open-air

MASSIVE ATTACK [ 2003.03.25. 東京ベイNKホール ]

LIVE

MASSIVE ATTACK [ 2003.03.25. 東京ベイNKホール ]

special guest:DJ SHADOW
意表を突いて丁寧な自己紹介のあいさつを行なってスタートしたDJ SHADOW。ターンテーブルとCDJが2台ずつとサンプラーでやりますよー、なんて機材紹介までして、飾らないナイスガイっぷりもカッコ良く、本日のプレイはDJというより自身のライブというモードでサンプラーのボタンを随分と押しまくるという、その妙技も素晴らしく楽しませてくれました。サンプラーとVJの映像がシンクロするのが凄いと思った。あれは面白い。楽しい1時間を満喫して、舞台は闇に変わり、いよいよマッシブ・アタック。イラク攻撃で犠牲になった罪の無い市民のために1分間の黙祷が行なわれ、ショーがスタート。今回のツアーの目玉となっているインターネットで彼らのサイトから打ち込んだメッセージが反映されるという、インタラクティブLEDスクリーン(電光掲示板)が起動したときのワクワク感たるや! スペシャリスト揃いのミュージシャンによる演奏で、闇を切り裂く圧倒的なテンションのマッシブ・アタック協奏曲が全身に響く音圧で迫ってくる興奮。ホレス・アンディ、ドット・アリソン、デボラ・ミラーといったゲストボーカルのパフォーマンスも印象的だった。DJだったマッシュルームが脱退してしまったため、当の本人達はボーカルを取る曲以外はステージ上にいないという、DADDY Gに至っては2回ほどしか出番がなかったわけだが、あの巨大スクリーンによって彼らのライブにおける表現はスケール感を増し、メッセージもより強固なものとして感じられたと思う。猪木「小泉は甘っちょろい」、って出たときは大笑いしたけど、「戦争」「反対」「平和」とデカデカと出たときのインパクトは凄かったなぁ。かつてバンド名からアタックを伏せられた彼らの世界ツアー攻撃を僕は支持したいと思う。

set list
1.FUTURE PROOF 2.EVERYWHEN 3.RISINGSON 4.BLACK MILK 5.ANGEL 6.SPECIAL CASES 7.BUTTERFLY CAUGHT 8.FADE AWAY 9.TEARDROP 10.MEZZANINE 11.HYMN OF THE BIG WHEEL 12.SAFE FROM HARM 13.INERTIA CREEPS
encore 1
14.ANTISTAR 15.UNFINISHED SYMPATHY
encore 2
16.GROUP FOUR
過去のない男

CINEMA

過去のない男

監督:アキ・カウリスマキ
MIES VAILLA MENNEISYYTTÄ
2002年 フィンランド

カンヌがグランプリという太鼓判を押してくれたことで、ここ日本でもカウリスマキの映画が大ヒットしてくれればと思う。モノクロ・サイレントという究極の手法で最高のものを見せつけてくれた前作『白い花びら』から一転、カラーとなった今作は『浮き雲』に近いテイストで描かれたまさにカウリスマキな作品だった。暴漢に頭を殴られ過去の記憶を失った男が人生を再出発させるストーリーによって、非常にシビアなフィンランドの経済状況を映し出してはいるものの、登場人物たちがユニークで、誰一人として悲しみに暮れた泣きの芝居をしていないところが凄くいい。悲観的になりすぎず、人生は前にしか進まないということを肝に命じて、生きていこうじゃないか。いろいろあるけど、世の中捨てたものじゃあないはずだ。

歓楽通り

CINEMA

歓楽通り

監督:パトリス・ルコント
RUE DES PLAISIRS
2002年 フランス

父親も知れず、娼館で生まれ、娼館で育ち、娼館で働く中年男の物語。主人公が心から愛したひとりの娼婦に対して、自分は彼女の相手としてはふさわしくないと確信しているが故に彼女の世話をすることに終始し、彼女が恋に落ちる運命の男を探し出そうと頑張ったり、結果その男に自分は納得しなくとも、体を張って彼女の幸せのため、夢を壊さないためにひたすら尽くすという、ルコントらしいと言えばらしいのだが、ストイックなのにも程があると思わざるを得ない。『愛しのエレーヌ』や『夢見るシングルズ』のような映画はもう撮らないのかなぁ。ミシェル・ブランとのコンビをそろそろ復活して欲しいルコントであります。

THE ROLLING STONES [ 2003.03.16. 東京ドーム ]

LIVE

THE ROLLING STONES [ 2003.03.16. 東京ドーム ]

