.STAY BEAUTIFUL 14.LITTLE BABY NOTHING 15.FASTER 16.FROM DESPAIR TO WHERE 17.ROSES IN THE HOSPITAL 18.THE EVERLASTING 19.EVERYTHING MUST GO 20.IF YOU TOLERATE THIS YOUR CHILDREN WILL BE NEXT 21.A DESIGN FOR LIFE 22.YOU LOVE US
HITS / PULP
今日、レコード屋に出かけていろいろ試聴した中で一番感動したのがPULPのベスト盤で「RAZZMATAZZ」を聴いたときだった。数年振りに耳にした音色に懐かしさや色んな感情が込み上げそうになったので、20秒ぐらいで止めてしまったが、それはあまりにリアルなものだった。昨年12月、地元シェフィールドでのAUTO FESTIVAL出演で最後をほのめかす発言をしたみたいで、森をまわったFOREST TOURをやったPULPだけに、そのハッピーエンディングを今年のフジロックでみせて欲しいという思いも強くある。結婚を果たしたジャーヴィス・コッカーに幸あれ。PULPは宝だ。
シベリア超特急2
監督:水野晴郎
[ 2000年 日本 ]
ついに新春ロードショーとして封切られたパート3。さらに間髪空けず丹波哲郎投入の大技披露となる一度限りの舞台公演パート4。その後も香港ワイヤーアクションを盛り込んだパート5、閣下の恋を描いた完結作パート6へとシベ超大河プロジェクトは走り続けるみたいだ。転んでも転び方に勢いがありすぎた水野晴郎、現72歳、恐るべし。まさかの続編と謳われた第2作も見事にトホホな作りではあるが、水野晴郎の圧倒的な存在感がすべてを帳消しにしてしまう。最後におとずれたユルユルの大団円にはカタルシスを覚えるとともに爆笑してしまった。シベ超がシベ超であることに満足してしまう、つくづく特異なシリーズだと思った。
HOW I LEARNED TO LOVE THE BOOTBOYS / THE AUTEURS
電気羊の夢を見れないまま新年一月も半ばに入り、日常のループが回り始めていますが、2003年平成15年の干支は羊ということで、このアルバム。羊で思いついたのがポール&リンダ・マッカートニーの『RAM』とオトゥールズのこれだけでした。1999年発表のいまのところオトゥールズとしての最新作にあたりますが、非常に美麗な羊ジャケットです。ピンク・フロイドの『原子心母』かKLFの『チルアウト』へのオマージュでもあったような・・・。ヨーロッパでもサイドプロジェクトのBLACK BOX RECORDERがヒットしたりしてるけど、個人的にはルークが歌っているメインのこっちが大好き。おそらく日本で観れることはないだろうなぁ。ルーク・ヘインズの書くナイーブで暗黒な世界がとてもカッコ良いのに・・・。