晩年の頃のジャイアント馬場がリングに立っている姿を観るときのように、現役ストーンズに対しても彼らの十分過ぎる年齢を前提に考えてしまいがちかもしれない。しかし、実際のストーンズはめちゃめちゃ動いていて、ミック・ジャガーの異常な声量と40年前から変わらない腰つきを目の当たりにすれば、年齢を気にしてあげてることが無駄だとわかるはずだ。正真正銘ロックンロール・スターとしての存在感がモノ凄くて、どうにも本当にカッコ良い。カッコ良いとしか言いようがない。ゴキゲンでポーズを決めまくるキース・リチャーズにホレボレ。可動式スクリーンを使った演出も嬉しく、4人が横並びに大写しになっただけでウルウル。Bステージではかろうじて顔も肉眼+メガネで確認できました。幸せ、満足、声もカラカラ。またいつの日か。

set list
1.BROWN SUGAR 2.START ME UP 3.IT'S ONLY ROCK'N ROLL 4.DON'T STOP 5.ALL DOWN THE LINE 6.ANGIE 7.MONKEY MAN 8.MIDNIGHT RAMBLER 9.TUMBLING DICE 10.SLIPPING AWAY 11.HAPPY 12.SYMPATHY FOR THE DEVIL 13.WHEN THE WHIP COMES DOWN (B-Stage) 14.MANISH BOY (B-Stage) 15.YOU GOT ME ROCKING (B-Stage) 16.GIMME SHELTER 17.HONKY TONK WOMEN 18.STREET FIGHTING MAN 19.(I CAN'T GET NO) SATISFACTION
encore
20.JUMPIN' JACK FLASH
スパイキッズ

CINEMA

スパイキッズ

監督:ロバート・ロドリゲス
SPY KIDS
2001年 アメリカ

先日ビデオで『ハリー・ポッターと賢者の石』を観た。魔法使いがスパイに置き換わると『スパイキッズ』だなと思った。そんな『スパイキッズ』は誰も期待していないと思うけど、意外なほど楽しる映画だったりする。僕自身も100%眼中になかったけど、ハッ!と気付いたロバート・ロドリゲスの名前。こんなところで仕事してたとは、うっかり見落とすところでした。『デスペラード』や『フロム・ダスク・ティル・ドーン』で名を馳せた曲者監督だけに、内容もアッケラカンとB級オチャラケムード満載! ジョージ・クルーニーもゲスト出演しています。続編ではスティーブ・ブシェミが悪役のようで、こちらも観たいぞ!

THE BREEDERS [ 2003.03.07. 渋谷クラブクアトロ ]

LIVE

THE BREEDERS [ 2003.03.07. 渋谷クラブクアトロ ]

昨年9年振り!となるアルバムをリリースしたものの、いまいちどうなんだ?という思いもあって、結局は未聴のまま。さらには今回の来日決定!に勢い勇んでチケットを買ったものの、やっぱりどうなんだ?という思いではあった。しかし、会場のクアトロは複雑な思いを吹き飛ばすほど、待ち侘びた観衆で超満にごった返していたのだった。ブリーダーズを観たいと思う客がこんなにいることが嬉しかったし、そんな熱狂的歓迎を受けたバンドもとにかくよかった。見た目こそ、バンドの男性陣以上にフランク・ブラック並に恰幅よくなっていたキム&ケリー・ディール姉妹であれど、ピクシーズ時代から引き継がれ研ぎ澄まされてきたバンドとしてのエッジは全然死んでなかった。中盤、早くも「CANNONBALL」が炸裂し、「FLIPSIDE」ではダイブ続出! 客やバンド同士で談笑してはノリでドゥービーブラザーズ「LONG TRAIN RUNNIN’」を1コーラスやったり、ほんと楽しい! アンコールではまさかのピクシーズ時代にキムが歌っていた「GIGANTIC」が!! さらに「DIVINE HAMMER」で終わって、ドラムが20本近くスティックを投げ入れて帰っちゃったので、もう終わりだろうなと思っていたら、2度目のアンコールに登場! 「スティック返して」って言ってたのが可笑しかったなぁ。最後は映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から「ANGRY INCH」を披露し、客をバックに記念撮影の大団円で幕となりました。ここまでベストなライブとなるとは、嬉しすぎる誤算ということで、観に行って本当によかった。ピクシーズとブリーダーズは返す返すも偉大なり。

set list
1.TIPP CITY 2.LITTLE FURY 3.HUFFER 4.SAINTS 5.FLIPSIDE 6.HEAD TO TOE 7.I JUST WANNA GET ALONG 8.OFF YOU 9.CANNONBALL 10.SAFARI 11.HAPPINESS IS A WARM GUN 12.NO ALOHA 13.FULL ON IDLE 14.PACER
encore 1
15.NEW YEAR 16.I DON'T CARE ABOUT YOU 17.IRIS 18.DRIVIN' ON 9 19.GIGANTIC 20.DIVINE HAMMER
encore 2
21.BUFFY THEME 22.FORTUNATELY GONE 23.ANGRY INCH
TEENAGE FANCLUB [ 2003.03.03. 新宿リキッドルーム ]

LIVE

TEENAGE FANCLUB [ 2003.03.03. 新宿リキッドルーム ]

ものすごく良いのだけど、ものすごく大好きだから、1時間ちょっとの尺ではどうにも物足りなく思えるわけで、昨年リリースしたベスト盤より曲が少ないのは辛い。『13』からは一曲だけだし、佳曲揃いの『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』からたくさん演奏してくれたはいいが、「SPEED OF LIGHT」が聴けなかったのはとても残念だ。まあでもこの人たちにはいつまでもバンドを続けて欲しいし、ポール・マッカートニーのように60歳になってもライブやって、そこでも一緒に歌を口ずさみながら観たいものです。とりわけ好きな「YOUR LOVE IS THE PLACE WHERE I COME FROM」に、サマーソニック以来の「EVERYTHING FLOWS」は嬉しかったなぁ。髪を切ったノーマンはちょっとだけおすぎに見えた。

set list
1.ABOUT YOU 2.START AGAIN 3.DON'T LOOK BACK 4.YOUR LOVE IS THE PLACE WHERE I COME FROM 5.DID I SAY 6.STAR SIGN 7.WHAT YOU DO TO ME 8.VERISIMILITUDE 9.PLANETS 10.I NEED DIRECTION 11.MELLOW DOUBT 12.AIN'T THAT ENOUGH 13.THE WORLD'LL BE OK 14.THE CABBAGE 15.SPARKY'S DREAM 16.EVERYTHING FLOWS
encore
17.I DON'T WANT CONTROL OF YOU 18.DISCOLITE 19.THE CONCEPT〜SATAN
24アワー・パーティ・ピープル

CINEMA

24アワー・パーティ・ピープル

監督:マイケル・ウィンターボトム
24HOUR PARTY PEOPLE
2002年 イギリス

イングランド北部の工業都市、マンチェスター。一度だけ訪れたことのあるその街には大きなショッピング・センターが一つあるくらいで、世界屈指のサッカークラブがあり、最高のバンドを次々と輩出してきた文化面の華やかさと比べたら、とても閑散としているように見えた。どこにそんなエネルギーがあるものか不思議なものだけど、この映画で描かれたような成り行きがあるから素敵だ。フィルムに刻まれた宝石のような音楽に身を委ねての、ファクトリーの社会見学は、僕には最高に刺激的な体験だった。

小島麻由美 [ 2003.02.28. 赤坂ブリッツ ]

LIVE

小島麻由美 [ 2003.02.28. 赤坂ブリッツ ]

昨年に引き続き新作『愛のポルターガイスト』を発表した彼女の単独ライブを観ることができて、本当に幸せだ。歌ってないときは相変わらずハラハラさせられっぱなしだったけど、アクションも表情も最小限にあの見事なほど妖艶な声で歌う彼女はとにかくカッコ良い。ASA-CHANGを中心としたおっさんばかりの激渋バンドは、ゲストに新作で参加したサックス・菊地成孔を加え、それはそれは大変に艶やかで素晴らしく、客として何とも贅沢な気分を味わうことができた。赤いホットパンツにブーツという彼女に春の訪れを感じた一夜でした。

set list
1.愛のポルターガイスト 2.恋はサイケデリック 3.ショートケーキのサンバ 4.ロックステディガール 5.真夜中のパーティー 6.セシルカットブルース 7.月の光 8.蜜蜂 9.はつ恋 10.背後に気をつけろ! 11.赤と青のブルース 12.ハードバップ 13.黒猫 14.眩暈 15.黒い革のブルース 16.結婚相談所 17.パレード 18.愛しのキッズ 19.恋の極楽特急 20.皆殺しのブルース
ボーリング・フォー・コロンバイン

CINEMA

ボーリング・フォー・コロンバイン

監督:マイケル・ムーア
BOWLING FOR COLUMBINE
2002年 カナダ

イラク問題などでアメリカ政府の動向に注目が集まっているタイムリーなタイミングで心の中にあるアメリカへのモヤモヤした感じを多少なりともスッキリさせたいのか、異例の大ヒットとなっているアメリカ銃社会をテーマにしたドキュメント映画。何も天才的なひらめきや表現があるわけではなく、ただ普通に思っている疑問を投げかける視点の鋭さとユニークさ、またカメラを連れて突撃取材を敢行する行動力によって、ドキュメントであるけどもマイケル・ムーアの作品としての個性が強く印象に残る。そして、それが物凄くおもしろい。アメリカ白人の脅え、カナダとの比較、マリリン・マンソンの明晰な会話、恐怖と消費のアメリカ社会、全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストンなどなどといったジャーナリスティックな知的好奇心を満たす刺激的な内容が満載だ。